今回は新車で買った車を普通に1年ほど乗った後、売る時には買った金額以上で買取ってもらえた。という裏話です。
車に限らず、欲張って金儲けをしようとするとリスクはありますが、覚えておいて損はないお話だと思いますので、ぜひ知っておいて下さい。
需要と供給のバランス
まず、現在の世の中では需要と供給の関係で物やサービスの価格が決定されます。欲しい人が多く、用意される物やサービスが少ない場合、どうしても欲しいという人はたくさんお金を出して手に入れようとします。
例えば、限定発売された商品や供給量が少ない人気商品などがインターネットオークションなどで購入金額の数倍にもなって取引されている様な状況です。(最近では新型のiPhoneやポケモンGO Plusなど)
このように需要と供給のバランスが大きく需要に傾いた時、価格は急上昇するのです。
ただ、ネットオークションなどで高値取引されているものはたいてい、新品、未使用、未開封なんてものだと思います。普通は使用すると中古品として物の価値は落ちて価格は下がります。また、その数が多いと買い叩かれ、安い値段を付けます。
中古品で高値取引されているのはアンティークの時計や宝飾品、おもちゃ、歴史的資料になりうるような、通常手に入らない物です。
1年乗った中古車の値段が上がるなんてことがあるのでしょうか?
ビンテージカーは価格急騰中
もちろん車もネットオークションで取引がされていますし、中古車業者間でも各地でオークションが行われ、取引されています。当然、新車より中古車のほうが安い値段で手に入れることが可能です。
車にも中古品の例外はあって、最近はビンテージカーがひそかなブームです。S30型フェアレディZ、ハコスカGT-R、トヨタ2000GTこういった数十年前の国産名車やポルシェやフェラーリのビンテージカーは高値で取引され、状態が良いものであれば発売当初の新車価格を上回ります。
なぜなら通常、車を使用するとエンジン内を含めて部品が消耗しますし、ぶつけたり、事故にあって壊してしまうことだってあります。また、動かさないで保管するにも鉄部品が多い車は錆びやすく、車を数十年という歳月の間、雨風を防ぎ、エンジンなど機械部分を動かせるようにコンディションを維持しておくには、広いガレージとこまめな手入れが必要です。
もちろんディーラーに行っても新車を購入することはできません。
このため、購入してすぐに走ることのできるビンテージーカーは数少く、希少性の高いものなので、元々非常に高価でしたが、ブームとなれば欲しい人が増えるので需要と供給のバランスが崩れ、さらなる高値をつけるのです。
たった1年で価値が上がった車種
ここまでのお話はあなたもご存知でしょうし、理解できると思います。でも普通、車を新車で購入して、仮に1年で飽きたからといって中古車として売却すれば価格は下がってしまいますよね?
購入側からすれば使用され、消耗された中古車よりも新車のほうが気持ちがいいし、色やオプションを自分で選択できる分価値が高いから当然でしょう。何より新車が手に入るわけですから。
ですが、車種によっては新車が手に入らず中古車となっても価格が上がってしまう場合があるのです。
例えば少数しか製造されない限定車です。
限定100台のトヨタ 86GRMNや限定400台のインプレッサ S207といったスポーツカーでメーカー直系チューニングメーカーが改造やチューニングを施したものやアバルト(フィアット)が発売するフェラーリとコラボレーションした695 TRIBUTO FERRARIなどがそうです。
こういった車は元々希少価値が高く、売却価格が購入価格を上回ってしまうかもしれませんが、これでは裏話っぽくないですよね?
では、皆さんが知らない裏側で、ここ最近中古車買取価格が急騰して話題になった車種は?というと
ヴェルファイアとアルファードです。
ヴェルファイア・アルファードはベストセラーなので、日本中でよく見かける車種だと思います。新車の販売数も多く、非常に人気があるとはいえ中古車になると新車価格よりは下がって当然と考えるのが普通だと思います。
なにせ、中古車よりも少しお金を出せば新車の購入が可能なのですから。
中古ヴェルファイア・アルファードの価格が高騰した理由
ヴェルファイア・アルファードの中古車買取価格が新車を上回る仕組みを知るには国際事情を知る必要があります。
そうです、実は売却されたヴェルファイア・アルファードは最終的に日本で流通するわけではなく、海外で販売されているということです。
中国市場
まず、以前私のブログでもご紹介した通り、中国での日本車は現地合弁会社で作られたいわば中国の国産車なのです。この仕組を成り立たせるために中国政府は非常に高額の関税をかけて市場と国内企業を守っています。
しかし、アルファード、ヴェルファイアは日本で製造され、輸出されています。当然これは輸入車ですから関税がかけられます。日本で新車価格約400万円~700万円なのが中国では約1000万円~1500万円と倍以上の値段を付けて販売されています。
高級車として内装もよく、広くて豪華なので富裕層の間では非常に人気があり、値段が高くても需要があるのです。
昨年フルモデルチェンジされ、その人気はさらに上昇しています。
ただし、いくらお金持ちとは言っても使えるお金は限られています。少しでも購入金額を安く抑えられれば、それに越したことはありません。
そこで登場するのが中古車です。実は中古車であれば中国への輸入関税を大幅に抑える方法があるのです。少々使用感があっても数百万円値段が安ければ、中古車を選ぶのです。
需要の高い車を輸入関税を抑えた分、販売業者は現地の新車価格より大幅に安く販売出来るので日本で新車を超える価格で買取ってきたとしても、それ以上の値段で売却することが可能なのです。しかも、販売業者は現地でまず注文をとってきてから日本で車を探せば、在庫リスクがありません。
しかし、キャンセルされてしまったら儲けもありませんし、信用も下げてしまう結果となります。短期間で車を探し、取引を完結させることが重要なのです。色やグレード、走行距離など中古車に同じ車は一つとして無いので、条件の合う車が見つかれば、新車を超える高い査定額を提示してでも買い取りたいのです。
輸出規制
じゃあ中古車買取なんて回りくどいことをせずに、自分でトヨタに発注して輸出すれば良いじゃないか?と思いませんか?
実はそれが出来ないので、中古車に価値が生まれるのです。実はアルファード、ヴェルファイアは1年以上、日本で使用もしくは保管する必要があったのです。
なぜかと言うと、
トヨタがが1年以内の早期転売防止や海外輸出の防止を行っているからです。
実はトヨタ自動車は米財務省からイスラム国への車両供給解明を要求されました。
イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が公開している動画の中でランドクルーザーやハリアー、アルファードなど日本で販売されているモデルが多数使用されているためでした。調査したところ海外バイヤーからの依頼がイスラム国とつながっていることを知ってか、知らずか、どんどんトヨタの車を輸出してしまっていた日本の業者もあったようです。
このため、ディーラーや販売店によっては個人でも新車を購入する場合、1年以内の転売を禁止する内容のの念書を提出をお願いされることもあります。
もし、この念書を無視して転売した場合は次の新車の購入を断られます。
そうしないと個人ユーザーをそそのかして新車を購入させ、車をかき集める業者がいるからです。
このあたりの事情もあって、1年経っている車輌のほうが規制がなく、輸出が可能なのでお目当ての中国市場へスムーズに転売出来る為、中古車が求められるのです。
ハイリスク、ハイリターンな賭け
これらの理由で2016年の冬から春頃にはアルファード・ヴェルファイアで数十万から数百万儲けた業者やユーザー、1年乗って数万円の追金でアップグレードしたアルファード・ヴェルファイアを購入し直したユーザーもいたようです。
あなたも「よし!ヴェルファイアを買って一儲けしよう!」と思ったかもしれません。
でも、ちょっと待って下さい。
私がなぜこの記事を過去形で書いているのだろう?と気付いた人もいると思います。
そうです
ヴェルファイア・アルファードはすでに買取価格が下がりはじめているのです。
理由は上記内容がインターネットを中心に一般ユーザーにも知られはじめ、需要と供給のバランスが崩れはじめているのです。
元々閉鎖的だった中古車業界もインターネットの普及で情報交換が容易になり、『飛ばし』と呼ばれる転売専門の業者(オークションで車を購入し、また別のオークションに転売する)が増え始めています。
こうした業者は転売差額で儲けているので、新車であっても儲かりそうであれば数台購入し、1年経って、転売可能となればイッキに手放します。
さらに一般ユーザーも売り時を知るようになったので、売却時期が重なるようになります。
結果、市場では供給過剰気味となり値段が落ち始めたのです。
なので、ここ最近では価格が急騰する車種の予測はかなり難しくなってしまっているようです。グレードなどのちょっとした違いで数百万の大損をした業者の話も聞きます。
車は元の価格が大きいので、当たれば儲けが大きいでしょうが損も大きいです。
あなたに充分な資金と先見の目があれば一攫千金となることもありますが、普通のユーザーとしては裏事情を知っておいて、買取や下取りの時に買い叩かれず、得すればラッキーぐらいにとどめておくのが良いでしょう。
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