米軍への支援 リスクの見極め厳格に
安全保障関連法の本格運用に向けた準備が進んでいる。
日米両政府は、自衛隊の米軍への後方支援を拡充する日米物品役務相互提供協定(ACSA)の改定に署名した。発効には国会の承認が必要なため、政府は開会中の臨時国会に改定の承認案を提出する予定だ。与野党はACSA改定の審議を通じ、後方支援の拡充をめぐる問題点について具体的な議論を深めてほしい。
日米ACSAは、自衛隊と米軍の間で、燃料・食料などの物品や、輸送・宿泊などの役務(サービス)を融通し合う枠組みを定めた協定だ。
日米共同訓練や国連平和維持活動(PKO)を対象に始まり、朝鮮半島有事を想定した「周辺事態」や、日本が直接攻撃を受ける「武力攻撃事態」などにも広がってきた。
今回の改定では、安保関連法を反映し、日米ACSAの対象をさらに拡大する。集団的自衛権が行使できる「存立危機事態」や、日本の平和や安全に重要な影響を与える「重要影響事態」でも、自衛隊による米軍への後方支援ができるようにする。
支援メニューも拡充される。
弾薬の提供は従来、日本が武力攻撃を受ける場合にしか認められていなかった。安保関連法と新ACSAのもとでは、「重要影響事態」や「存立危機事態」でも可能になる。
在外邦人救出、弾道ミサイル警戒などの活動をともにしている場合にも、弾薬が提供できる。
安保関連法を審議した昨年の通常国会では、集団的自衛権だけでなく、後方支援についても議論が不十分なままに終わった。
後方支援について定めた2本の法律のうち重要影響事態法には、とりわけ問題が多い。日本の平和や安全に重要な影響を与えると政府が判断すれば、自衛隊は地理的な制約なしに世界中で後方支援ができる。
活動範囲も「非戦闘地域」から「現に戦闘行為が行われている現場以外」に広がった。燃料などを補給する兵たんを前線近くで行えば、武力行使と一体化する恐れが増す。他国軍から攻撃されるリスクも高まる。
想定されるリスクを具体的に整理し、その対応を議論する必要がある。
国会承認のあり方も問題だ。重要影響事態法では、自衛隊の活動に原則事前承認が必要だが、緊急時は事後承認も認められる。
昨年9月、政府・与党は、野党3党による自衛隊派遣時の「国会の関与強化」の要望を受け入れ、3党から安保関連法への賛成を得た。
その際の合意では「重要影響事態での国会関与の強化」などについて、法成立後に各党で検討して結論を出すことになっている。与野党とも責任をもって対応してもらいたい。