『スタプラ!』キャラクターエピソード
卯月花音 後編
公園での出来事以来、花音は驚くほど変わった。
子役に代わる新しいイメージを模索しようと相談している時も、ふと目が合うと、幸せそうに微笑みを浮かべる。
- 花音
- 「ダンスで格好良さをアピール、ですよね? えと、振り付けは……」
- 凛々子
- 「おおお〜、うちにも振りつけ教えてくんない? 今日はうちのバディがお休みなんよ〜。みんなを悩殺するようなレッツダンシンをひとつ……」
- 花音
- 「ちょっと! 私のバディさんを取らないでください!」
- 凛々子
- 「じ〜〜〜っ」
- 花音
- 「な、何ですか?」
花音は凜々子に見つめられて頬を赤らめながらも、体を寄せて腕を絡めてくる。
- 凛々子
- 「私のバディさん、ねえ。ふ〜ん、ふ〜ん、ふ〜〜〜ん」
突然の雨に濡れた時は、
- 花音
- 「ほらほら、拭いてあげますから、じっとしててください。ほんと、私がいないとダメなんですから……」
階段で足を滑らせてしまったこともある。
- 花音
- 「ひゃっ!」
間一髪で抱きとめると、
- 花音
- 「……」
そのまま離れようとせず、抱きついたまま、目を閉じて胸に顔を埋めているのだった。
*
- 十萌
- 「花音ちゃん、朗報ですよ! この前、受けそびれたオーディション、特別にもう一度チャレンジ出来ることになったんです!」
- 花音
- 「え?」
- 十萌
- 「あちらのプロデューサーさんが決めあぐねてるって聞いて、バディさんが花音ちゃんのために頭を下げにいってくれたんです。感謝しなくちゃですね」
- 花音
- 「バディさん……」
花音は、うっとりとしたまなざしで呟くのだった。
- 花音
- 「……かっこいい……」
そのオーディションにも見事に合格!
花音は本当に絶好調だ。表情も、以前とは別人のように明るい。
精神的な状態が良くなったため、もともと持っていた才能を、いかんなく発揮できるようになったのだろう。
- 花音
- 「バディさん! あの、これに挑戦してみてもいいですか?」
花音が手にしているのは、大人気アニメ『スパイシーキュアキュア』の劇場版声優オーディションの案内だ。
- 花音
- 「色んな人が集まる、すごいオーディションになると思いますけど……OKですか? やった!」
オーディションのエントリーに来たアニメ製作会社で、事件は起きた。
- 花音
- 「わあ、グッズやポスターがいっぱいですね!……あっ」
- みなせ
- 「あっ」
人気美少女タレント・如月みなせと鉢合わせたのだ。
- みなせ
- 「あら、花音。おひさし〜。何か聞いたんだけど、星華学院の学生にまで落ちぶれちゃったんでしょ? かわいそ〜」
- 花音
- 「……」
- みなせ
- 「ママもそう思うでしょ?」
- みなせママ
- 「もちろんよぉ。みなせちゃんは、こうならないようにママが守ってあげるからね。さあさあ、次のお仕事の前に、ケーキでも食べに行きましょ」
二人は歩いて行きながらも、聞こえよがしに話している。
- みなせ
- 「びっくりだよね、花音もオーディションに出るなんて」
- みなせママ
- 「みなせちゃんの方がず〜っと実力あるし、受かりっこないのにねえ」
- みなせ
- 「だよねだよね! それに見た? 一緒にいた、あの冴えないやつ」
- みなせママ
- 「あの子は誰からも構ってもらえない可哀想な子だし、背後霊とかじゃないかしら?」
拳を握りしめ、うつむいている花音。
心配して見ていると、大きく深呼吸して、元通りの明るい顔を上げるのだった。
- 花音
- 「大丈夫ですよ、バディさん。さ、全力で頑張りましょう!」
一次、二次、三次……花音もみなせも厳しい審査を勝ち抜き、ついに最終オーディションまでたどり着いた。
- みなせ
- 「あら、花音。あんたも残ったの? ふ〜ん、途中であきらめて、さっさと帰ればよかったのに」
- 花音
- 「……」
- みなせ
- 「子役の頃から言ってたでしょ? あんたみたいにクソ真面目なだけで御機嫌取りもできないバカ、目障りだって。ね、ママもそう思うでしょ?」
みなせママは、ひたすら審査員たちに媚を売っている。
- 花音
- 「私はもう、ひとりじゃない。心から信じてくれる人がいる……」
- みなせ
- 「はあ?」
- 花音
- 「愛の力、見せてあげます!」
そうして最終オーディションが始まった!
花音とみなせの直接対決。
媚びを売るような演技のみなせに対し、花音は堂々と自分の世界を表現。
誰の目から見ても、結果は明らかだった。
- 花音
- 「バディさん、やりました! 合格です!」
大喜びで飛びついてくる花音を抱きとめて、頭を撫でてやる。
- みなせ
- 「うえ〜ん、ママ〜」
- 花音の父
- 「花音、よくやったな」
- 花音
- 「お父さん、来てくれたの!?」
- 花音の父
- 「ああ。そちらの方にもお礼を言おうと思ってな。娘のために、ここまで頑張ってくれて……」
- 花音
- 「あのね、お父さん。私、この人と結婚する!」
- 花音の父
- 「お、おい……」
- 花音
- 「前にも言ったじゃない、結婚するつもりで家まで行ったって。私、本気なんだから!」
そして花音は、みんなが見ている前で、頬に堂々とキスをした!
- 花音
- 「私、星華学院に来て良かった……バディさんっていう、心から大切にしてくれる、大好きな人に出会えましたから」
ざわつき、慌てる一同。
うろたえる父親もお構いなしで、
- 花音
- 「バディさんのために、早く大人になって、もっともっとステキになりますね!」
嬉しそうに言ったかと思うと、もう一度、頬にキスをするのだった。
卯月花音 編・おわり
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