「長谷川豊に言及してはならない。取り合うほど相手が得をする」というのが、まともな人たちの見解かもしれない。しかし、江戸しぐさがあれほどまで普及してしまった前例を思うにつけ、やはりでたらめには早いうちに対処しなければならないのではという思いを強くする。

いくらネットでもツッコミが追い付かない

 世の中のスピードは速く、いったん炎上したネタでも、1週間経てば沈静化し始めていることが多い。そんな中、相変わらず燃え続けているのが長谷川豊氏だ。

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 このコーナーは基本的に1週間に1度連載している。実は長谷川氏の人工透析患者に関するブログ記事の炎上は、先週の時点で記事化しようか迷ったネタだった。通常、前週に検討して見送ったネタが翌週に使えることは少ないのだが、この炎上は例外だったようだ。

 炎上が鎮火しなかった理由は“燃料”が投下され続けたからだろう。長谷川氏は批判に対してブログ上で「余りの低レベルな言葉狩りに戸惑っています」と書き、全国腎臓病協議会からの抗議についても謝罪を拒否。そのたびにさらなる反感の声が上がった。

 その後、テレビ大阪『ニュースリアル』と読売テレビ『上沼・高田のクギズケ!』を降板、長谷川氏のブログを転載して配信していたニュースサイトBLOGOSからも契約解除。その都度、長谷川氏はブログを更新している。

 また、お笑いコンビ・ブラックマヨネーズの吉田敬さんが「長谷川さんは、きちんと今後も、病気の方が最善の医療を受けれるようにする為に言っておられると思う」「(長谷川氏のような)本気のジャーナリストを殺されたくはない」(原文ママ)などと擁護したことも火に油を注いだ。

 ネット上には「狙って炎上させているのだから、騒いだら長谷川豊の思うツボ(だから炎上させるな)」というような意見も見られるが、毎日のように新たな進捗があるのだから仕方ない。最初は黙っていたものの、見かねて苦言を呈した人もいるだろう。

 そもそも長谷川氏のブログ記事は投稿されるたびにツッコミどころが多く、いくらネットがバカと暇人のものとはいえツッコミが追い付いていないような状況だ。たとえば、記事に抗議したブロガーfujiponさんへの対応がそうだ。

 fujiponさんの記事「長谷川豊さんの「自業自得の人工透析患者」論と「自分はつねにアリの側である」と信じられる人」に対して長谷川氏はブログでまたもや自論を展開。「何か反論ある?」「もうちょっと現場で人に話を聞きな」などとひどい挑発をしたのだが、fujiponさんはこんな挑発に乗らず、丁寧な説明をブログにアップした。すると長谷川氏は自分が挑発したにもかかわらず、あろうことか論点をうやむやにしたまま「非礼を心よりお詫び申し上げるとともに、丁寧なご返答を頂いたことを……」と表向きに謝罪をすることで逃げたのだ。

 「(現場で話を聞けばfujiponさんも)絶対に私と同じこと言うから。汗をかけ、汗を」とまで言ったくせに、「その『見捨ててもいい患者』って、誰が判断するの?と訊ねたくなるのです」「8〜9割は自己責任、というのは誤解を招く言い方で、『個人差はあるが、8〜9割の患者には、生活習慣に気をつけることで改善・増悪予防の可能性がある』くらいが妥当じゃないか」といったfujiponさんからの疑問や指摘には応えていない。言い返せないところは無視して逃げ、批判されている自分の説を繰り返すだけ。それでいいと思っているのだから、そりゃ「無敵」だろう。

断言の恐ろしさを知らない人と、断言に惹かれてしまう人

 また、長谷川氏は個人ブログから内容をコピー&ペーストしたことも指摘されている。実際に誤字がそのままコピペされており、本人も認めた上で「単なるコピペではなく改行したりして自分の著作物にした」と意味不明な言い訳をしたという。

 個人ブログからコピペしたのは、人工透析患者がどのような公的サービスを受けられるかの内容だった。言うまでもないことだが、「本気のジャーナリスト」は、こういった基本的な情報を調べるときに個人ブログを参考にしない。参考にしたとしても裏付けで確認を取る。正確な情報だという確証がないからだ。この件の場合、個人ブログの情報は「一次ソース」ではない。

 長谷川氏は、たびたびブログ上で、自分がいかに取材をしてきたかを語る。今回の件でも、「私は透析病棟を何度も取材した経験があります」「14年間ニュースを伝え続けてきた私」とアピールし、「なんなら、私を応援する現場の医師たち、15人くらい、呼んできてやろうか?」と威嚇し、「私はこういうブログを書くとき、ウソや適当なことは絶対に書きません」と断言してしまう。

 すでにさまざまなボロが出ているにもかかわらず、「ウソや適当なことは絶対に書きません」と書ける神経がすごい。とはいえ、長谷川氏ご本人の中では個人ブログからのコピペでさえ「適当なこと」に当たらないのだから、彼はこの先もそう言い続けるのだろう。

 人間は誰しも失敗する。まともなジャーナリストや研究者であれば、情報を精査することの難しさや、自分が自信をもって書いたものが間違うことがあると知っているはずだ。取材の量を増やしても、質をどれだけ高めても間違えることはある。取材量はアウトプットの質をある程度担保はするが、絶対ではない。ある時代に「正しい」とされていた研究が、10年後に覆ることは珍しくない。だからこそ、「ウソや適当なことは絶対に書きません」と易々と言ってしまえる人こそ恐ろしい。

 しかし、断言できることが少ない世の中だからこそ、何でもかんでも断言し、強い言葉で言い切る人に価値を感じ、「信じたい」と思ってしまう人たちが一定数いる。長谷川豊的なものに扇動されやすい人たちは気を付けた方がいいかもしれませんと、控えめに申し上げておきたい。

  
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