現在、我が家にはもうすぐ3歳になるこどもと生後3週間の赤ちゃんがいる。
新生児を育てる大変さや産後の母親のダメージの過酷さを再確認させられている日々だ。
市役所から突然電話がきた。
「現在、市内の保育園に通われているお子さまですが、現在産休中のお母さまがこのまま育児休業に入り職場に復帰しないということですと、今年の11月11日で退園して頂きますので、その確認のお電話です。」
という内容。
そんな話は事前に説明されたこともないし容認するどころか意味が分からない。
どういう状況がそうさせるのか。
詳しく問い詰めてみると、
二人目のこどものために育児休業を取得して在宅が可能ならば上の子も自宅で面倒みられるのだから保育園に預ける必要がない。
という話である。
…それはいくらなんでもあんまりなのでは?
待機児童問題はあちらこちらで社会問題となり我が家にとっても決して他人事ではなかった。
今年の4月にやっと入所できた保育園は本当に素晴らしい先生たちばかりで食育や知育など教育面も環境面も文句なく保育園には感謝の気持ちしかない。
保育園が見つかり今年の4月にやっと職場復帰することができた。
せっかく保育園生活にも慣れて友達もできて毎朝楽しそうに通い出したところ、
大人の事情で突然の強制中途退園はあまりにもこどもがかわいそうである。
かわいそう以外にも問題はあり、
退園したあと次年度にまた同じ保育園に入所できる保証もない。
それどころか年齢枠を考えると地域内の保育園そのものに入所できる可能性は低い。
ましてや市内の待機児童の数を考えれば姉弟ふたりが同じ保育園に同時に入所できる可能性が絶望的なことは誰でも分かる。
一般的に上の子が保育園に通っている状況ならば来年度も選考されることなく通えるし、
来年度の春に兄弟枠として下の子が入りやすい現状はどこの市区町村にもある程度あるわけだが、
退園してしまえばこれは一気に窮地となるので退園はどうにか免れたいのである。
「それならば産休後に育休を取らずにすぐに仕事復帰すれば強制退園させられないのか?」
と聞くと、
「その通りです。退園を免れるにはそれ以外の方法はありません。」
というわけである。
そもそも体調も全快でない授乳真っ只中の産後たったの2ヶ月で職場復帰するのは大変なことだ。
ましてや年度始めの4月ならまだしも育休代替の方との年度末までの契約があるのに7月に産休に入って11月という中途半端な時期にいきなりまた職場に復帰なんてできるわけがない。
仮にこの問題をクリアできたとしても、
二人目のこどもをこんな中途半端な時期からどこに預けられるというのか。
二人目のこどもを預けられないのにどうやって職場に復帰できるというのか。
(そもそも生後2か月の赤ちゃんをどこかに預けることは感覚的にも困難なわけだが。)
現在の0歳児の中途受け入れの人数は当然ながら市内すべての認可保育園・認可外保育園・家庭保育を含めて0名。
これは役所でも把握しているであろう事実である。
様々な事情があって今は自分らの両親や親族に頼れる状況ではない。
どこにも預けられない状況なのに職場に復帰などできるわけがない。
預けるところがないのに職場に復帰をしろ。
復帰できないならば上の子は保育園を退園して家でみろ。
…基本的に選択肢がない。
仕事をやめて保育園もやめるしかない。
なんだこりゃ?
これはいったいどういう「一億総活躍社会」なのか説明してくれ総理大臣。
大袈裟なタイトルかもしれないが、
これでは「女は働くな」と行政から正式に言われているのとなんら変わらないのである。
最初から分かっているのに入所前になんの説明もないなんておかしい。
さすがに猛抗議した。
しかしながら入所案内にきちんと明記されているので確認しろとのこと。
入所案内に関してはきちんと読んで申し込みをしたつもりだったが、
改めて入所案内をよく読むとずいぶん後ろの方にある付録のような「Q&A」のコーナーのQ23に小さく書いてあった。
「育児休業の取得を前提とした申し込み(これから生まれてくるお子さんのために育児休業を取得する予定にもかかわらず、上のお子さんの保育所入所・転所申し込みをする等)はできませんので、上のお子さんが入所・転所された場合は育児休業を取得せずにすぐに復帰して頂く必要があります。」
詐欺サイトの利用規約かよと思わせられるほどに目立たない文であったが、
ここまできちんと読んでいなかったこちらにも落ち度はあるかもしれない。
しかしながらそれとは関係なくどうしても納得できない理由がある。
なぜなら保育園の入所の申し込みの締切が12月3日だったのに対して妊娠が判明したのが翌年の1月末だからである。
この状況でどうして「育児休業の取得を前提とした申込み」と扱われなければいけないのか。
申し込む時点で知らないのにどう考えてもそんな前提はない。
しかし役所側の基準はあくまで4月の入所が基準であり入所の時点で第二子の妊娠の事実があるかどうかだけだという。
どんなルールだよ。
そんな基準についての記載はない。
1,2,3月に妊娠したらみんなこうなるのかよ。
誰も復帰できないだろ。
産まれた二人目のこどもの受け入れがないのに職場復帰を求めるのはおかしいし、
復帰ができないのであれば一人目のこどもが中途退園しなければならないのはもっとおかしい。
そしてここから更に理不尽に拍車がかかる。
次に掲載されたQ24の状況は上の子がすでに保育園に通園している場合にうちと同様に1月に妊娠が判明した場合である。
驚くべき解答A24が、
「既に保育園に通われている場合は児童福祉等の観点から下の子が1歳6ヶ月になるまで保育園に通うことができ、多くの場合その1年半後も継続して通園ができ育児休業をさらに継続もできる」
というものである。(画像参照)
なんなの?
この「児童福祉等の観点」って。
中学生にもわかるように説明してみろと詰めると、
「す、すいません。上の者が改めてお電話かけ直させて頂きます。もうしわけございません。失礼致します。」
と、このように電話が切れてしまったために電話だけでなく俺までプッツンである。
いったい何が違うのか。
妊娠が分かってからもつらいつわりや腹痛に耐えながら今年の4月から職場復帰して他のお母さんと同じように働いてきた。
同じように妊娠してうちと同じ2歳児クラスにこどもを預けて同じように働いてきたあるママ友も今月無事に第二子が産まれこのまま育児休業に入る予定だが、
この上の子が退園の通告をされることはなかった。
「児童福祉等の観点」によって。
上の子の入所時期が違うだけで児童福祉の観点は変わるらしい。
この児童福祉の観点の意味を理解して納得するのは俺には無理だ。
既に通っていた場合と4月から入所した場合という点以外はなにも変わらないのに同じように母親が働いていたのに児童福祉の観点が適応されない後者のうちの娘。
こんなルールが適用されて復帰を強制させられるならせめて二人目のこどもの受け入れをなんらかの形で保証するルールが並行してないと成り立たないだろう。
数時間後、
より偉い立場と思われる人間から電話があった。
1時間以上は話し込んだが、
言い分は大いに理解できるし同意すらできるがルールをすぐに変えることはできない申し訳ございませんの一点張り。
そりゃそうだ。
ルールをすぐ変えることができないことはこちらも少し考えればわかる。
そして「児童福祉等の観点」について説明を求めてもこの責任者もろくに説明できない始末。
呆れ果てる以外ない。
「こんな大事なことは入所時に改めて説明するべきだからそういうガイドラインを作れ。」
「誠に申し訳ございませんでした以後は徹底して教育します。」
…らちがあかない。
結局これは何時間しゃべっても状況は変わらない。
見事なまでのお役所仕事の前に屈するしかなかったわけである。
この二人目のために育休を取得すると上の子が退園しなければならないというルールは何なのか。
これはいつできたルールで誰のためのルールなのか。
役所の説明によるとこの待機児童問題の解消のために平成27年4月に作られたルールだという。
1人退園させることで待機児童が1名保育園に入ることができるので待機児童は1名減る、と。
馬鹿も休み休み言ってもらいたい。
待機児童は1名減ったその瞬間に我が家に1名増えているわけである。
これは待機児童のたらい回しに他ならない。
既に通園している場合は児童福祉の観点から退園には該当しないのもおかしい。
こんなルールがあるならば働く女性は二人目のこどもを産もうなんてますます思えなくなる。
少子化対策だとか女性の社会進出だとか絵空事なんだなと思わさせられる。
平成27年4月から始まったこの「子ども子育て支援新制度」なのだが、
国が定めた法律に対して各自治体に「これに基づいて運用しろ」と通達したにも関わらず自治体によってずいぶん運用(解釈)が異なってしまっている。
(参考リンク)
http://www.happy-note.com/shine/230/post_25.html
俺の住む国分寺市はまさしく対応を悪化させてしまったためにこのような事態を招いたわけである。
ぜひとも国のこの指針に対する解釈の再検討を取り計らってもらいたい。
自治体によっては育児休業をとることで退園させられることなどないのだから。
埼玉県所沢市では同様の件で訴訟にまでなっていることは記憶に新しい。
国分寺のこれだって行政不服審査法に基づいて不服申し立てをするレベルの段階まできている気がする。
しかし個人で数ヵ月かけてそんなことをする時間はない。
どうすることもできないのか…。
言いたいことばかり書きなぐってしまったが、
今回の件にはさまざまな賛否があるだろうと思う。
逆の立場である他の子が今回のうちのケースのように中途退園をさせられ、
その玉突きでうちの子の中途入所できてめでたく職場復帰できることになったのだとしたらきっととてもありがたく思っただろうし喜んだと思う。
対岸の火事のようなもの。
その子がかわいそうであってもそんなルールは容認できるはすがないと陳述書を書くことなどまずない。
そう考えると結局は俺は自分がかわいい醜い考え方の人間のひとりなんだなと悲しくもなった。
そうさせてしまう社会にまず問題があることは強調しておきたいが。
また、
いまや有名になった匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」の主のようにどこの保育園に入所することもできずに失職したお母さんはこの彼女に限ったことではない。
保育園に入れただけマシじゃないか。
働けたくせに大げさだ。
職場復帰、職場復帰と繰り返すけれどそんな風にこどもが2歳になるまで育児休業なんかとって更にまたこどもなんか産もうもんならうちの会社なら即クビだ。
…そんな声も少なくなくあるだろう。
そういう立場の方がたくさんいるなかで行政に噛み付き、
わざわざこんな駄文長文を曝すことはお門違いだと言われてもしかたがないかもしれない。
また、
「女は働くな」などと少々大袈裟ともとれるタイトルだが、
だったら男のお前が育児休暇とればいいだろという意見もあるだろう。
これに関してはその通りだしずいぶん検討してみたがはやり解決には至らない。
年度途中から突然育休をとる難しさはさておき、
男の俺が育児休暇を取得すれば女は働けるかもしれないが、
行政側にとっては「育児休暇の取得を前提とした申し込み」であったことに違いはない。
どちらにせよ謎の児童福祉の観点によって保育園は退園させられてしまうのである。
さらに、
作るべくして子供ができているんだから申し込みの前だろうが後だろうが結果的に「育児休業の取得を前提とした申し込み」になるだろ、無計画に子供を作るからそうなるんだという意見もあって不思議ではない。
説明しなければなかなか外には伝わらないことだと思うけど、
うちは過去に2度の流産も経験している。
40歳の妻が自然に妊娠できる確率は驚くほど低い。
毎月のように落胆しては産婦人科通いを繰り返した。
作るべくして作ったという日本語に関しては異存はないが、
やっとの思いで授かった奇跡の命だったのである。
そういう意味ではこちら側に「育児休業の取得を前提とした入所の申し込み」をしたつもりは毛ほどもなく、
今回の通達は晴天の霹靂そのものだった。
そもそもの話をすると、
児童福祉法では「両親が共働きなどで保育できない子どもを市町村は保育所で保育しなければならない」と定めている。
待機児童がいる時点で明確な法律違反ということになる。
東京都内のあちらこちらでないがしろにされているが、
これを解消するためには保育園を増やすしかない。
しかし保育園を増やせといってもすぐに増やせないことはわかっている。
いくら土地があろうといくら金があろうと行政の認可が降りない限りは保育園は増えない。
認可の条件を緩和してしまえば安全な保育環境を保つことはできない。
保育園を増やすためにはまず保育士数を確保しなければならないが、
これだけ社会問題化しても保育士の勤務環境や待遇がよくなる気配はまだないに等しい。
やっと雀の涙ほど給料があがろうとしているかどうかというレベルである。
あれだけの税金をかけて東京オリンピックとかやっている場合なのか。
強い経済を作るとか連呼しながら戦争兵器の輸出をも躊躇しない日本政府。
こどもが増えなければ日本に未来はない。
人がいなくなった未来に強い経済など生まれない。
まずは経済ではなくこれだけ社会問題になっているのに動きのない児童福祉の強化でしょう。
説明もできない児童福祉の観点を振りかざさないでくれ。
こんなものを書いただけで世の中は変わらないけど、
多くの人にシェアされこれを読んだ誰かの中でなにかが変化がして、
待機児童問題・少子化問題・女性の社会進出問題なんかについて考えるきっかけの一端になれば幸いと思っています。
長文を読んで頂きありがとうございました。