古賀茂明氏の「官房長官が圧力をかけた」という発言をめぐって、今度は自民党がテレビ朝日の幹部を呼び出し、本当に圧力をかける騒ぎに発展した。当の官房長官が否定して、テレ朝の会長が謝罪したのに自民党がからむのは、与党の存在意義は野党もマスコミもバカだということにしかないことを彼ら自身が知っているからだ。
自民党がすばらしい党だと思って支持している人は少ないだろうが、どうみても野党よりはましだ。これは「55年体制」ではなく、その起源は終戦直後の占領体制にあった。第2次大戦が終わったとき、米ソは連合国として協調し、「これで世界大戦は終わった」と考えた。憲法第9条は「押しつけ」ではなく、当時の米ソと日本の総意だったのだ。

ところが1948年ごろから冷戦が始まり、1950年に朝鮮戦争が起こって情勢は一変した。このとき吉田茂はアメリカの核の傘に入ることを選んだが、左翼は「全面講和」による中立を求め、日米同盟に反対した。それは当時としては意味のある論争だったが、その後の60年の歴史は、こうした「平和勢力」の見通しがまったく誤りだったことを証明した。

しかしアカデミズムやマスコミには、まだその幻想を捨てられない幹部がいる。彼らの間違いは「憲法の平和主義を守る」という50年前のアジェンダ設定をいまだに守り続けていることだ。それに代わるアジェンダは何か、という点については、私なりの意見を本書に書いたので、お読みいただきたい。