1. 「民進党の議員が、国会でする質問の内容を出すのが遅すぎだ」と自民党が批判した。質問の答えをつくるため、省庁の職員はずっと待たされていた。
10月4日にあった衆議院予算委員会で、民進党の階猛議員が質問した。ルールでは、質問内容は事前に省庁の職員に教えなければならない。国会で、議員から質問された閣僚の答弁は、職員たちが作っているからだ。
階議員は、この日の午前0時過ぎまで質問の内容を通告しなかったそうだ。関係する省庁の職員は、どんな質問がくるかわからないので夜中までずっと職場で待機していた。残業して資料をつくり、翌日の国会に向けてしっかりした回答を用意しなければならないのだ。読売新聞などが報じた。
批判が集まる中、階議員はこう釈明したという。
「質問通告は、(前日の)午後10時台に秘書に渡した。意図的に通告を遅らせたわけではない」
2. この問題に、与党の議員からは怒りのツイートも。
本日の予算委員会で、補正予算は衆議院を通過。 民進党から昨夜、24時を過ぎても国会質問が提出されなかったため、全省庁の職員が待機。結果、帰宅のためのタクシーは200台となりました。民進党、本気で「働き方改革」を進める気ありますか?
— いさ進一 (@isashinichi)
3. 内閣官房の調査では、職員の残業が当たり前の実態が見えてくる。
内閣官房内閣人事局は6月16日、各省庁に「何時まで、どんな態勢で待機していたのか」「何人程度で答弁資料を作っていたのか」を問うアンケートの調査結果を公表した。今年の通常国会があった月が、対象だった。
4. 午後6時15分に勤務が終わるはずなのに。何時までに質問通告があり、資料作成をする担当の割り振りが終わっていたのだろう。
すべての議員から質問通告が出揃うのは、平均で午後8時41分。もっとも早く出揃った日は午後5時50分だった一方で、もっとも遅かった日は日付が変わった午前0時半だった。
資料作成をする担当が決まったのは、平均で午後10時40分。もっとも早かった日は午後6時50分で、もっとも遅かったのが翌日午前3時だった。
それから資料の作成に取り掛かるというのだから大変だ。
5. 過半数が、待機させられたものの、資料を作らずじまい…
どんな質問がくるかわからないため、17省庁のうち10省庁が、省内のすべての局を待機させている。ほかの7省庁は、司令塔となる課が、待機が必要だと判断した局のみ、待機させていた。
指示を受けて待機したはいいが、すべての職員が実際に答弁資料を作ったわけではないらしい。待機させられた人の合計数に対して、実際に資料作成に関わった人の割合は、4月が44.5%、5月が37.3%だった。過半数が、待機させられたものの結局、資料は作らずじまいだったということだ。
それだけではない。質問内容が確定し、担当が割り振られるまでは「作業する可能性がある」人が待機することになる。そうやって待機させている部署では、1課あたり6.5人が待たされていた。
「できれば早く質問内容を教えてください」という職員の悲痛な心の叫びが聞こえてきそうだ。
6. 万が一の事態に備えるのは大事。だが、本当に必要な「待機」なのだろうか。各省庁は業務の効率化を図るため、こういった工夫も凝らしている。
- 過去の国会質問をデータベース化し、待機すべき課を事前に予測。
- パソコンやスマートフォンを使って、自宅や出先で資料の閲覧・修正の指示を可能に。
- 質問通告が出揃わないうちに、審議案件や質疑者を勘案して待機者を減らす。
- 質問通告が出揃ったら、資料作成をする担当課が確定していなくても待機する人員を減らす。
- 補助員や作業要員よりも、答弁資料の作成者を多く配置。
- 国会審議に備えて、答弁に必要と予想される関連資料を事前に準備。
7. それでも、霞が関はもう限界を痛感し、ある提言を出した。
霞が関で働く官僚たちの中には、育児や介護と両立している人もいる。時間の制約がある職員が急増してきており、残業ができる職員の一部に負担が偏ってしまっている。仕事の質を落とさないためにも、2017年までに改善が必要だとするこんな提言をした。
それは、国会議員による質問通告から答弁資料の作成までの流れの「見える化」により、効率化を図ること。そして、各省庁でうまくいっている工夫を参考にすることだ。
そのうえで、根本的な解決にはやはり、質問通告が早く出揃わなければならないとしている。できることなら残業はしたくないものだし、その残業代はすなわち、国民の税金だからだ。