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法華狼の日記

2012-10-15

[][][][]過去の謝罪や歴史研究を台無しにする名古屋政治家は、河村たかし市長だけではなかった

米国の高校副読本南京事件の犠牲者数が40万人と記述されていることを問題視しているらしい。たしかに日中それぞれの有力説ではない。

しかし、軍民合わせての死者数40万人以上という説は、少なくとも終戦直後戦犯裁判でも見られる。戦後日本でも、蒋介石の主張した43万人説が産経新聞社『蒋介石秘録』に記述されていた*1。つまり、現在の中国が採用している犠牲者30万人説は、数字としては減少しているわけだ。

そして今回の40万人説は、日中に比較して研究に熱心ではないだろう連合国側が、とりあえず採用した説だ。歴史的な根拠もあり、経緯としては奇妙とはいえない。

ページが見つかりません - 毎日新聞

 1937年に中国で起きた南京事件を巡り、米ロサンゼルス市の高校が使う副読本に犠牲者数について、日中両国有識者の主張より多い「40万人」の記述があるとして、名古屋市議2人が14日、ロサンゼルス市に向かい、教育関係者と協議することが分かった。両市は姉妹都市で、河村たかし名古屋市長も「事件について意見交換したい」との趣旨のメッセージを市議に託す。沖縄尖閣諸島国有化日中関係が緊迫化する中、協議の行方は論議を呼ぶ可能性もある。

特に犠牲者数を低く見積もる新たな有力説があるわけでもないのに、他国と「協議」できるような数字とは思えない。日中それぞれの学説は全て推定数でしかなく、事件の対象となった範囲も論者によって異なる。それぞれの犠牲者数は、独立して成り立ちうるのだ。

また、あえて皮肉るなら、教育に対する内政干渉というものではないのか。

 市議によると、河村市長がロサンゼルス在住の日系女性から数年前、南京事件の質問を受けたのをきっかけに副読本の存在がわかった。副読本には「(南京では)日本兵の銃剣の練習台にされたり、機関銃で撃たれて穴に落とされるなどして、40万人の中国人が命を落とした」などの記述があった。河村市長は「副読本とはいえ、姉妹都市の教科書に根拠のない記載があるのは見過ごせず、議論が必要」との考えを示している。

 日中両国の有識者による「日中歴史共同研究委員会」では、南京事件の犠牲者について中国側が「三十余万人」、日本側が「20万人が上限」と主張し、2010年の報告書では両論を併記している。

この記述によると、河村市長は過去に何が批判されていたのか理解していないままで、今なお勉強不足のまま口を出している。

そして毎日新聞も、市議や市長の行動に報道として可能な範囲の論評を行わないのみならず、犠牲者数40万人説がたしかに存在することすら無視しており、内容が不十分だ。

 ◇「無根拠と主張」

 訪米する市議は「日中関係は緊迫しているが、言うべきことは言わないといけない。『40万人』に根拠がないことや、事件について両国の主張が違うことを伝える」と話す。

 河村市長は2月、同じく姉妹都市である南京市の共産党市委員会常務委員らが名古屋市を訪れた際、「通常の戦闘行為はあって残念だが、南京事件というのはなかったのではないか」と発言。これを受けて南京市は名古屋市との交流を停止している。【三木幸治】

名古屋はロサンゼルス市との交流も停止させるつもりなのだろうか。それぞれにとって最初という、記念的な姉妹都市なのだが。

ロサンゼルス市 - 名古屋姉妹友好都市協会

名古屋市は在名古屋米国領事館よりアメリカの都市との姉妹都市提携についての打診を受けました。そしてロサンゼルス市がアメリカ西海岸第1の商工都市であること、優秀な施設を誇る大港湾都市であることなど、その地位と性格が名古屋市に最も似ているという点から、提携に至りました。名古屋市とロサンゼルス市は、両市にとって最初の姉妹都市です。

*1:『南京への道』朝日文庫版378頁。

Gl17Gl17 2012/10/16 12:58 向こうが相手にしたら最期、その時点で惨敗が確定する無謀な勝負を仕掛け続けるって信じられないですね。南京市とのやり取りで、彼等自身は手持ちカードが一枚もなく、土俵に乗れるという認識がそもそも思い込みだと実地に判らされたハズなんですが・・・。
勝つことを期待しておらず、単に国内第三者向けのプロパガンダになればいいにしろ、前回みたく赤恥をかかされては逆効果でしょう。
それとも米国は"親日"だから嫌中を押し付けても同調してくれると思ってるのか。(東京裁判に発する戦後世界の枠組みを否定するなら、ソレは米国の威信を否定するも同義なんですけどね)

南方戦線が思わしくないのを「インパール進出したら改善するかも」と無根拠に手を拡げた旧軍みたいに、単に他方面へ手をつけて左前な実態から逃避したいのか。

rawan60rawan60 2012/10/16 13:36 >『中国の旅』朝日文庫版378頁。

本多勝一氏の「中国の旅」(朝日文庫版)でしょうか?だとしたら378頁は(第九刷時点では)存在しません。また、エントリ説明該当は263頁ではないかと思います。
著書、論旨を勘違いしていたらご容赦ください。

ApemanApeman 2012/10/16 16:40 朝日文庫版の『南京への道』の378ページに該当する記述がありますね。

rawan60rawan60 2012/10/16 17:11 Apeman さん

>『南京への道』の378ページに該当する記述

そうでしたか、そちらのことでしょうね。
「南京への道」は手元に無いので確認できませんでした。

hokke-ookamihokke-ookami 2012/10/17 08:05 Gl17さんへ
>南京市とのやり取りで、彼等自身は手持ちカードが一枚もなく、土俵に乗れるという認識がそもそも思い込みだと実地に判らされたハズなんですが・・・。

そうですねえ。
虐殺は認めざるをえないこと、中国側主張30万人を否定しがたいことだけを学んで、「じゃあ40万人なら否定できる!」と安易に思い込んでしまったのか。


rawan60さん、Apemanさんへ
おっしゃるとおり、『南京への道』の勘違いです。訂正させてもらいました、すみません。
しかも読み返してみると『蒋介石秘録』を直接的に言及していなかったので、別の書籍を情報源として提示すべきだったかもしれません。

golfgolf 2012/10/17 11:25 こんにちは。
この軍民合わせての犠牲者数には、純粋な戦闘行為による死傷者は含まれているのでしょうか?

Gl17Gl17 2012/10/17 17:36 何でここでそんな話聞くの?

golfgolf 2012/10/17 18:59 G17氏

40万人説が存在する事自体はどうでも良いのですが、それを証明するに辺り、どの程度規模を広げて考えなければならないのかが気になっただけです。ブログ主殿は歴史的根拠があるとまで書いているのですから、その辺りにお詳しいのでは無いかと思ったのです。

まあブログ主殿に無視される分には仕方無いですが、少なくとも貴方に聞くつもりなどありませんので、どうぞお構い無く。

chada_5chada_5 2012/10/17 21:20 南京攻略戦は上海から波状進軍した各部隊が近隣の村落で略奪・強姦・殺人を行いながら南京市の近隣県に到達(ここでも非行は行われた)、その後南京市(当然城外も含まれる)を包囲する形成となりました。
虐殺を始めとする各種の残虐行為を南京城外・城内、南京市、包容県などの近隣村落など各地域で区切って
名付けたとしましょう。
そうすると南京事件の範囲も変わってくるでしょうね。
しかしその場合、南京事件の他に例えば包容県など他地域の名前が冠された事件が並列されるだけです。
そして何れにしても事件を起こした主体が日本軍であることに変わりはありません。

南京事件やその範囲について知りたいなら、まずは笠原十九司の『南京事件』を読むべきでしょうね。

takataka 2012/10/17 22:18 南京事件の定義が、曖昧だな。
上海から、南京への進軍中の、
戦死者は、全部、南京事件の
犠牲者か?

golfgolf 2012/10/18 00:11 >そして何れにしても事件を起こした主体が日本軍であることに変わりはありません。

なるほど(笑)。分かりやすい。
ただ私が知りたいのは南京事件の範囲をどのように定義すれば40万人に達するのかという点です。少なくとも犠牲者数40万人説が歴史的な根拠があると言うからには、その定義は明確に示す義務はあるかと思います。少なくとも、「蒋介石がそのように言った」なんてのが根拠になるとは思っている訳では無いでしょうし・・・。

>南京事件やその範囲について知りたいなら、まずは笠原十九司の『南京事件』を読むべきでしょうね。

笠原十九司氏は40万人説を支持している訳では無いそうですし、氏の定義はこの場では役に立たないと思います。

Gl17Gl17 2012/10/18 10:22 相手に聞く以外に何一つ知識がないのに、随分と態度でかいな。毎度よくあるパターンだけど。
まずどこを疑ったらいいか、すら相手方から教えてもらわないと知らないのね。

事件の大雑把な概要くらいは自分で調べなさいよ、せめて。
40万人説はどうでもいい、という割には、その数字だけしか興味がないようだし。

りょうりょう 2012/10/18 10:47 40万人説、30万人説、20万人…まぼろし説など調べればその内容とそれぞれの抱えている問題点わかるでしょうが、一般的な読解力さえあれば。
関連史料読みもせずにしつこく質問するより、
少しでも自分の努力を見せてくれたら、
みんなも喜んで答えるでしょう。

golfgolf 2012/10/18 18:46 G17氏

>相手に聞く以外に何一つ知識がないのに、随分と態度でかいな。
態度のでかい人が言いそうな台詞ですね。質問に答えても無いのに、とりあえず相手の無知を詰っておけば論破した気分に浸れるって良いですね(笑)

>40万人説はどうでもいい
知識人ぶっている割に基本的な文脈を取り違えてますね。

というより、貴方には聞いていませんからもう結構ですよ。


りょう氏

>40万人説、30万人説、20万人…まぼろし説など調べればその内容とそれぞれの抱えている問題点わかるでしょうが、一般的な読解力さえあれば。

そんな事聞いてません。市議が「40万人説に根拠が無い」という意見に対して「根拠がある」と名言したのだから、その根拠が具体的に何なのか教えてくれても良いのではないかと質問しているんですよ。それが疑わしいとか、証拠を出せと言っているのでは無く、どのような「数合わせ」をすれば犠牲者数が40万人になるのかが興味深いんです。

しつこく聞いてるつもりもありませんし、相手にする気にならないなら無視すれば良いんじゃないですか?

WuwangWuwang 2012/10/18 19:20 「歴史的な根拠」というのは「40万人説」に対してではなくて
「副読本に記載される経緯」についてですよ。

hokke-ookamihokke-ookami 2012/10/19 01:00 golfさん、こんにちは。
>この軍民合わせての犠牲者数には、純粋な戦闘行為による死傷者は含まれているのでしょうか?

43万人説と考えて回答しますと、わざわざ戦闘行為による死傷者を別ける計算はしていないようです。
そもそも宣戦布告も行っておらず、捕虜殺害によって降伏という選択肢も閉ざした日本軍が、「純粋な戦闘行為」を行えたのでしょうか? そして殺害が合法的な戦闘によるものだという証立てが日本軍にできたのでしょうか?
http://www.geocities.jp/yu77799/haizanheigari.html
ちなみに、34万人説の南京軍事法廷判決や判決で20万人以上説を出した東京裁判でも、非戦闘員の殺害はもちろん批難していますが、たとえば埋葬死者から戦死者を引くような記述はありません。

>少なくとも、「蒋介石がそのように言った」なんてのが根拠になるとは思っている訳では無いでしょうし・・・。

根拠になりますよ。このエントリでは、既存の説かどうかを論点にしているのですから。

>どのような「数合わせ」をすれば犠牲者数が40万人になるのかが興味深いんです。

「数合わせ」って何ですか? 副読本では中華民国説から1万桁を切り下げていますが、そのことですか?


Gl17さんへ
>まずどこを疑ったらいいか、すら相手方から教えてもらわないと知らないのね。

戦後に蒋介石が語り、加害国側のメディアが載せた説が根拠にならないと主張するなら、それこそ何らかの根拠が欲しいところですね。


chada_5さんへ
>しかしその場合、南京事件の他に例えば包容県など他地域の名前が冠された事件が並列されるだけです。

実際、南京以外のあまり知られていない虐殺事件も複数ありますからね。


takaさんへ
>南京事件の定義が、曖昧だな。

念のため、このエントリでは「定義」は関係ありません。過去に同種の説があったかどうかだけが問題ですから。


りょうさんへ
もちろん各説を学ぶことも有意義ですが、そもそも見かけの人数の多寡にだけこだわることに大きな意味がないと理解してもらえるかどうか……


Wuwangさんへ
連合国側の副読本だ、ということが重要なんですよね、ここでは。

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