カーテンから覗く青空は、まるで私を見放しているかの様だった
冷蔵庫を開けたらレタスの色が変わっていた。この前買い物に出たばかりなのにと思い返してみたら、もう三日も経っていた。三日間、私はロクにご飯を口にしていない。食べることが何よりも癒しに感じていたはずなのにどうしてだろう。腹が鳴ってもお腹が空いたと感じても何か口にする前に前に終わってしまう。厄介なものだ。
ーーこれが所謂、恋煩いと言うやつならば。
約一年と一ヶ月前、私は職場移動で上室と言う男に出会った。背が高く、細身ではないが中肉でもない。声は高くも低くもない。やたらと喋る男で回りからは最低な男だと言われていた。だけど、同時にあのレストランの中では一番頼りにされ、一番目立っていた。正直に言おう、自分でも分からないけれど、もしかしたらその日からもう私の恋は始まっていたのかも知れない。ただ会ってすぐは楽しそうな人だな、としか印象を持たなかったから気付かなかっただけかもしれない。
私が新たに配属されたレストランは温度の異なるオーブンを常に十台以上稼働させ、客の注文の出数を見たり予想したりして食材を調理するようなそんな場所だった。それまで完全予約制のレストランで働きあらかじめ決まった予約数を見て食材を調理していた私にとっては同じレストランと言えど、そこは未知の世界。まるで何をしたら良いのか、どうしたら良いのか想像もつかなかった。
新しいレストランに配属が決まったのは2015年、九月六日。何回目かの勤務を経て私はある日オーブンを担当するポジションに配属された。その日は、上室さんと同じポジションだった。よく喋る彼はよく仕事もした。私の百倍は働き喋っていた。知り合いと呼べる人が一人もいない中働いていた私は、仕事を覚えるのに必死だった。人の名前も顔も覚えていかなくてはと思っていた所だった。そんな私に、仕事が一段落した彼はこう言った。
「目、ちっちゃいな」
この人は腹パンしても良いレベルの事を言ったなと私は思った。一重で目が小さいのは自分でも知っていたけれど人にそう言われたのは初めてだった。でも不思議と、怒りはなく。会話が楽しかった記憶しか残されていない。きっとこれが私が上室さんを室さんを意識し始めたきっかけだろう。きっとまだ恋とは呼べない未熟な気持ち。だけど確かに、あのレストランの誰よりも先に私の頭の中に記憶された。
それから何度も一緒に仕事をした。ある日、彼は私に結婚願望を聞いたことがある。勿論、興味の範疇で。私は当時さっさと結婚していく回りの友達に置いていかれて結婚はしたかった。だけど恋人もいなかった。
「願望はありますけど」
そこまで言ったら上室さんは「俺は絶対したくない」と被せてきた。どうして?と聞いた。答えは覚えていないけど、後から聞いた話では当時付き合っていた彼女が何ら家事をしない人だったようだ。彼が結婚したくないと答えた時、私は勿体ないなとーと他人事のように思っていた。この人と結婚する人はきっと幸せになれるだろうと何の根拠もなく思っていた。
働き初めてしばらくした秋。上室さんが彼女といる所を見た。胸がずしっと痛くなったのは
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