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オープニングナレーション
苦戦するリップシュタット連合軍は、
ガイエスブルク要塞での籠城戦に備え、
未だその支配下にある植民星からの搾取を強めた。
だが民衆側も今回の内戦によって、
貴族支配のたががゆるんで来たことを敏感に感じ取っていた。
ここブラウンシュヴァイク公の領地のひとつである、
ヴェスターラントでも反抗の機運が高まっていた。
ここを統治する公爵の甥・シャイド男爵は更なる弾圧を加えたが、
それは大規模な暴動を招き、男爵は民衆に殺された。
その報せはブラウンシュヴァイク公を激怒させた。
第23話のあらすじ
ラインハルト率いる元帥府軍との戦いで、
劣勢に追い込まれたブラウンシュヴァイクは、
支配している星々で苛政を行った。
だが、それに反発する民衆たちがいた。
惑星ヴェスターラントはブラウンシュヴァイクの甥が管理していたのだが、
暴動によって殺害されてしまうのだった。
これを知ったブラウンシュヴァイクは、
怒りを爆発させ、ヴェスターラントに核攻撃を行うと宣言する。
アンスバッハはかつて人類が滅亡の淵に瀕した、
「13日戦争」の例をあげて諫言するが、まったく聞き入れてはもらえなかった。
それどころか、
「ゴールデンバウム王朝もこれで終わった」とつぶやいたため、
叛心ありと思われて牢に監禁されてしまう。
一方、オーベルシュタインから、
離間の計などについての報告を受けたラインハルトは、
ヴェスターラントへの核攻撃をやめさせたいと考えた。
しかし、オーベルシュタインは逆にそれを利用して、
民衆の貴族連合軍への反感を高めたほうが良いと答えた。
何の罪もないヴェスターラントの人々を犠牲にすることは、
ラインハルトにはどうしてもできないことだったが、
オーベルシュタインは覇業を成すためには必要なことだと断言する。
その結果、200万人もの人々が焼き殺された。
ラインハルトはギリギリまで決断を迷い、
核攻撃を阻止するための艦隊を派遣しようとしていたのだが、
オーベルシュタインとフェルナーの策により、それが叶うことはなかった。
そんななか。
キフォイザー会戦で勝利を収めたキルヒアイスのもとに、
シュタインメッツがやってきて、ラインハルトに良くない噂があるという。
それはリップシュタット連合軍によるヴェスターラントの核攻撃を、
政治利用して民衆からの支持率を高めているというものだった。
キルヒアイスは信じられないという思いでいたが、
緘口令を布いて軍を混乱させないことにした。
離間策とヴェスターラントへの非人道的な攻撃で、
リップシュタット連合軍では造反者が続出していた。
ガイエスブルク要塞の陥落も時間の問題となり、
破れかぶれになったブラウンシュヴァイクらは酒を飲んで、
現実逃避にふけるばかりだった。
そんな体たらくを見たある貴族は、
ブラウンシュヴァイクを暗殺して、その首をラインハルトに届けたらどうかと言った。
だが、降伏することを断固として望まないメルカッツやフレーゲルは、
最後の決戦に打って出るものの、ラインハルト旗下の艦隊に惨敗してしまう。
とうとう盟主のブラウンシュヴァイクにも最後の刻が来た。
彼は娘のクリスティーナをラインハルトに娶わせ、
これからも大貴族として生き残りたいと喚くが、
アンスバッハは毒酒を手に、
「ローエングラム侯は貴族社会を望んでいない」と言い放つ。
主を失ったメルカッツはシュナイダーの進言で、
こうしてリップシュタット戦役は終わりを告げたのだが-。
第23話の台詞
ブラウンシュヴァイク「賤民どもが!よくもわが甥を殺してくれたな!
わが領土に生きる恩を忘れおって!
恩知らずな賤民どもの上に正義の鉄柱を下してやる!
ヴェスターラントに核攻撃を加える!ひとりも生かしておくな!」
貴族軍兵士「そんな・・・!」
アンスバッハ「閣下、お怒りはごもっともながら、熱核兵器を惑星上で使用するのは、
かつて人類が絶滅に瀕した13日戦争以来のタブーのはず。
まして、ヴェスターラントは閣下のご領地ではありませんか。
全住民を殺すというのはあまりにご無体、首謀者を処罰すればよろしいかと-」
ブラウンシュヴァイク「黙れ!ヴェスターラントはわしの領地だ。
よってわしには、あの惑星を自由にする権利があるのだ!」
アンスバッハ「(モノローグ)ゴールデンバウム王朝もこれで終わった・・・
自らの手足を切り取ってどうして立っていることができるだろう」
ブランシュヴァイク「なに?!アンスバッハがそのようなことを申したと?」
貴族軍兵士「はっ!ゴールデンバウム王朝は終わりだと・・・」
フレーゲル「そのような不吉な言辞を弄するとは・・・
いかに叔父上の重臣とはいえ、 それだけでも死に値しますぞ!」
ブランシュヴァイク「アンスバッハともあろう者が・・・
ええい!アンスバッハを捕らえよ !あとでわしが取り調べるまで監禁しておけ!」
貴族軍兵士「ときにメルカッツ提督が面会を求めておいでですが」
ブラウンシュヴァイク「メルカッツが?」
貴族軍兵士「ヴェスターラントの件でお話があるとか」
ブラウンシュヴァイク「会わん!・・・わしは、臥せっておる」
オーベルシュタイン「ガイエスブルクに潜入させた部下からの報告です」
ラインハルト「そうか。やはりメルカッツは疎まれはじめたか」
オーベルシュタイン「はい。ブラウンシュヴァイクの知恵袋と言われる、
アンスバッハ准将も切り離しました」
ラインハルト「うむ。それは良いとして、
ヴェスターラントの件は捨て置くわけにも行かぬ。
早急に艦隊を派遣して攻撃を阻止させねば・・・」
オーベルシュタイン「お待ちください、閣下。いっそ血迷ったブラウンシュヴァイクに、
この残虐な攻撃を実行させるべきです」
ラインハルト「何?!」
オーベルシュタイン「そして、その有様を撮影し、大貴族の非人道性の証とすれば、
彼らの支配下にある民衆や平民出身の 兵士たちが離反すること疑いありません。
阻止するより、そのほうが効果があります 」
ラインハルト「ヴェスターラントを見殺しにせよと卿は言うのか?!」
オーベルシュタイン「もし、この内戦が貴族側の勝利に終われば、
同様の残虐行為はこの先何度でも起こります。
それを帝国全土に知らしめ、彼らに宇宙を統治する権利はないことを示すのです」
ラインハルト「しかしすでに勝敗の帰趨は誰の目にも明らかではないか」
オーベルシュタイン「ですが、われわれも ガイエスブルク攻略の決め手を欠きます。
敵が籠城して徹底抗戦するつもりであれば、補給ラインが長い分、われわれが不利になります」
ラインハルト「わかっている。だからこそ、
内部分裂させるための工作をしているのではないか」
オーベルシュタイン「その決め手となり得る材料を、
向こうが提供しようとしているのです」
ラインハルト「だが・・・ヴェスターラントには200万もの民衆がいるのだ。
中には女子供もおろう。それを・・・」
オーベルシュタイン「閣下。ご冷静にお考えください。
いかに200万もの人命とはいえ、この内戦が長引けば、
これよりはるかに多くの死者が出るでしょう。それをお考えください」
ラインハルト「人の命とは、そんな単純な数字で論じるべきものではない!」
オーベルシュタイン「閣下、閣下は支配者となられるのです。
支配者は時としてより多くの幸福のため、
一部の犠牲の容認を迫られる時があります」
ラインハルト「それは初歩的なマキャベリズムの論法だな」
オーベルシュタイン「初歩なればこそ、原則であり真理です。
閣下、今こそそのご決断を。全帝国250億の民のためです!閣下!」
ラインハルト「ヴェスターラントへの攻撃はいつ始まるのだ?」
オーベルシュタイン「・・・6時間後とのことです」
ラインハルト「艦隊を派遣して待機させろ」
オーベルシュタイン「閣下!」
ラインハルト「誤解するな。決定はギリギリまで待つ。呼ぶまで下がっておれ」
ラインハルト「(モノローグ)キルヒアイス、 お前がいたら絶対に許すまいな・・・
これが俺たちが選んだ道か・・・」
オーベルシュタイン「惑星ヴェスターラントに強行偵察艦を急行させろ。内密にな」
フェルナー「はっ」
オーベルシュタイン「4時間以内に到着させるのだ。いいな」
フェルナー「4時間ですな」
ヴェスターラントの老人「貴族を追い出したはいいが、
これからどうするかが問題だで」
ヴェスターラントの女性「ローエングラム侯は平民の味方だというじゃないの。
あの方に守っていただきましょうよ」
ヴェスターラントの民衆「そうだ、そうだ!」
ヴェスターラントの子供「お母さん、あれなあに?」
ヴェスターラントの男性「おい、あれは-?!」
(核ミサイルが惑星に落ちてヴェスターラントは焦土と化した)
ラインハルト「・・・これは!どういうことだ?」
オーベルシュタイン「敵の攻撃が早まったようです。
残念ながら派遣した艦隊は間に合いませんでした」
ラインハルト「何・・・?では、この映像はなんだ!」
オーベルシュタイン「念のために潜行させておきました強行偵察艦からのものです」
ラインハルト「オーベルシュタイン・・・!」
オーベルシュタイン「この映像を帝国全土に流すのです。
貴族どもとわれわれとどちらに正義があるか、子供でも理解するでしょう。
貴族どもは自分で自分の首を絞めたのです。どうなされました?元帥閣下」
ラインハルト「・・・確かに私は明確に阻止命令を出さなかった。しかし-」
オーベルシュタイン「閣下は阻止すべく艦隊を遣わされた。
しかし、敵の攻撃が早く間に合わなかった。そういうことです」
ラインハルト「貴様・・・わざと!?」
オーベルシュタイン「いまさら済んでしまったことを、
とやかく言っても仕方ありますまい。
起こってしまったことは最大に利用すべきです。
200万の犠牲を無駄にせぬためにも」
ラインハルト「手を汚すことなく覇業は成せぬということか。
わかった。卿の言う通りにしよう」
妙香の感想
ラインハルトとキルヒアイスの運命を大きく変えた、
ヴェスターラントの事件が描かれました。
いくら実の甥が殺害されたとはいえ、
核攻撃で民衆に報復するブラウンシュヴァイクは最低ですね。
また、それを政治利用してしまうオーベルシュタインも恐ろしいです。
架空の歴史にも「もし」はありえないんですが、
ブラウンシュヴァイクがアンスバッハの意見を聞いて、
暴動の首謀者を咎めるだけだったら、悲劇は起こらなかったでしょう。
また、ラインハルトが、
オーベルシュタインの策を退けていたら・・・とも思います。
でも、彼は銀河を平定したいという征服欲があり、
そのためには非情な手段もいたしかたないと考えたんですよ。
それに内戦が長引いてしまったら、
勝ったとしても、戦後処理がたいへんなことになります。
オーベルシュタインの策は歓迎できませんが、
戦乱を早く終わらせるという点では効果のあるものだったんですよね。
ただ、彼は自分が憎んでいるゴールデンバウム王朝を倒すために、
覇者としての力を持つラインハルトに協力しているのであって、
同じ志とか情という視点では動いていないような気がします。
その点がキルヒアイスとはまったく違うところなんですよね。
今回は事実上のゴールデンバウム王朝の滅亡が描かれたので、
OP曲のない演出がなされました。
銀河英雄伝説のアニメは節目となる戦いや事件の時には、
OPやEDが普段とは違う感じになります。
あと、劇中でブラウンシュヴァイクが、
「宿敵を倒した王がその頭蓋骨の盃で酒を飲んだ」と言ってましたが、
これはおそらく織田信長のことでしょう。
日本の史実では本能寺に倒れた信長ですが、
銀河の歴史の中では王と言われているんですね。
ラインハルトのモデルははっきりとわかりませんが、
もしかしたら信長あたりがモチーフになっているのかも知れません。
次回は自由惑星同盟のクーデターの決着が描かれます。
こちらも重めな話なので、視聴するときは覚悟してください。