財政審 かかりつけ医以外の受診なら一定額負担を
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財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会が、4日から来年度予算案の編成に向けた本格的な議論に入りました。この中で財務省は高齢化などで増え続ける医療費を抑えるため、かかりつけの医療機関以外を受診した場合に患者が一定額を負担する案などを示しました。
国の財政問題を話し合う財政制度等審議会は、来年度予算案の編成に向けた本格的な議論に入り、初回の4日は高齢化などで膨らみ続ける医療や介護などの「社会保障費」がテーマとなりました。
この中で財務省は来年度、実施を目指す制度の見直し案をさっそく示し、患者が、あちこちの医療機関を受診するのではなく身近な「かかりつけ医」に専ら診てもらうようになれば余分な検査代や薬代などが減り医療費を抑えることにつながると指摘しました。このため財務省は、「かかりつけ医」以外の診療所や病院を受診した場合には患者が毎回、一定額を負担する案を示しました。
また、若い世代より、高齢者の負担を低く抑えている特例についても見直し案を示し、医療費が高額に上る場合、毎月の自己負担額に上限を設ける「高額療養費制度」について70歳以上の人の優遇措置を見直し、一定の所得がある人には若い世代並みの負担を求めました。さらに75歳以上の「後期高齢者医療制度」で保険料の負担を最大で9割軽減する特例をいつまでも続けると公平性が保てないなどと指摘しました。
見直し案は、今後、政府内で調整が進められますが、出席した委員の間では、見直しはやむをえないという意見が多く、会長を務める立正大学の吉川洋教授は会合の後の会見で「財政赤字を抱える中、できる範囲で自己負担の割合を引き上げてもいいのではないか」と述べました。
この中で財務省は来年度、実施を目指す制度の見直し案をさっそく示し、患者が、あちこちの医療機関を受診するのではなく身近な「かかりつけ医」に専ら診てもらうようになれば余分な検査代や薬代などが減り医療費を抑えることにつながると指摘しました。このため財務省は、「かかりつけ医」以外の診療所や病院を受診した場合には患者が毎回、一定額を負担する案を示しました。
また、若い世代より、高齢者の負担を低く抑えている特例についても見直し案を示し、医療費が高額に上る場合、毎月の自己負担額に上限を設ける「高額療養費制度」について70歳以上の人の優遇措置を見直し、一定の所得がある人には若い世代並みの負担を求めました。さらに75歳以上の「後期高齢者医療制度」で保険料の負担を最大で9割軽減する特例をいつまでも続けると公平性が保てないなどと指摘しました。
見直し案は、今後、政府内で調整が進められますが、出席した委員の間では、見直しはやむをえないという意見が多く、会長を務める立正大学の吉川洋教授は会合の後の会見で「財政赤字を抱える中、できる範囲で自己負担の割合を引き上げてもいいのではないか」と述べました。
負担増案 心配の声も
財務省が4日提言した「かかりつけ医」以外を受診した場合に患者が一定額を負担する案。これまでのように診療所や病院に通えなくなるのではないかと、心配する人も少なくありません。
東京・大田区に住む79歳の男性は糖尿病や不整脈のため近くの診療所に10年以上、通院しています。男性は、週に1回、診療所で、血圧などに変化がないか受診しています。この日は、最近薬を変えたため、体調に変化がないかなど医師に確認してもらっていました。男性にとっては、この診療所が「かかりつけ医」に当たります。「先生は不安なことなど何でも言える存在なので、大変ありがたいです」と話しています。
年金で暮らしている男性は、このほか、重い腰痛も抱えているため整形外科に通院しているほか、定期的に歯科医院にも通っています。高齢のため、今後、ほかの病気で、ほかの診療所や病院にも通うことがあるのではないかと思っています。それだけに、財務省が示した案が実現し、患者の負担が増えれば、これまでのように診療所や病院に通えなくなるのではないかと心配しています。
男性は「病院に行くのに、ブレーキがかかるのではないかと思う。3回行っていたとしたら、1回は減らすかなということになりはしないかなと思っている」と話しています。
またこの男性のかかりつけ医は「都市部の専門医に多くかかりたいというご高齢の方には、少し負担が増えることになるのかなと思う」と話しています。
東京・大田区に住む79歳の男性は糖尿病や不整脈のため近くの診療所に10年以上、通院しています。男性は、週に1回、診療所で、血圧などに変化がないか受診しています。この日は、最近薬を変えたため、体調に変化がないかなど医師に確認してもらっていました。男性にとっては、この診療所が「かかりつけ医」に当たります。「先生は不安なことなど何でも言える存在なので、大変ありがたいです」と話しています。
年金で暮らしている男性は、このほか、重い腰痛も抱えているため整形外科に通院しているほか、定期的に歯科医院にも通っています。高齢のため、今後、ほかの病気で、ほかの診療所や病院にも通うことがあるのではないかと思っています。それだけに、財務省が示した案が実現し、患者の負担が増えれば、これまでのように診療所や病院に通えなくなるのではないかと心配しています。
男性は「病院に行くのに、ブレーキがかかるのではないかと思う。3回行っていたとしたら、1回は減らすかなということになりはしないかなと思っている」と話しています。
またこの男性のかかりつけ医は「都市部の専門医に多くかかりたいというご高齢の方には、少し負担が増えることになるのかなと思う」と話しています。
高齢者により多くの負担 やむをえない
財政問題に詳しい慶応大学の土居丈朗教授は「2025年には団塊の世代が75歳以上になって、ますます医療と介護の費用がかかってくるということが、もうすでにわかっている。今のまま同じように医療が受けられるようにするならば、相当重い負担が税金や保険料としてわれわれの肩にのしかかり、今の勤労世代、現役世代がその負担を負うことになる。もっと負担するので、どしどし給付してくださいと、さすがにもう言えなくなってきている」と指摘しました。
そのうえで「現役世代の所得もどんどん増えるわけではなく、若い人たちは自分の老後も考えなければいけない。若い世代の人たちへのしわ寄せを少なくして、高齢者の中でも、たくさん資産を持っている人に、もう少し負担をお願いして、若い人たちの負担を軽くする、そういう取り組みにつなげていかなければいけない」と述べ、高齢者などにより多くの負担を求めるのはやむをえないという考えを示しました。
そのうえで「現役世代の所得もどんどん増えるわけではなく、若い人たちは自分の老後も考えなければいけない。若い世代の人たちへのしわ寄せを少なくして、高齢者の中でも、たくさん資産を持っている人に、もう少し負担をお願いして、若い人たちの負担を軽くする、そういう取り組みにつなげていかなければいけない」と述べ、高齢者などにより多くの負担を求めるのはやむをえないという考えを示しました。
医療・介護制度見直し案の内容
4日財務省が示した医療・介護制度の見直し案には16の検討項目が盛り込まれ、多くが患者の負担増につながる内容です。
【医療分野】
まず「かかりつけ医」以外の医療機関を受診した場合、患者の負担を増す新たな制度の導入です。患者があちこちの医療機関を受診するのではなく、身近な「かかりつけ医」に専ら診てもらうことで、余分な検査代や薬代を減らし医療費を抑える狙いです。
かかりつけ医以外の診療所を受診した場合に一定額、病院を受診した場合には規模に応じて、患者により多くの負担を求める考えです。どのような医療機関をかかりつけ医とするかは、これから詳しく検討しますが、財務省としては、かかりつけ医は患者の健康状態などをよく知っている近くの診療所など原則1か所に限定したい考えです。ただ、当面は耳鼻科や眼科などの特定の診療科については必要に応じて「かかりつけ医」に加える方針です。
また、医療費が高額に上る場合、毎月の自己負担額に上限を設ける「高額療養費制度」について70歳以上の人の優遇措置を見直し、一定の所得がある人には若い世代並みの負担を求めています。
さらに75歳以上の「後期高齢者医療制度」で保険料の負担を最大で9割軽減する特例をいつまでも続けると公平性が保てないと、特例の廃止を指摘しています。
このほか65歳以上の人が療養のため長期にわたって入院する場合に、比較的軽度の病気の人に限って、光熱費や水道代として、一般的に1日当たり320円の自己負担を求めてきました。
財務省は、公平性の面からほかの入院患者にも原則、同じような負担を求めるべきだと提案しています。
【介護分野】
介護サービスでも、追加の負担を求めています。介護の必要性が比較的低い人が掃除や調理などの生活援助サービスを利用する際の負担の引き上げが盛り込まれています。
財務省によりますと、民間の家事代行サービスの料金は安いところでも1時間900円程度かかるのに対して、介護保険では45分までのサービスが自己負担187円で利用でき、著しく割安になっていると指摘しています。自己負担を大幅に引き上げ、その分、介護の必要性が高い高齢者に重点的に給付するべきではないかとしています。
また、車いすや介護ベッドなどの福祉用具を借りる場合、その費用の大部分も、介護保険から支払われていますが、介護の必要性が比較的低い利用者の自己負担を増やすことも盛りこんでいます。
【薬の価格】
薬の価格についても対応を求めています。1つは高額な肺がんなどの治療薬、「オプジーボ」の価格引き下げです。患者1人当たりの費用が年間およそ3500万円かかると言われる「オプジーボ」。当初、想定されていた30倍以上の患者に使われ、今年度の薬の売り上げは1260億円以上に達する見込みで、医療費増加の大きな要因になっています。このため臨時の措置として価格の引き下げを実施するよう求めています。
一方、湿布や、うがい薬、目薬、胃薬など病院などで医師から処方される薬の中には街の薬局やコンビニエンスストアで販売されている市販薬と似た成分の薬もあります。こうした薬は医療保険の対象から外すか、患者の自己負担を増やすべきではないかという提案も盛りこんでいます。
【医療分野】
まず「かかりつけ医」以外の医療機関を受診した場合、患者の負担を増す新たな制度の導入です。患者があちこちの医療機関を受診するのではなく、身近な「かかりつけ医」に専ら診てもらうことで、余分な検査代や薬代を減らし医療費を抑える狙いです。
かかりつけ医以外の診療所を受診した場合に一定額、病院を受診した場合には規模に応じて、患者により多くの負担を求める考えです。どのような医療機関をかかりつけ医とするかは、これから詳しく検討しますが、財務省としては、かかりつけ医は患者の健康状態などをよく知っている近くの診療所など原則1か所に限定したい考えです。ただ、当面は耳鼻科や眼科などの特定の診療科については必要に応じて「かかりつけ医」に加える方針です。
また、医療費が高額に上る場合、毎月の自己負担額に上限を設ける「高額療養費制度」について70歳以上の人の優遇措置を見直し、一定の所得がある人には若い世代並みの負担を求めています。
さらに75歳以上の「後期高齢者医療制度」で保険料の負担を最大で9割軽減する特例をいつまでも続けると公平性が保てないと、特例の廃止を指摘しています。
このほか65歳以上の人が療養のため長期にわたって入院する場合に、比較的軽度の病気の人に限って、光熱費や水道代として、一般的に1日当たり320円の自己負担を求めてきました。
財務省は、公平性の面からほかの入院患者にも原則、同じような負担を求めるべきだと提案しています。
【介護分野】
介護サービスでも、追加の負担を求めています。介護の必要性が比較的低い人が掃除や調理などの生活援助サービスを利用する際の負担の引き上げが盛り込まれています。
財務省によりますと、民間の家事代行サービスの料金は安いところでも1時間900円程度かかるのに対して、介護保険では45分までのサービスが自己負担187円で利用でき、著しく割安になっていると指摘しています。自己負担を大幅に引き上げ、その分、介護の必要性が高い高齢者に重点的に給付するべきではないかとしています。
また、車いすや介護ベッドなどの福祉用具を借りる場合、その費用の大部分も、介護保険から支払われていますが、介護の必要性が比較的低い利用者の自己負担を増やすことも盛りこんでいます。
【薬の価格】
薬の価格についても対応を求めています。1つは高額な肺がんなどの治療薬、「オプジーボ」の価格引き下げです。患者1人当たりの費用が年間およそ3500万円かかると言われる「オプジーボ」。当初、想定されていた30倍以上の患者に使われ、今年度の薬の売り上げは1260億円以上に達する見込みで、医療費増加の大きな要因になっています。このため臨時の措置として価格の引き下げを実施するよう求めています。
一方、湿布や、うがい薬、目薬、胃薬など病院などで医師から処方される薬の中には街の薬局やコンビニエンスストアで販売されている市販薬と似た成分の薬もあります。こうした薬は医療保険の対象から外すか、患者の自己負担を増やすべきではないかという提案も盛りこんでいます。