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『シン・ゴジラ』でも揶揄された「官僚主義」について、現役官僚に聞いてみた
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今回は、現役の若手官僚に直接取材を敢行。「お役人」と批判される彼らはいかなる日常を送っているのか。前後編を通してそのリアルに迫りました。
前編では『シンゴジラ』でも、有事を前に会議ばかりを続けるシーンで揶揄された、国の「官僚主義」について率直な意見を伺いました。
話し手:西沢さん(仮名)28歳、役職:係長
議員は利権ばかりを追い求めている?
—日本の「官僚主義」は何かと批判されがちです。会議ばかりでまるで話が前に進まない、利権でがんじがらめの派閥、それに前例主義。これらは民間でも大企業病のひとつとして問題視されています。
もちろん、それが望ましくないと言われているのは我々も知っています。しかし、そこには誤解があります。
まず、利権の話が出ましたが、国会議員はそもそも、「自分は日本をこうしていきたい」と表明して、それを支持する人達から選ばれている。そうやって、後押ししている人がいるという仕組みである以上、その人たちの声を守らなくてはなりません。
何も、「自分たちのところに金が回るようにしろ」と言っているわけではない。例えばある法律ができると困ってしまう人たちがいる。それはたった1%の人間かもしれない。ただ、そうした人たちの声を拾ってあげるのも国会議員の役割なのです。
会議ばかりでスピードが遅いのは、プロセスが明確化されているため
—利権でがんじがらめ、というよりも、各々が自身の責務を果たしているがためにそう見えてしまうということですね。
では、官僚主義の特徴、会議ばかりでまるで話が進まないという批判についてはどうでしょう。
会議が多い理由は「調整」が多く必要なためです。異なるふたつの立場——例えば、労働者と経営者——が関わる法案を作る場合は、双方の了解も取り付けなくてはならない。ときにマスコミには、労働者の立場に立っていないと叩かれることもありますが、労働者だけが国民ではありません。経営者だって国民なのです。どちらの立場も勘案しなければなりません。
そのためには、関係する人間がコンセンサスを得るための調整が必要で、その調整をするのは会議の場です。会議がいいのは、オープンなところ。会議をやっていると「ちゃんと検討している」「ちゃんと調整している」というのがわかります。そうすることでプロセスが明確化されるというメリットもあります。こういう議論をして、こういう落とし所になったという、説明ができるようになるのです。
ただし、確かによく指摘されるように、“遅い”ことは確かです。日本人の性格として、決断に対して慎重になる人間が多いのですが、その人たちを説得して物事を進めるから、遅くなる。逆に言えば、意思決定のプロセスが遅いと言われるのは、関係者もしっかり説得して議論を進めている証左と言えるでしょう。
例えば、「偉い先生からやれって言われたからやりました」というのは通じません。民間の学者も呼んで、客観的な意見を聞いた上で決める必要があります。日本の政治の進め方のいいところは、こうしていろいろな人の意見を聞いた上で物事を進めることです。
もちろん、「遅い」と言われていることは知っているから、改善する努力はしています。我々にとっては、国民の意見が何よりも大事なので。「遅い」と言われてからは遅いのかもしれませんが……。
過去の正当性を認めているからこその“前例主義”
—意思決定が遅い背景には、そのように慎重にプロセスを踏んでいることがあったのですね。
しかし、それは置いておいても、とかく官僚のやることは前例主義だと批判されがちです。
先ほど説明したように、意思決定は長いプロセスを経て決められます。そのように、長い期間をプロセスを踏んで決められたものを、いきなり変えるというのは難しい。そのときどきで、“正しい”という前提のもとで進んできたものを大きく変えるのは、その長いプロセス自体を否定することになるからです。
したがって、いきなり判断を変えるためには、まずその決断が正しいのかという検証をしなくてはなりません。それまで徹底して議論されて決められたことが、一人の思いつきによって一気に変わるということはありません。もちろん大きく情勢が変わったら別ですが。
“前例主義”というのは、頑なに前例にこだわっているというわけではなく、“前例”となるケースで徹底的に議論した結果を踏まえているということです。実際、「なぜこの政策をやっているんだろう」と疑問に思って情報を集めてみると、納得することばかりです。中小企業のワンマン社長のように、鶴の一声で決まるというわけにはいかないのです。
—先の東日本大震災のような、有事の際も前例主義なのでしょうか。
違います。過去、どのように対応したかを調べはしますが、そもそも有事とはこれまでの検討内容やプロセスが破綻した状態を指します。そのため、前例に固執することはありません。例えば東日本大震災は必ずしも阪神淡路大震災と同じ対応ばかりをおこなったわけではないでしょう。
阪神淡路大震災は住宅地で若い人が多い。東日本大震災は農村で、高齢者が多い。状況としてはまるで違う。支援物資に何を送るかという問題ひとつにしても、阪神淡路でのやり方をそのまま踏襲するわけにはいかない。有事の場合は前例は見るけれど、それよりも、今そのときに何をするべきか考えることを優先します。
官僚の業務のひとつは“調整”。お役所言葉の裏にあるもの
—そんな中で、西沢さんの役割とは何なのでしょうか。
私の今の立ち位置は全体の取りまとめなので、主に色々な情報をとって把握することが仕事です。自分から情報にアクセスして、「これ実際のところどうなの?」というような本音ベースの話を各部署とする。各分野の担当者がどういう風に物事を考えていて、どういうオチをつけようとしているかというのを把握します。相手が大事にしている立場というものを理解して、最悪のケースになりそうな場合は妥協案を探るのです。
お役所言葉というものがありますよね?あれは外部の方にはややこしく見えるかもしれない。はっきり言えと。しかし、役人はその言葉で物事を正確に理解できます。
例えば「前向きに検討する」という言葉。あれは言葉だけで、やる気がないことに使われていると思われがちですが、実際には検討し、調整しているのです。もし、前向きにも検討していない場合は、「対応は困難である」という言い方をします。
—なるほど。では、官僚主義の中にあるからこそ、調整役としての仕事が重要になってくるというわけですね。では、ここからは、意外に知られていない官僚のリアルな働き方をお伺いしていきます。



