――とんでもない業界ですね。今どき、そんなこと許されるんでしょうか?
星野 そろそろこうした前近代的ビジネスモデルも限界なんじゃないかという気もします。まず、「芸能界のドン」として有名だったバーニングプロダクションの周防郁雄社長の影響力が近年低下しているようです。
かつて周防社長の用心棒を務めていた大日本新政會の笠岡和雄総裁によるバーニングに対する抗議活動が奏功したほか、周防社長が暴力団との関係でつまずき、資金力が低下しているといった情報が出ています。
また、バーニングというと、地元の赤坂警察署と癒着し、いろいろな事件を揉み消してきたといわれてきましたが、この神話も揺らいでいるようです。
増補新版でも詳しく書いていますが、2010年頃、映画プロデューサーのT氏が三代目山口組、田岡一雄組長の娘の由伎氏と金銭トラブルになって赤坂署管内で暴力団員らから脅迫されるという事件がありました。ところが、T氏らが赤坂署に相談をしても最初に応対した渡部という担当者は「暴力団は怖い」などと言ってまったく取り合わず、結局、捜査は行われませんでした。後にT氏が警視庁に情報公開請求をしたところ、捏造された相談記録が出てきたそうです。この事件では由伎氏と関係が深い周防社長の名前も出てくるため、周防社長の影響力で事件が揉み消されたのではないかと見られていますが、これに憤慨したT氏が公安委員会や警視庁監察係、法務局の人権擁護部などに徹底的にクレームを入れたところ、それと同時期にこの件に関わった赤坂署の歴代2人の組織対策課長が退職しています。
T氏の抗議活動は今も継続しており、バーニングと警察の関係もヒビが入っている可能性があります。
――バーニングの権威が失墜すれば、もっと開かれた芸能界の時代に入るということなのでしょうか?
星野 それはどうでしょうか。今、芸能界ではバーニングに代わってこれまでバーニングの別働隊のような存在だったケイダッシュが台頭しているといわれています。ただ、この体制も長続きしないかもしれません。というのも、今、ケイダッシュの川村龍夫会長が体調を崩して、出社がまちまちになっているというのです。さらに、川村会長が副社長を務めている田辺エージェンシーの田邊昭知社長についても、夏目三久の妊娠騒動が持ち上がった際、「脳梗塞を患い左半身にしびれが残っている」と「週刊新潮」(新潮社)で報じられましたが、田辺社長と最近面会した人物によれば、「ろれつが回っていなかった」とのことです。周防さんも含めて彼らは皆、ゆうに古希を超えており、芸能界は世代交代の時期を迎えているようです
――新しい世代の芸能界のリーダーたちは、どんな人たちなのでしょうか?
星野 「新芸能界のドン」と目されている一人がケイダッシュの幹部の谷口元一氏です。
 谷口氏は周防社長や川村会長の人脈を引き継いでいて、バーニング、ケイダッシュ、田辺エージェンシーのキャスティングを一手に握っています。また、今、視聴率が絶好調のテレビ朝日やインターネット広告代理店大手のサイバーエージェントに食い込んでいて、最近、テレビ朝日とサイバーエージェントが組んで始めたインターネット放送「AbemaTV」も谷口氏の仕掛けだといわれています。