このブログで何度か書いてきましたが、差別をする人間というものは、自分がしている行為だという意識がないから平気で差別をするのです。差別的発言も、「自分が言っていることは事実だ」。自分がしている行動も、「事実に基づいた正当な行動だ」と思っているのです。私はこれが「愛国カルト」とか「ネトウヨ」とか「レイシスト」とか呼ばれる人の基本マインドだと思っています。具体的な例を見てみましょう。

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(↑桜井誠のツイッター

桜井誠といえば、「在特会」の初代会長として有名な人ですが、この短いコメントに、彼や、彼を支持する人間の基本的な思考が表れていると言っても過言ではないでしょう。
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==誰が誰の罪を猛省するのか==


2013年5月に、大阪で「日本人ですか」と尋ねた上で高齢者2人に重傷を負わせた事件の犯人は、確かに韓国籍の男でした(ただし心神喪失で不起訴)。(J-Cast News参照

2014年3月に、京都で女子中学生に覚せい剤を注射したうえでわいせつな行為をした犯人が韓国籍なのも事実です(桜井誠は「強姦」と言っていますが、新聞報道は「わいせつな行為」となっています)。(Lighthouse参照
 
先日靖国神社に爆発物を仕掛けた犯人が韓国人だったことも事実です。(朝日新聞参照

これら3つの事件の犯人が在日韓国人、もしくは来日韓国人だったことは確かですが、桜井氏の主張は、その後がおかしい。
 
>>自省反省猛省をするのが人間のはずですが
>>不逞鮮人らにはそれすらできないようで。


なんで犯人以外の人間が、自省反省猛省する必要がある!!??
 
犯人は、もちろん自省反省猛省する必要がありますし、罰を受けるべきです。事実、犯人は全員逮捕されているわけです。

しかし、5000万人の本国の韓国人や、日本で暮らしているおよそ50万の在日韓国人は、そんな犯罪者とは何の関係もありません。韓国人Aの犯罪で、韓国人Bが反省しなければいけないなんて理屈があるわけがないのです。

そんなことを言ったら、麻原彰晃も、宮崎勤も日本人です。彼らの犯罪規模は靖国神社のトイレに爆発物を仕掛けた程度じゃありませんが、桜井氏は麻原彰晃宮崎勤の罪に対し、同じ日本人だという理由だけで、自省反省猛省するのでしょうか?

国内だけでなく、海外で事件を起こした日本人もいます。フランスで恐るべき「パリ人肉事件」を起こしたのは佐川一政という日本人でしたが、桜井氏は佐川一政の行為について、自省反省猛省したのでしょうか? テルアビブの空港で銃を乱射したのは、のちに「日本赤軍」を名乗る日本人でしたが、この行為に対し、桜井氏は自省反省猛省したのでしょうか? フィリピンで1万2000人もの少女を買春したのは日本人の中学校校長でしたが、桜井氏は自省反省猛省したのでしょうか? 桜井氏は、フランス人やイスラエル人やフィリピン人から、日本人だというだけで「自省反省猛省しろ」と言われて、言われるとおりに反省するのでしょうか? そもそも、自分がやったことじゃないのに、どうやって反省するんですかね?

これが差別の基本マインドです。

桜井氏は、自分の発言が差別的なものだ、自分の意識が差別的なものだ、という考えはまるでありません。彼は、「韓国人は危険だ」「なのに韓国人は反省しない」という、彼の脳内にある「事実」を述べていて、その「事実」に基づいて、「不逞鮮人は日本から出ていけ」と叫ぶことは、合理的な行為だと考えているのです。その自分が「不逞鮮人」として憎悪を向けている対象が、犯罪と何の関係もない一般市民であるにも関わらず。

しかし、麻原彰晃や佐川一政の例だけでもわかるように、これはまったく合理性の無い憎悪に過ぎません。そして、これこそが「差別」と呼ばれるものなのです。

日本人自身が絡むと不思議とこの問題を理解できない人もいるので、黒人差別で考えてみるとわかりやすいと思います。

黒人差別は、「黒人は劣っている」とか「黒人は危険だ」とか、そういう偏見を理由にして発生します。黒人を差別する人間にとって、「黒人は劣っている」とか「黒人は危険だ」とかは「事実」で、それを理由に黒人を危険視したり、白人と同等の扱いをしなかったりすることは、合理的な行為であり、差別ではない、と考えるのでしょうが、そのような考え方こそが差別であることは、もはや世界的な常識だと言っても過言ではないでしょう。

現在IS(「イスラム国」)や、アルカイダ、そのほか「イスラム過激派」と呼ばれる人たちが、世界中でテロを起こしています。じゃあ、それらと何の関係もないイスラム教徒に「自省反省猛省しろ!」と迫るのが正しいでしょうか? 何の関係もないイスラム教徒を危険視したり、蔑視したり、「帰れ」「出ていけ」と言うことが正しいことでしょうか? 現在、アメリカではドナルド・トランプがその急先鋒に立っていますね。

桜井氏の発言は、イスラム過激派を理由にイスラム教徒を迫害する輩と、まさに全く同じだと言えるでしょう。


==竹島を根拠に「在日」を誹謗するトンデモマインド==


先日も、このブログにこんな発言が書き込まれました

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ブログ主である私を在日認定したり(「このブログについて」くらい読んでほしいぜ!)、「日韓基本条約で釈放された在日韓国朝鮮人犯罪者が中心になって民団や総連が作られた」なんて、あんまりにもとんでもない事実誤認を言ったりひどいコメントですが(どうやって1965年の日韓基本条約で釈放された連中が、1946年成立の民団や1955年成立の総連の創設中心メンバーになれるんだ)、今回問題にしたいのはこの箇所。

>>戦前、関東大震災で朝鮮人が暴動を起こした事実をデマだと言ってる
>>無知ザイニチが多いですが、
>>在日韓国民団の創設者 朴烈は、関東大震災で皇太子暗殺を謀り
>>大逆罪で服役したテロリストです。

>>竹島問題の原点、韓国が日本漁船を拿捕し44人をサツ害し
>>3929人の漁民を拉致したこともご存知ありませんか?


(略)

>>ザイニチの拠点であるこれらの組織は犯罪者集団であり、
>>そこに帰属するザイニチはすべて犯罪者の仲間という事実は明白に証明されています。


関東大震災の際の朝鮮人暴動については、その多くはデマであったというのが、現在の歴史の常識だと思いますが、仮に事実が含まれていようと、その暴動に関わっていない朝鮮人に対して罵声を浴びせる権利は誰にもありません。逆に関東大震災の時に、「朝鮮人が暴動を起こしている」「井戸に毒を流している」という噂に踊らされて、朝鮮人を虐殺した日本人がいたことも明白な事実ですが、それを根拠に韓国朝鮮人が「不逞日本人」などと言って来たらどう思いますかね。我々はこの事件を教訓に、二度とそのようなことは起こさぬよう歴史に学ぶ必要はあるでしょうが、どうやら桜井氏は全く歴史に学ばず、それこそ「自省反省猛省」していないようです。

「自省反省猛省するのが人間」と言いながら、関東大震災の朝鮮人へのヘイトクライムを自省反省猛省しないで、むしろ現在積極的に憎悪を演出しようとしている桜井氏は、人間でないことになってしまいませんかね?

まして朴烈や、竹島問題など、一般の在日韓国朝鮮人には、完全に何のかかわりもないことでしょう。そんなことを根拠に在日コリアンに憎悪を向けたところで、一体彼らにどうしろって言うんでしょう? (ついでに言っておきますと、民団や総連は別に「ザイニチの拠点」でもなければ、一般の在日韓国朝鮮人が民団や総連に「帰属」しているわけでもない)


==個人と属性との区別==


このブログでは、在日韓国人や来日韓国人の犯罪についても何度か記事にしましたが、憎むべきは犯罪者であり、何の犯罪もしていない、その辺を歩いている在日韓国人に憎悪をぶつけたり、彼らを罵倒したりすることは、決して許されることではありません
 
韓国人Aの犯罪に対する憎悪を、韓国人Bに向ける。それこそ偏見であり、差別と呼ばれるものなのです。


しかし、差別をする人間は、それがおかしなことだと思っていません。同じ韓国人、同じイスラム教徒、同じ黒人。個人というものを意識する音ができず、相手が所属する集団や民族yは宗教に対して、十把一絡げに、単純に考えることしかできないと、このように、差別を差別と認識することさえできないのです。

我々は日本人ですので、日本人のことは良く知っています。大勢の日本人と関わっているので、日本人が一枚岩ではなく、それぞれ別の人格を持った、別々の人間であることを良く知っています。だから、日本人Aの犯罪の責任を、日本人Bに着せるようなことはしませんし、日本人Cを見て、日本人Dの人格を判断することもしません。

ところが、これが外国人となると、ガラッと事情が変わってしまいます。例えば貴方の職場にトルクメニスタン人Aが来たとして、そのA氏がいい人物であれば、トルクメニスタン人全体に対して好感を持ってしまうことでしょうし、逆にそのA氏が酷い人物なら、トルクメニスタン人全体に対して不信感を抱いてしまいかねません。

本来、トルクメニスタン人A氏の人格は、A氏個人のものなのですが、他のトルクメニスタン人を知らない我々は、A氏の行動を、ついつい「トルクメニスタン人の行動」と受け取ってしまいがちです。

私は留学経験があり、学校で唯一の日本人だった私の行動は、よく「日本人の行動」として受け取られてしまいました。例えば、私が体育館シューズを忘れたので、靴下で体育館に入ったら、「日本人は室内で靴を脱ぐって聞いてたけど、体育館でも脱ぐんだな」と言われたことがあります。私は、たまたま靴を忘れただけで、「日本人」がこういう行動をとるわけではない、と説明しましたが、このようなことは頻繁に起こりました。それ以来、私は外国人に対し、その人の行動を「○○人の行動」と見なすことはやめようと心に誓ったものです。

日本人も韓国人もトルクメニスタン人もイスラム教徒も、どこの国でも色々な人がいるはずで、大犯罪者もいれば、尊敬できる人間もいます。相手の国の政府を嫌うのは十分理解できます。私も韓国政府や北朝鮮政府や中国政府は大嫌いです(現行日本政府も心底大嫌いですが)。竹島問題を根拠に、韓国政府や韓国という国家を嫌うのは理解できますが、それと個人の人格は全くの別問題ですし、韓国人Aと韓国人Bは、同じ国籍と言うだけで、全くの別人です。パリでテロを起こしたイスラム教徒と、日本で平穏に暮らしているイスラム教徒は、同じイスラム教徒というだけで、全くの別人です。我々は、決してそのことを忘れてはいけないのです。そのことを忘れた人間が、冒頭で紹介した桜井氏なのです。


==個人の尊重こそ愛国カルトにならない鍵==


日本国憲法第13条には、「すべて国民は個人として尊重される」とあります。これは、たとえ親兄弟が犯罪者であっても、その責任が自分に向くことはない、ということでもあります。人は個人の人格や能力で判断されるべきであり、人種や民族や国籍や性別で判断されるべきではありません。そのようなもので他者を判断することが、「偏見」とか「差別」とか呼ばれるものなのです。

憲法には「すべて国民は」と書かれていますが、外国人に対してでも、「あの人は○○人だから」ではなく、その人個人の人格で判断するというのは、倫理上当然のことだと言っていいでしょう。(「差別主義者」と呼ばれるような人たちは、自分たちの判断基準が差別的であるという自覚がない)

この「個人の尊重」ということはとても大切なことです。これを怠るのが、愛国カルトとかネトウヨとか呼ばれる人たちです。

彼らは外国人に対してだけでなく、日本人に対しても、個人の考えより、所属集団を優先させようとします。なので、「日本人はこうあるべき」という考えを持ち、自分の考える「日本人像」に反する者を、「反日」認定したり、在日認定したりして、「日本人」と認めまいとします。「個人の自由な意見」を尊重しない結果だと言えるでしょう。

逆に言えば、個人を尊重する限り、自分自身が愛国カルトやネトウヨのようになることは、かなりの程度防げます。外国人Aと外国人Bはまったく別人格ですし、「日本人」というのは単に同じ国籍を所有しているだけなので、同じ意見を共有する必要はないと理解できます。

IS(「イスラム国」)も、「イスラム教徒はこうあるべき」という自分の考えを、他人に押し付けているから、あのようになるのです。それどころか、イスラム教徒でない人間に対してまで、そのような考えを押し付けていますからね。

すこし話が広がってしまいましたが、こうして見てみると、「差別」とは、「個人を尊重しないこと」と言えるかもしれません。

キング牧師は言いました。

「私には夢がある。それは、いつの日か、私の4人の幼い子どもたちが、肌の色によってではなく、人格そのものによって評価される国に住むという夢である」

国籍や民族で他人を判断することは、肌の色で相手を判断するのと同様の行為です。まして、誰かが起こした犯罪について、同じ国籍だというだけで自省反省猛省を求めるなど、全く論理性の無い誹謗中傷と言わざるを得ないでしょう。それは、キング牧師が戦った差別と同じものなのです。

我々は、キング牧師の言葉を、「肌の色」だけでなく「人種」や「民族」や「国籍」や「性別」や「家柄」なども加えた上で、心に刻む必要があるでしょう。


==追記==

この桜井氏にリプライしている人たち、酷いコメントがわんさかあるわけですが、こういうコメントは実に面白いですね。

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@east_blueのツイート

>>言い訳、反省求めてません。


おいおい、桜井氏は「韓国人は反省しない」って怒ってたんじゃないのか? まあ、そこは桜井氏と見解が違う人なのかもしれませんが、その後が実に面白い。
 
>>日本人には
>>良い韓国人と悪い韓国人の見分けがつかないので

>>韓国人に関わらない
>>「不可侵の日韓断行」を訴えるのみ


じゃあ、あんたには
「良い日本人と悪い日本人」の
見分けがつくのか!!??


そんな見分けがついたらエスパーですね。

「日本人には良い韓国人と悪い韓国人の見分けはつかないから、十把一絡げに一蓮托生で日韓断行だ!」という理屈なら、我々は良いアメリカ人と悪いアメリカ人の見分けだってつきませんし、良いブラジル人と悪いブラジル人の見分けだって、良いザンビア人と悪いザンビア人の見分けだってつかないので、日本は世界中と断交することになりますね。当然、外国人から見たって、良い日本人と悪い日本人の見分けはつかないので、日本と断交することになります。

そして何より、日本人にだって、「良い日本人」と「悪い日本人」の見分けなんてつくはずないので、もう無人島に一人で引きこもるしかなくなります。

韓国が嫌いなばかりに、凄い理屈を持ち出す人もいるものです。

井上太郎は帰化した韓国朝鮮人の内心を除ける超能力の持ち主でしたが(こちらの記事参照)、愛国カルトの中には、時々こういうエスパーがいるようです。常々彼らの思考は常人離れしていると思っていましたが、やはり通常の人類とは違った、「見えないものが見える」という特殊能力をお持ちのようですね。

予知とか念力とかならまだしも、そんな超能力は羨ましくもなんともないので、間違ってでも手に入れてしまわないよう、気をつけたいものですね。

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