剛腕で知られる谷口氏ですが、スキャンダルが多いのが難点でしょう。2008年に元TBSアナウンサーの川田亜子さんが練炭で自殺した際に谷口氏の名前が取り沙汰されましたし、最近も先に触れたS氏が谷口氏の急所を突くスキャンダルを入手し、これが明らかになると谷口氏のキャリアがすべて崩壊するといわれています。
芸能界では実力者である谷口氏の力を抑え込めば天下を取れるといわれており、キャスティングボートを握るS氏にはいくつもの大手芸能事務所から顧問就任の要請が来ているそうですが、今のところS氏はどことも連携をしないようです。谷口氏もS氏との和解の可能性を探ってきたようですが、結局、断念したようです。谷口氏はスキャンダルがいつ破裂するかわかりませんから、いわば「時限爆弾付き芸能界のドン」というような状態であり、業界での求心力の低下は否めません。
――ほかに「芸能界のドン」の候補はいないのでしょうか?
星野 谷口氏以外で有力なのが、ジャパン・ミュージックエンターテインメント(JME)の瀧藤雅朝社長でしょう。JMEグループは、鈴木杏樹や篠原涼子、谷原章介、ユースケ・サンタマリアなどが所属する大手で、最近は元フジテレビアナウンサーの加藤綾子が入って、業界での注目度が急速に高まっているそうです。
瀧藤社長は2012年に芸能界の実力者である長良じゅんさんが死去した際、葬儀の仕切り役を周防社長とともに務めた人物で、バーニングとも良好な関係を保ってきていますが、必ずしもバーニング系というわけでもなく、全方位外交だそうです。瀧藤社長の強みは実力者でありながら、谷口氏と違ってこれまでほとんど名前が取り沙汰されたことがないことでしょう。それでいて出身地の名古屋の有力組織とのパイプが太いともいわれ、恐れられているという側面もあります。
それ以外では、女優の能年玲奈の独立騒動で名前が挙がったレプロエンタテインメントの本間憲社長やエイベックス・グループ・ホールディングスの松浦勝人社長が芸能事務所の業界団体である日本音楽事業者協会(音事協)の次期会長の座を争っているといわれています。
エイベックスは上場企業ですし、力がありますが、本業はレコード会社なので、芸能事務所の業界団体である音事協では外様と見られてきました。ただし、最近はタレントやスポーツ選手のマネジメント部門を強化しており、今後、ますます芸能界で影響力を増してゆくでしょう。
一方、レプロの本間社長は最近、能年玲奈の処遇をめぐってバーニングの周防社長と激しく対立していて、本間社長を抑え込むために谷口氏と瀧藤社長が連携してくるのではないかといわれています。
――なんというか、魑魅魍魎の世界ですね……。
星野 テレビというのは本来、高い公共性が求められるはずなのですが、実際に裏で行われているのは芸能ヤクザの縄張り争いみたいなもので、それが視聴者の利益になっているとは思えません。これまでは業界全体でマスコミを支配し、一切報道させないということで乗り切ってきたようですが、ネットがこれだけ普及すると、そうもいかなくなってきたのではないでしょうか。
今年はSMAP騒動で大きく揺れた芸能界ですが、来年はジャニーズ事務所を追われたSMAPの元チーフマネジャーの飯島三智氏がジャニーズにリベンジするといわれています。
関係者によれば、飯島氏は何かジャニーズのネタをつかんでいるようで、周囲に「戦争になったら、殺されるかもしれない」と決死の覚悟を漏らしているそうですから、今年以上の騒動になるかもしれません。そういう時に芸能界の構造的な問題にもっと注目が集まって、業界の健全化につながるような動きが出てくることを期待しています。