「オートファジー」 日本でも病気治療への応用研究進む

「オートファジー」 日本でも病気治療への応用研究進む
ノーベル医学・生理学賞の受賞が決まった大隅良典さんが研究する「オートファジー」は、ヒトのさまざまな病気に関係していることが明らかになってきています。かつて大隅さんのもとで研究を行い、現在は大阪大学大学院教授の吉森保さんは、「日本はこの分野で世界をリードしているので今後、医療への応用につなげていけるよう、さらに研究を進めたい」と話しています。
大阪大学大学院の吉森保教授(58)は、平成8年にドイツ留学から帰国した際、大隅さんからの誘いを受けて愛知県の基礎生物学研究所で助教授として6年間、一緒にオートファジーの研究を行い、数々の成果をあげてきました。
その後、吉森さんは大阪大学に移って研究を続け、去年、学内に新たな研究スペース「オートファジーセンター」を立ち上げました。ここでは臨床の医師と基礎の研究者がお互いのノウハウや知識を共有しながら病気のメカニズムの解明や新たな治療法の開発に取り組んでいます。
そうした病気の1つが肝臓に脂肪がたまる「脂肪肝」です。吉森さんたちは、通常のマウスと、オートファジーを人工的に強く働かせたマウスに脂肪を大量に含んだエサを与え、肝臓の状態を調べました。その結果、通常のマウスは肝臓が大きく膨らみ細胞の間に脂肪がたまって脂肪肝になりましたが、オートファジーを強く働かせたマウスでは同じエサを与えても、肝臓は正常な大きさで、脂肪もたまりませんでした。吉森さんたちは、脂肪の多い食事をとりすぎると、オートファジーの働きを抑えるたんぱく質が増え、余分な脂肪が分解されなくなることが脂肪肝の原因ではないかと考えています。今後、オートファジーの働きを調節することができるようになれば、脂肪肝をはじめ多くの病気の治療につながると期待しています。
吉森さんは「大隅先生のノーベル賞受賞で世界中で研究が進んでいくと思います。日本はこの分野で世界をリードしているので、基礎だけにとどまるのではなく、病気のメカニズムの解明や治療など医療への応用につなげていけるよう、さらに身を引き締めて研究を続けていきたいです」と話していました。