安藤俊介のアンガーマネジメント

おなかがすいたときにイライラするのは当たり前?

  • 文 安藤俊介
  • 2016年10月3日

写真:     

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 おなかがすいた時にイライラすることがある。私たちはこのことをなんとなくの経験則で知っています。読者にも心当たりがあるのではないでしょうか。実際のところ人は空腹時に怒りっぽくなるものなのでしょうか。実はこれは科学的視点からも本当であることがわかっています。

 神経科学のマーク・ミルステイン博士が次のような実験を行いました。複数の夫婦に朝晩で血糖値を測ってもらいます。血糖値を測るのは空腹状態を調べるためです。人は空腹時には血糖値が下がるからです。そして夫婦にはブードゥー人形(可愛らしい呪いの人形)とピン(釘)を渡し、1日の終わりに相手に対して不満や怒りがあれば、そのブードゥー人形に好きな数だけピンを刺してもらいます。

 その結果どうなったか。夫婦間の出来事に関係なく、空腹の時の方がブードゥー人形に刺すピンの数が多かったというのです。つまり空腹時の方が相手に対して不満や怒りを感じやすかったということです。それくらい空腹と怒りの感情は関係しています。

 なぜ空腹時にイライラしやすくなるかというと、人は血糖値が下がると活動できなくなってしまうので、血糖値が下がると身体が危険な状態にあると脳が察知します。特に脳はブドウ糖が唯一のエネルギー源なので、低血糖になることは脳にとって深刻な問題です。

 脳は低血糖状態になると、血糖値を上げようと命令を出します。その命令とはつまりホルモンを分泌することです。空腹時に放出されるホルモンの一つがアドレナリンです。アドレナリンは闘争ホルモンとも呼ばれ、身体を臨戦態勢にします。身体が臨戦態勢になるということは、怒っているという状態と一緒になるということです。これが空腹時にイライラする仕組みです。

 イライラを防ぎたいなら、空腹になる前に糖分をとるようにしましょう。ただ、だからといって甘いものを食べ過ぎないようにしてください。甘いものを急にたくさんとると血糖値が急激に上昇し、今度はインスリンが放出され血糖値を下げようとするといった具合に身体の中でホルモンが行ったり来たりして気持ちも不安定になってしまいます。血糖値の上昇がゆるやかな低GI食品をとるとよいでしょう。

 余談ですが海外旅行で飛行機に乗る時、どんな時間のフライトであってもすぐに食事がでてくると思います。これは乗客をおなかいっぱいにさせてイライラさせないための工夫と聞いたことがあります。本当の理由はわかりませんが、脳科学的には理にかなっているということになりますね。

PROFILE

安藤俊介

安藤俊介(あんどう・しゅんすけ)

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。怒りの感情のプロフェッショナルとして、教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナーなどを行い、社会にある怒りの課題解決に取り組む。著書に「怒りに負ける人、怒りを生かす人」(朝日新聞出版)、「『怒り』のマネジメント術」(同)、「アンガーマネジメント入門」(同)など。日本アンガーマネジメント協会公式HP:https://www.angermanagement.co.jp

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