初の「過労死白書」まとまる

おととし施行された過労死防止法に基づいて過労死の実態や防止への取り組み状況を記した初めての「過労死白書」がまとまりました。
過労死等防止対策白書=過労死白書は過労死や過労自殺をなくすため国が防止対策を行うことなどを定めた過労死防止法に基づき、厚生労働省が毎年まとめることにしたもので、7日、初めての白書が閣議決定されました。

白書では過労死や過労自殺の労災が、ここ数年200件前後で推移していることや「過労死ライン」と呼ばれる月80時間を超えて残業した労働者がいる企業の割合が昨年度2割を超えたことを挙げ、長時間労働の是正が課題になっているとしています。

そして、過労死の実態を解明するための調査研究として、長時間労働が循環器などの健康に及ぼす影響の研究や労働者の長期的な追跡調査を始めたことなどを報告しています。そのうえで、労働者の相談窓口の設置や継続的な啓発活動を通じて過労死や過労自殺をゼロにすることを目指すと締めくくっています。

閣議後の会見で塩崎厚生労働大臣は「過労死をゼロにして、健康で充実して働き続けることのできる社会を実現するという使命感を持って過労死の防止のための対策に全力で取り組んでいく」と述べました。

過労死弁護団「遺族の思いが結実」

過労死弁護団全国連絡会議の幹事長で、過労死の問題に30年近く取り組む川人博弁護士は「かつて国は、過労死という言葉を認めていなかったが、職場での過労やストレスで家族が命を落とした現実を訴え続けた遺族の思いが行政を動かし、今回の白書に結実した」と評価しました。そのうえで、「長時間労働を是正する動きは出てきたものの実態はなかなか改善されていない。長時間労働が常態化している運輸業やサービス業で対策を強めるなど、国や企業、働く人すべてが健康な社会を目指し過労死がなくなるよう具体的に実践していくべきだ」と話しています。

防止に向けたこれまでの動き

過労死は、海外でもアルファベット表記の「KAROSHI」がそのまま通用するなど、日本特有の問題として知られるようになり、平成3年には過労死や過労自殺をした人の遺族を中心に「全国過労死を考える家族の会」が結成され、防止に向けた社会的な機運が高まりました。

平成13年、国は過労死ラインと呼ばれる月80時間を超える残業の基準を示し、その10年後の平成23年には仕事上のストレスによるうつ病などの認定基準を作り、過労死や過労自殺が労災と認められるケースが増えました。

その後、家族の会による署名集めなどの活動が実を結び、おととし、過労死防止法が施行され、ようやく国を挙げて対策に乗り出すことになりました。法律に基づいて過労死を防ぐための調査や研究が進められていますが、過労死と過労自殺の労災はここ数年、200件前後に上り、国が将来過労死ゼロを目指すとしている中、長時間労働の是正が課題になっています。