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五輪のドン森喜朗の「暗部」 〈500億円ボート会場を親密ゼネコンが受注〉

 投稿者:東京新報  投稿日:2016年10月 6日(木)13時18分10秒
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五輪のドン森喜朗の「暗部」 〈500億円ボート会場を親密ゼネコンが受注〉

 九月二十九日、文部科学省で開催された東京五輪調整会議。控え室で待機していた報道陣の前に姿を見せたのは、取材対応の予定がなかった五輪組織委員会の森喜朗会長(79)である。
「IOCの総会で決まったことをひっくり返すのは極めて難しい。本当に都が見直しをするなら大変なことになる。我々は東京都の下部組織ではない。都知事の命令で、ああせいこうせいとできる団体ではない。もったいないと言うなら(都の組織委への出資金五十七億円は)お返しする。(小池氏が)『豆腐屋じゃないが二兆三兆』と選挙の時に言っていたが、滑稽だ」
 森氏は約二十分間、小池百合子都知事(64)への不満を口にしたのだった。

 都知事就任以来、五輪予算見直しを掲げる小池氏に対し、森氏は苛立ちを募らせてきた。九月二日に行われた前回の調整会議。小池氏の意向で報道陣に公開されたが、森氏は親しい知人にこうこぼしていた。
「小池はルールを分かっていない。だいたい小池は五輪の主催者なのに、他人事なんだ。(会議の公開は)見世物じゃないんだから」
 森氏をさらに怒らせたのが、小池氏が組織委を都の「監理団体」に指定する意向を伝えてきたことだった。
 組織委はJOCと都が一億五千万円ずつ出資して設立された組織だ。その後、都が五十七億円を追加出資している。
「都が指導・監督する『監理団体』となってもおかしくないが、森氏らがIOCの関与が強いからと主張し、運営状況を報告するだけの『報告団体』となった。小池氏は、膨れ上がる予算など、五輪の暗部にメスを入れようとしている。その一環が、“五輪のドン”森氏率いる組織委の監理団体化です。しかし、森氏は『五十七億円は返す』と言って、それを拒否した」(小池氏周辺)
 小池知事は、調整会議で都の調査チームによる報告書を森氏に突きつけ、競技場の抜本的見直しを訴えた。
 その象徴が、ボート会場の「海の森水上競技場」だ。招致段階の予算は約六十九億円だったのが、一時は一千億円超に膨らみ、見直し後も、約四百九十一億円かかることになっている。
「森氏は会議で『海の森をやめるなんてとんでもない。IOCが許さない』と主張。ただ、海の森の入札を巡っては、“官製談合疑惑”まで取り沙汰されている。異例の一社入札で、落札率九九・九%で受注したのが、大成建設のJVでした。小池氏は『五輪を公共事業として捉えるのは古い感覚だ』と口にしています」(都庁幹部)

リオ航空券代は四百八万円

 実は、膨れ上がっているのは競技場の整備費だけではない。組織委がオフィスを構える虎ノ門ヒルズの高額な家賃も増大の一途をたどっているのだ。虎ノ門ヒルズを手掛けたのは大手デベロッパーの森ビルだが、森氏は森ビルの故・森稔前社長と親しい関係だった。
「森氏はかつて六本木ヒルズで暮らし、町内会の最高顧問も務めていた。森氏の事務所は、虎ノ門ヒルズに程近いビルにありますが、ここも森ビル系列です。稔氏が中心メンバーだった『経済政策懇談会』という政治団体は直近の三年間で、森氏のパーティ券を計六百万円も購入しています」(自民党関係者)
 昨年度、組織委が支払った賃借料は約四億七千万円だった。
「今年度は職員数が増え、七億円超まで膨れ上がる。四年後の職員は現在の約九倍の七千人です。家賃だけで数十億円になる可能性もある」(組織委関係者)
 森ビルは「(森氏との関係は契約に)影響しておりません」と回答している。
 高額支出といえば、東京都の舛添要一前知事の海外出張が問題視されたが、森氏も負けていない。
 舛添氏への批判を受け、リオ五輪の開会式に小池氏はビジネスクラスで出張したが、森氏は全日空のファーストクラスを正規料金で利用した。「役員等旅費規程で、会長はファーストクラス利用とされている」(組織委)ためと言う。往復の航空券代は約四百八万円にのぼる。
「宿泊はウィンザーバラホテル。五輪中は宿泊代が跳ね上がり、森氏が泊まったのは約六万七千円の部屋だ」(ホテル関係者)
 森氏はこれまでもソチ五輪や南京ユース五輪の開会式に参加するため、海外を訪れている。いずれも宿泊施設は現地の五つ星ホテルだった。
 ことあるごとに「主催者は東京都」として、都を批判してきた森氏だが、一連の混迷の責任が森氏にもあるのは言うまでもない。
 迷走の始まりは「森氏の悲願」(森氏側近)である新国立競技場の建て替え問題だった。
「森氏が『コンサートをやるには屋根が必要』『普通のVIP席と最高クラスのVIP席が必要』と注文をつけたり、各競技団体の要望を反映したりするうちに建設費は膨らんでいきました」(文科省関係者)
 文科省の第三者検証委員会(委員長=柏木昇東京大名誉教授)の報告書は、新国立の建築費高騰の要因を「意思決定が上層部に偏り過ぎた」と結論づけた。
「報告書提出後、柏木委員長が馳浩文科相のもとを訪れると、その場に森氏がいた。森氏は柏木氏に『自分が悪者になっている。なんで私にヒアリングしないんだ。どうせ私はガンだからな』などと不満をこぼしていました」(同前)
 コンペはやり直しになったが、受注したのは海の森同様、大成建設だった。
「大成は森さんが中堅代議士だった頃から支えてきた“親密企業”の代表格です」(森事務所関係者)
 大成は「(森氏との関係は)工事受注等への影響は全く無いと考えております」と回答している。
 十月七日に開催予定のリオ五輪メダリストの凱旋パレードも、森氏の影が見え隠れする。
「一二年ロンドン五輪の凱旋パレードは銀座中心の約一キロだった。今回は、虎ノ門ヒルズをスタートして、銀座通りを抜けて日本橋まで約四キロ。警備上の問題から一般観覧区域は銀座からの二・五キロなのですが、組織委のお膝元、虎ノ門からのスタートとすることを森氏が譲らなかったと言われています」(警視庁関係者)
 問題は、“五輪のドン”森氏に対して直言できない組織委の体質にあると組織委関係者は指摘する。
「森氏は企業からの出向者に『ここは都、企業、スポーツ、有象無象がいる。味方は俺だけだ。何かあったら言ってこい』と声をかけています。一方で、幹部には武藤敏郎氏ら側近を揃えている。招致に貢献した水野正人元JOC副会長のことを『あいつは外した』と公言している。今の組織委に森氏に表立って逆らう者はいません。だからこそ、外部の目が必要なのです」
 森氏に事実関係を尋ねると、弁護士を通して文書で以下のように回答した。
「(パレードのコースを譲らなかった)事実はありません。パレードのコースは、JOC、JPC等が関係機関の意見を聞いたうえで、決めたものであると認識しています。監理団体になるかどうかは、東京都が判断するものであるところ、東京都からは、何らの申し入れはありません」
 小池氏は、透明性を高め、国民が祝福する東京五輪にできるか。手腕が問われる。

「週刊文春」2016年10月13日号
 
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