超高額と言われている小野薬品工業のがん免疫薬「オプジーボ」の価格を巡る議論が進んでいる。厚生労働省は5日、中央社会保険医療協議会・薬価専門部会を開き、引き下げの方法を取り上げた。「安価にして必要な患者に広く使用できるようにすべきだ」などの意見が相次いだ。こうした声を強く後押しするような事実が明らかになっていた。
「これほど高い薬価は日本だけ。受容できるわけがない」。医師で構成する全国保険医団体連合会(保団連)の住江憲勇会長は語気を強める。
保団連は8月、米国と英国におけるオプジーボの薬価を調べた。日本では100ミリグラム当たり約73万円であるのに対し、米国では同約30万円、英国では約14万円だった。同じ薬の値段が米国では日本の約4割、英国に至っては約2割でしかなかったのだ。
保団連は調査結果を塩崎恭久厚労相に提出、薬価の再考を強く訴えた。住江会長は「海外と同程度まで薬価を引き下げるのが当然だ」と説く。
なぜ、こうなったのか主な理由は2つある。
ひとつはオプジーボが日本で初めて承認されたからだ。薬価を決めるときに他国の事例を参考にできなかった。もうひとつは最初に悪性黒色腫という珍しい皮膚がんの薬として承認されたことだ。患者が少なくても開発費が回収できるようにするため、高い薬価が付く計算法が適用された。
薬価の見直しは2年に1度が原則で次は2018年度。現行制度ではオプジーボの薬価を適切なタイミングで修正する仕組みがない。そこで厚労省は緊急引き下げに向けた議論に着手した。
オプジーボの薬価の引き下げ率は11月には決まる見通しだ。ただ、50%引き下げたとしても、米国の薬価にすら届かない。そして英国では、現行の薬価をさらに引き下げようとする方針がまとまりつつある。日本の薬価の着地点はどこなのか。