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ポンド大暴落!それでも失速しない「イギリス経済」強さのヒミツ
カギは金融政策への「信認」にある

10月2日、イギリスのメイ首相は、イギリスのEU離脱交渉について、来年3月までに始める考えを明らかにした。これをうけて、10月4日に、イギリスの通貨ポンドは31年ぶりの最安値(1ポンド=1.27ドル台)を更新した。

 

国民投票が終了して以降も、海外を含め多くのマスメディアは相変わらず、イギリスのEU離脱についてかなり否定的である。

ポンドの下落に関する報道も、イギリスのEU離脱を嫌気した投資家があたかもイギリスから資本を逃避させているような印象を与えるものばかりである。

思い起こせば、6月23日のイギリスのEU離脱の国民投票直後も、イギリスがEU離脱を決めたことによってイギリス経済は大打撃を被る、もしくは短期的にも大混乱を起こし、下手をすると、この問題が「第二のリーマンショック」を引き起こしかねないというのが海外を含むマスメディアの論調であった。

だが、ここまでの経済指標を見ると、イギリス経済が悪化、ないしは大混乱をきたしているような兆候は見えない。それどころか、他の欧州諸国と比較すると、良好といってもいいくらいである。

「第二のリーマンショック」をもたらしかねないのは、むしろ、イギリスから大量の資本を受け入れて新しい国際金融の拠点となるはずだったフランクフルトに拠点をもつドイツ銀行の方である。

〔PHOTO〕gettyimages

国民投票後、設備投資が急回復

ドイツの話はさておき、イギリス経済の現状について簡単に触れよう。

2016年4-6月期のイギリスの実質GDP成長率は前年比で+2.2%(季節調整済前期比年率換算では+2.4%)と、2015年4-6月期以降では最も高い成長率を記録した。個人消費が堅調だったが、注目すべきは、「総固定資本形成(設備投資、建設・住宅投資、公共投資の合計)」が前期比で+5.8%と高い伸びを記録した点である。

イギリスの実質GDP成長率は2015年4-6月期以降低下傾向にあり、2015年7月から2016年3月までの約3四半期の平均成長率は1.6%程度にとどまっていた。その大きな理由は設備投資の減少で、これは、イギリスのEU離脱懸念による投資抑制のためだというのがコンセンサスであった。

だが、EU離脱懸念が最も高まり、結局、EU離脱を決めた2016年4-6月期になって、設備投資は急回復した。これは、これまでの設備投資抑制を「EU離脱懸念」に求めることにはいささか無理があったのではないかと思わせる結果である。

さらにいえば、EU離脱の国民投票終了後の7月以降の経済指標は改善が加速しつつある。例えば、7月の輸出金額(ポンド建て)は前年比で+10.3%と急増した(ちなみに6月は-2.0%、5月は-5.3%と減少していた)。そして、輸出増にともない、鉱工業生産指数の伸び率も上昇過程に入りつつある(イギリスは化学や薬品の輸出が意外と多い)。

また、サービス輸出も前年比+6.2%の増加となった。サービス輸出については、EU離脱懸念でポンド安がトレンドとして続いていたこともあり、5月以降、高い伸びとなっているが、その多くは、「非居住者(海外観光客)」による消費増である。すなわち、「爆買い」が発生しているのだ。

消費の増加は外国人観光客による「爆買い」にとどまらない。8月の小売数量指数は前年比+4.1%で7月の4.0%増に続き、2ヵ月連続で4%台の伸びとなっており、その伸び率は2015年以降、最も高い部類に入る。

完全失業率も過去最低水準

このような話をすると、EU離脱決定後のイギリス経済の先行き懸念が消費者センチメント(消費者信頼感指数)の悪化にあらわれていると指摘するエコノミストもいる。