もはや失敗した政策 アベノミクスを「加速させる」空疎さ
結局、アベノミクスが失敗したからこそ、消費税の引き上げは再延期を余儀なくされ、財政再建の道が遠のいた。それなのに、事業規模28兆円超の経済対策は低所得者への給付金などバラマキ策のオンパレード。財政規律など二の次、三の次だ。
「1億総活躍の『未来』を見据え、子育て支援、介護の拡充を進めます」という意気込みだけは買う。ただし、人手不足が慢性化する業界では、時給雇用の人々が次々と外国人に取って代わられるような状況下で、「1億総活躍」とは何を意味する言葉なのか。さっぱり分からなくなる。
もはや加速させようのないアベノミクスを「加速させる」とぶち上げた安倍首相の演説内容は実に空疎だ。
それでも安倍政権は高支持率を維持し、特に10代、20代の男性に限ると、支持率は7割を超えるそうだ。若い彼らは雇用そのものや、同一労働同一賃金を求めている。それを「実現させる」と宣言する政権に支持が集まるのはムリもないが、実現に向けたプロセスは全く見えてこない。中高年層はそのことに不安と不信を募らせている。成果は乏しくとも、弱者受けする政策を掲げ続ければ、支持率は高まる。単なる人気取り策に走っているようにしか見えないのだ。
それにしても、所信表明演説中の自民党議員によるスタンディングオベーションにはア然だ。異様な総立ち拍手は、安倍首相の自衛隊員賛美の時に沸き起こった。今の政権や与党にとって優先すべきは経済より安保・防衛なのだろう。軍国主義化への入り口が開いた瞬間を垣間見た思いがする。