【社説】研究費世界一の韓国になぜ科学分野ノーベル賞受賞者がいないのか

 大隅良典・東京工業大栄誉教授(71)が今年のノーベル医学・生理学賞の受賞者に選ばれた。これにより、日本は科学分野のノーベル賞受賞者を22人輩出したことになる。韓国と日本では科学研究の歴史が異なる。しかし、韓国は国内総生産(GDP)に占める研究開発費の割合が4.15%(2013年)で、主要20カ国・地域(G20)でトップだ。それでも科学分野のノーベル賞受賞がゼロというのは、学界の風土に問題があることを示している。

 科学者40人は9月23日、研究開発(R&D)予算は増えているが、基礎研究は縮小しているとし、政策決定者が研究課題を下達するのではなく、研究者が直接提案した基礎研究への支援を呼びかけた。数日間で科学者数百人が同調した。ソウル大自然科学学部の研究競争力を診断した海外の専門家12人は今年2月、「冒険的な研究よりも短期的な成果を重視しているため、既存の研究を踏襲する追従研究にとどまっている」と指摘した。昨年7月にはソウル大工学部の教授が「韓国は先進国を模倣して改良することはできるが、概念を一新する設計能力があまりに不足している」とする報告書を発表した。

 科学者は公務員が研究課題を定めるトップダウン式の研究開発費配分に問題があると口をそろえる。公務員が科学技術のトレンドを熟知しているはずはなく、官庁ごとの競争で重複投資も生じる。科学界は支援の配分をめぐって四分五裂している。結局政府の支援金は2-3年以内に目に見える成果が期待できる分野に分散投資される。冒険的テーマに挑戦するよりも他人が既に開拓した分野に便乗し、断片的な研究実績を学術誌に発表し、計量的成果程度を立証する研究ばかりが量産されている。このため、国家R&D事業の成功率は82%(12年現在)と世界最高だが、技術が事業化される割合は20%にも満たない。

 米国(353人)に次ぐノーベル賞受賞者125人を輩出した英国の「分子生物学実験室(LMB)」は韓国では中規模の政府出資研究機関に該当する。1962年の設立以来、LMBからはノーベル賞受賞者が13人も出た。55年の歴史で現在の所長は5代目だ。責任者の任期は通常10年を超える。政府は5年単位で予算を与え、一切干渉しない。

 韓国政府は今年3月、囲碁の人工知能(AI)「アルファ碁」と棋士イ・セドルの対決直後、AI研究に1兆ウォン(約920億円)を投じると発表した。このように流行を追い、「グリーン成長」「創造経済」など政権のスローガンに歩調を合わせるだけでは、人類の未来を革新する創意的な研究は生まれにくい。科学技術のマクロ的な流れに対する洞察力、若い人材を発掘する目、研究費を公正に管理する信望を備えた科学リーダーシップの確立が先決だ。

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