口で言うだけなら簡単だ。多くの金融評論家は、現在の金融政策はいずれ弾けるバブルを膨らませたと警鐘を鳴らした。混沌のなかの量的緩和策解消は、さまざまな金融市場を通して実行されている。その様子とまったく同じように賭けてリスクを冒した人は少ない。
このため、ロンドンに本拠を構えるヘッジファンドマネジャー、クリスピン・オディ氏のポートフォリオの異常値は興味深い。オディ氏は、リスクを冒したほんの一握りの投資家の一人。暴落が起きた場合に利益が出るよう設計された、大規模でレバレッジをきかせた売買によって、世界経済に対する自身の悲惨な予想を裏付けた。
オディ氏のファンドは損失を出しており、今年、3分の1以上の価値を失った。同氏の賭けは、日本国債の価格暴落と、金価格の急騰、株式の破滅を前提としている。うまくいけば、顧客のために何億ドルもの利益を稼げるかもしれない。一方、前提が間違っていたら、オディ氏のファンドは生き残れないだろう。
オディ氏の個々のポジションをもっと詳しく検証すると、同氏が自身の読み筋を、危機時に市場がどう動くかという一連の仮説に落とし込んだ方法が明らかになる。オディ氏が今直面している最大のリスクは、たとえ予想した結末が訪れたとしても、同氏のポジションが意図した通りに反応しない可能性が十二分にあることだ。
■仮説1:市場混乱でドル上昇
オディ氏の第1の大きな仮説は、市場の混乱は他の主要通貨に対する米ドルの上昇を引き起こすというもののようだ。投資家に宛てた直近の書簡によると、同氏の旗艦ファンドは、アクティブな為替投資の104%をドルで保有している。これは恐らく、市場で深刻なストレスが生じたら、投資家は最大の国際準備通貨の安全性に駆け込むという考えに基づいている。
この仮説は疑う必要がある。市場の大惨事が起きた場合、金利を引き下げられる唯一の大きな中央銀行は、米連邦準備理事会(FRB)だ。もしFRBが行動を強いられたら、ユーロと円は下落するのではなく、対ドルで上昇する可能性がある。それに加え、ユーロ圏と日本はともに、経常収支が比較的堅調だ。ドルが危機時に急騰する可能性は十分あるが、それにすべてを賭けるのは賢明ではない。