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違法伐採木材 排除できない仕組みに

新国立競技場の模型=長谷川直亮撮影

 2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場建設で、違法伐採された輸入木材の使用が排除できない仕組みになっていることが分かった。事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が大会組織委員会の調達基準を適用しないと決めたためだ。新競技場は木を多用したデザインが特徴だが、専門家から「日本の木材輸入に関する法制度は甘く、国内法だけでは不十分だ」との批判が出ている。

 JSCなど公的機関の発注では、「グリーン購入法」に基づき、原産地で発行された木材の合法性証明書が必要だ。しかし、実際に合法的に伐採された木材かどうかの確認義務までは事業者側に課されておらず、現実には違法伐採された木材の輸入や使用が横行しているのが実情だ。

 組織委は6月、合法性の証明書に加え、計画的な森林経営▽生態系の保全▽先住民族や地域住民の権利▽労働者の安全対策−−などについて事業者側による確認と書面の記録を求める調達基準を定めた。組織委の発注に適用され、罰則はないが、守らない事業者には是正を求めることができる。

 一方、JSCは昨年9月、新競技場の設計・施工主体の公募に際し、グリーン購入法に沿っていればよいとした。組織委は今年7月、調達基準を参考にするようJSCに提案したが、JSCは方針を変えなかった。

 JSCは「国の発注基準に基づいており、問題はない。設計・施工業者に今から新たな条件を付加するのは困難だ。業者に基準を伝えて協力要請することは検討している」と説明する。組織委は「(調達基準は)他の組織に強制するものではない」との立場だ。

 新国立競技場の施工を担当する大成建設は技術提案書で「持続可能性を含めた合法性を認証機関が認めた木材を使用する」としている。認証材なら組織委の基準を満たすが、同社は取材に「(全ての木材を認証材にするかどうかは)現在、設計中のため確定していない」と回答した。【久野華代】

 百村帝彦(ひゃくむら・きみひこ)九州大准教授(森林政策学)の話 熱帯諸国では、中央政府の取り決めを超え、地方政府などが伐採した木材が市場に出るなど、違法伐採が行われることがある。事業者に違法伐採でないことの確認を課す欧米に比べ、日本の合法性確認は緩く、グリーン購入法だけでは違法伐採木材が交じる可能性は高い。

グリーン購入法

 国や独立行政法人などが環境負荷の低減を考慮した物品を率先して購入することを定めた法律。正式名称は「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」。2000年5月制定。木材のほか、紙、文具、家具、制服なども対象。木材の合法性の証明は(1)森林認証(2)業界団体の自主的な合法性確認(3)事業者独自の取り組み−−のいずれかで可能だとしている。

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