10月15日から『劇場上映 ゴーゴー日本アニメ(ーター)見本市』で一週間限定で劇場公開される『機動警察パトレイバーREBOOT』。その監督である吉浦康裕氏は、「 "人間型ロボット" (アンドロイド)が実用化されて間もない時代」を描いた『イヴの時間』を2008年に制作している。SF作家アイザック・アシモフの「ロボット三原則」をベースに、現実に近い未来の世界にアンドロイドが生活に入り込んだらどうなるのか?をテーマとし、それに接する人の心理の面まで深く切り込んだ作品である。かつてはSFの題材であった人工知能(AI)が普及しつつある今、吉浦監督にサイエンス・フィクション(SF)はどうなっていくのか?を伺った。
■ロボットを悪者にしたくなかった
--吉浦監督はアンドロイドが普及する世界を描いた『イヴの時間』を手がけられていますが、制作当時AIらしさアンドロイドらしさというのはどれくらい意識されて作られていたんでしょうか?
--それでも相当考察はされていますよね。
--『われはロボット』にはやはり雰囲気がすごく近いと感じました。
■AIの力を借りて人間がより面白いものを作るという相乗効果をちょっと期待してます
--かつてはフィクションの中のものだったものが近年は次々と現実のものとなっていて、現実にはレンブラントの新作を描いたAIが現れました。『イヴの時間』の作中でも画家アンドロイドの誕生の新聞記事が登場し、ただの模倣ではなく一度解析して抽象化した上で描くというふうに言及もされていましたね。
--これは全く同じになっていますよね。
--あとは意識の再現などの部分では、『イヴの時間』が現実より先を行っているのかなと思います。
■フィクションで理想的な良い方向を描き続けるのは大事なこと
--最近ではシンギュラリティという言葉が現れて、AIが人間の知能を越えていくことに対して危惧しているという人たちもいますよね。
--『イヴの時間』の作中では倫理委員会というアンドロイドを規制しようという組織を登場させていますが、アンドロイドを完全に否定するというのともちょっと違うようにも見えたのですが。
--そうだったんですね。現実にはAIやアンドロイドに反対する勢力が大きな力を得るのかな?というのは分からないところですよね。
■昔だったら絵物語だったものが、今はある程度の説得力と興味を持っていろんな人が見てくれる
--今フィクションがどんどん現実になっていく中で、これからのフィクションってどういったものになっていくのでしょうか?
(※『イヴの時間』の最初の発表が2008年8月で、その1ヶ月前にiPhoneが日本で発売されている。)
--そういったことがこれからSFの中ではどんどん起こっていくのかなと思うのですが。
--これから先に描きたいテクノロジーや、注目しているテクノロジーというのはありますか?
--確かにここ2年ぐらいで一気に人工知能ブームが来ましたね。
--『イヴの時間』のような形でAIやアンドロイドを描いた作品は、実は少なかったと思います。
--ある意味、思考実験的なことですし、時代を置き換えても出来る題材ではありますよね。
もはやAIは日々のニュースの話題だけではなく、あらゆるものに直接的、間接的に我々の日常に関わり始めている。そんな現代だからこそ、かつてのSFが生み出したフィクションの題材はよりリアリティと説得力を持ちはじめているという。今後AIがより社会で重要な役割を担うようになった時、『イヴの時間』のようなフィクションが明日の世界とテクノロジーをより理解する上で我々の助けとなるのかもしれない。
取材・文:サイトウタカシ
TV番組リサーチ会社を経て、現在フリーランスのリサーチャー&ライター。映画・アニメとものすごくうるさい音楽とものすごく静かな音楽が好き。
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