(cache) 南京事件の否定論者は3通り存在する

裏取りは基本的にしてません。しない、できない、やる気がない。

2006-11-09

■[あれこれ]南京事件の否定論者は3通り存在する

もう長いあいだ南京事件に否定的な人たちを観察してますが、否定論者はおおまかに以下の3通りの分類ができると思います。

A型: 南京事件が実在したことを知りつつ、悪しき意図をもって「なかった」と嘘を吐いている人たち*1
B型: 南京事件が実在したことを本当に知らず、悪しき意図をもってA型の主張に便乗する人たち
C型: 特に意図があるわけではないが、A～B型の主張をうっかり信じてしまった人たち

このうちC型の人たちを説得するのは実に容易なことで、ただ史料を挙げて事実を説明さえすれば、すぐに納得してくれるし、むしろ自分を騙した連中に憤慨して彼らに対する強力な批判者になってくれたりします。だからC型の人がどれだけ増加してもさほど心配する必要はありません。

またA型の人たちははっきり言って「びょーき」なので*2、説得しようとしてもムダ。その場で批判して反論不能に追い込んだとしても、批判者がいなくなってほとぼりの冷めたころにはまた同じ手の嘘を吐きます。しかし説得がムダなのであれば最初から放っておけばよく、C型の人がうっかり引っかかってしまわないように淡々とその詭弁を指摘しておけばよいだけの話なので、これもまた与しやすい相手といえます。

いちばん相手にして厄介なのがB型の人たちで、実証派が史料に基づいて事件を証明したあとで、A型、C型、どちらの道へも転がりうるんですね。うまく「中国の横暴は許せるものではないが、なるほど南京事件については史実と認めざるをえない」などと改心してくれればいいんですが、下手をうつとA型に「進化」してしまって医者でなければ救済できない場所へ追い込んでしまう危険があります*3。実証派はその点に留意しておくべきです。正しいことを言ってるだけなのに、否定論者のその後の面倒まで見てやらなきゃなんないなんて、やれやれだぜ。

南京事件の否定論者が近ごろ増えてきているとの印象を表明する人もありますが、私はむしろ目に見えるほど急速に減ってきているように感じています*4。振りかえれば、本宮ひろ志さんが著作『国が燃える』で南京事件に触れたり、東中野修道さんが関西のTV番組*5に出演して否定論を展開したりしたころなどは一番ひどかった。それにイラク紛争で数人の日本人が人質にされたときも、かなり絶望的な気分を感じましたね*6。そのころに比べれば、いまは断然マシです。

Apemanさんやbluefox014さん、ゆうさんといった方たちの誠実な議論や史料提示が一番の要因でしょう。これによりC型の人たちのほとんどは否定論の正体に気付いて見切りをつけたし、また依然として否定的論調を堅持する人でも全面否定はついに断念せざるをえず、部分否定*7がようやくできる程度までに後退しました。くだらない否定論であっても、いちいち批判しておくことが必要だということです。そして批判するときには、相手のタイプによって対応を柔軟に変えることも重要です。

私は何もしてませんが*8。

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*1：「悪しき意図」には、中国人や「サヨク」を中傷して優越的な気分を味わいたいとか、いんちき否定本を売って金儲けしたいとか、いずれにしてもそういうよからぬことが当てはまります。

*2：おそらく比喩の域に留まらない。

*3：B型否定論者の多くはオフラインにおいてプライドを傷付けられる経験があり、オンラインにおいて誰かを差別中傷することによりプライドを回復しようとしているように見えます。実証派の説明の仕方によってはプライドの損傷を感じてますます意固地になり、実証派への報復心から故意の嘘吐き（つまりA型）に変貌するかもしれません。

*4：スパンをどれだけ取るかによっても違ってくるのですが。

*5：やしきたかじんさんの『たかじんのそこまで言って委員会』。よみうりテレビ。東中野さんは典型的なA型の否定論者。

*6：南京事件否定論だけでなく、いわゆる「ネット右翼」が関心を持ちそうな話題の全てにおいての傾向です。否定論が巧妙になったとか説得力を増したということではなく、冷静な議論をしようとしても飛びかう怒号にかき消されるという状況でした。

*7：被害者はもうちょっと少なかったとか、あれは正当防衛だったとか、むしろ原因を作った中国の方が悪いとか、事実だとしても中国の宣伝は許せんとか、etc...

*8：だめじゃん！

コメント一覧

李漢南 2006/11/10 17:53 日頃は実証や史料の必要性を説いておられるのに*3のように偏見で決め付けちゃっていいんでしょうか。*1は否定論者の「中国の犬」とか「反日商売」とかいう中傷と同質の物ではありませんか。それとも信ずるに足る統計や証拠があるのですか。

mujin 2006/11/10 18:33 李漢南さん、コメントありがとうございます。
脚注部分(*)は余談みたいなもんなので（だから「おそらく」とか「ように見える」とか「かもしれない」とか自信なさげな書き方なのね）、あんまり厳しく責められても困っちゃうんですけど、否定論者は100人単位のオーダー、否定論者の主張は10000件オーダーで見てきましたが、まあ以上のエントリ内容に大きく矛盾するような現象はあんまり記憶してないですねー。言ってみれば経験則が事実の確かさを裏付けるというか…。
ていうか、A型とかなんとかっていうのは、これまで見てきた否定論者の言動をあとで分類したものですから、分類が間違っているかもという恐れはありえても、そうした言動が実際にあったのかどうかという問いは発生しようがないんですよね。たとえば東中野修道さんの主張は80年代にさんざん破綻を指摘されているにも関わらず、当人はまったく反省の色を見せず未だに当時と同じ主張を繰りかえしてます。度重なる批判を受けて反証となる史料も自分の目で見ているのに、それでも従来の主張を取りさげず、誤りを指摘された部分についても自説の修正をほとんどしてませんよね。私の目には、いんちき否定本を売りたくて嘘を吐いてるか、他人を中傷して精神的優越を味わいたいのだろうと見えてきますが、ほかにどんなことが考えられますでしょう？
あー、プライドうんぬんも経験則ですねー。だから証明せよと言われれば、証明できまへん、すんまへん、としか言いようがないんですが、でもほとんどの人は私と同じような印象を持ってるんじゃないでしょうか。学校に一人や二人はいませんでした？教室では暗くて友達もなくて時にはいじめられたりもしたけど、やたら戦車だのヒトラーの生涯だのに詳しいってのが。私自身がそんな感じだったので（あ、別に戦車やヒトラーには詳しくはないです）、よく目に付くんですよ。まあ、そんなことはさておき、実際に否定論者ってなにかといえば「外国にナメられちゃいかん」とか「国家の誇り」とか「自衛のための軍備」とか「核抑止論」とか「毅然とした対応」とか「すぐれた遺伝子」なんとかかんとか…やたらと強さと弱さをテーマにした話をしますよね。うーん、どっちが強いとかどっちが弱いとかそんなんどうでもええやんって私は思うんですけど、これは否定論者にとくに強く現れる特徴なのですね。南京事件を史実と認めてなおかつ強さへの憧憬を持ってる人ってのは見かけても、南京事件を否定してなおかつ人間だれしも別に弱くてええやんって言う人は未だにこの目で見たことがないです。まー、経験則ですよ。

李漢南 2006/11/10 22:24 差別問題を知る者としては経験則には危うさを感じてしまいますが、まあここはむじんさんのブログですから何を書いてもいいと思いますが、とりあえず実証的な統計がないことはわかりました。ご返答ありがとうございました。

mujin 2006/11/11 07:22 んー、どうも私のいう経験則と李漢南さんのいう経験則とで意味のずれがあるようです。私のいう経験則は差別問題とは関係ないですもん（少数の体験例をもって物事の判断を一般化するなというご指摘だと思います）。
南京事件否定論ってのは1970年代から現在にいたるまで延々と続けられてきたもので、その否定論者を観察して分類したのが上のエントリなんですね。この分類にあてはまらない例外的な否定論者ってのを私の知るかぎりでは見たことがないし、まして分類を反証する決定的な事例も今までなかったわけです。よろしいですか、70年代から現在までの否定論の歴史を見ても、私自身の否定論を観察してきた経験としても、上のA～C分類をくつがえす行動をとる否定論者は一人もいなかったんですよ。もちろん統計的調査をしたわけではありません。しかし再調査するまでもないとも思います。もし李漢南さんが望まれるなら統計を取ること自体は難しくないと思います。
たとえばブログや2ch掲示板などで否定論を展開している人に対して李漢南さんご自身で彼らの誤謬を指摘してみてください。その論点では反駁できなくても史実を否定することにかけては一歩も譲らず、論点を変えたり、ひどいときには批判者の人格を中傷したりするでしょうから。このとき自説の誤りを知って主張を改める人を私はC型に分類し、自説の誤りを知りつつ否定論を強弁する人をA型に分類し、まだ自説の誤りに気付かずなおかつなんとかして史実を否定したがっている人をB型に分類しているのですが、実際のところA～B型の人がなぜ史実を認めたがらないかは大した問題ではないのですね。だから精神的満足だろうとか自著を売りたいがためだろうとかいい加減に推測してみたわけですが、しかし今後はこの点がますます重要な論点として俎上にあがってくるだろうと思います。そうした議論に移るための足がかりとしてA～C分類がその前提として必要になってくるわけです。

李漢南 2006/11/13 19:06 私は分類という観点と手法そのものに関しては特に言うことはありません。*1と*3の論拠に推測以上のものがあるわけではないことは、改めてよくわかりました。ご迷惑をおかけしました。

「史実を認めたがらない」というよりは、共産主義者にしろ民族主義者にしろ強固に思想を持つ人は「自身の思想が間違ってると認めたがらない」です。人間は容易には自身を否定できませんから。「自身の信ずる物は疑う余地無く絶対に正しく、それを否定する者は不誠実で絶対に間違っており、間違いを持つ者は有害であり存在してはならないので正さねばならない。」と考えるポル・ポト的人物はとくにそうで、手に負えません。ただ、それも言論の自由のもとに存在が許される思想の一つなのでしょう。

mujin 2006/12/12 10:18 ほんとはもっと早く返信しておきたかったんだけど、どうしても気が重くて先延ばしにしてしまいます。落ちついたら必ず返信しますので、しばらくお待ちくだされ。

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