美の殿堂に企業名、市議や美術界も賛否 京都市美術館問題
創設から80年以上の歴史を刻む京都市美術館(左京区)の命名権(ネーミングライツ)を、京セラ(伏見区)が50億円で取得する。国内有数の公立美術館として異例の命名権導入を巡り、「市民負担の軽減」を強調する市に対し、市議会や美術関係者には賛否が入り交じる。手法の是非を問う議論は今後も続きそうだ。
市は8月に命名権売却の実施を公表、9月の1カ月間に公募すると、唯一応募したのが京セラだった。5日に市美術館であったネーミングライツ審査委員会では芸術大の教授ら委員6人が「京都で創業し、経営が安定している」「文化芸術に関する社会貢献の実績もある」と評価したという。
市美術館は、昭和天皇の即位の大典にちなんで1933(昭和8)年に開館。老朽化が著しい建物の改修費は約100億円を見込み、まとまった財源の確保が課題だった。市は2年前から複数の企業に数十億規模の寄付を打診したが賛同が得られず、「対価のない寄付は難しい」(文化市民局)と方針を変えた。
命名権取得には数々の特典が付く。館内での企業PRスペースの設置、展覧会やイベント会場としての優先利用権などだ。同局は「運営は今後も市が直接担う。企業のPRやロゴばかり目立つ施設にはならない。展覧会の主催展を辞退する動きもない」と直接的な影響は少ないとする。
今回の決定に対し、市議会には「資金を賄うために命名権売却は一定必要だが、それでも通称を売るべきではなかった」(自民党市議)、「歴史ある公の美術館が企業の宣伝媒体になるのは違和感が強い。市民からも反対の声が上がっている」(共産党市議)と与野党会派ともに異論が根強い。
市は、11月市会に大規模改修の工事契約議案を提出する予定。市議会では他の施設に際限なく命名権売却が広がることに懸念が出ており、ある与党会派幹部は「命名権は議会の議決案件ではないが、深く関与できるよう制度を見直す必要がある」と指摘する。
【 2016年10月07日 11時29分 】