過労死ゼロに向け…世界で例がない初の報告書
過労死防止法に基づき厚労省
2014年11月施行の過労死防止法に基づき、厚生労働省が初の「過労死白書」(16年版)をまとめ、政府が7日、閣議決定した。厚労省によると、過労死をテーマにした同様の報告書は世界でも例がない。厚労省は長時間労働の実態や対策を紹介することで、過労死防止に向けた取り組みを加速させたい考えだ。
14年6月に議員立法で成立した過労死防止法は、過労死を巡る状況と政府の対策について国会への年次報告を義務付けている。
白書によると、15年度に脳・心臓疾患で死亡し、労災保険が支給決定された人は96人で、ピーク時の02年度(160人)の6割に減少。一方、精神疾患による自殺者(未遂を含む)で支給決定された人は93人で、過去最多だった前年度(99人)より6人少ないものの高水準だった。
白書は280ページ。1980年代後半から過労死が社会問題化し、91年に発足した「全国過労死を考える家族の会」による活動が実を結んで過労死防止法が立法化された経緯を、1章分を割いて説明している。
10年1月〜15年3月の過労死を含む労災事例をデータベース化して分析し、予防策につなげることや、労働者2万人の健康状態を10年間追跡調査する疫学研究の計画についても記載した。【早川健人】