私の一枚

松本明子さんとお笑いコンビ結成 カンヌ受賞「淵に立つ」出演の筒井真理子さん

  • 2016年10月3日

お笑いコンビ「つつまつ」を結成した、松本明子さんと。今年3月に初ライブを行った。松本さんとは、NHK連続テレビ小説「花子とアン」に出演したときに知り合った

写真:様々な役になりきることを楽しむ女優、筒井真理子さん 様々な役になりきることを楽しむ女優、筒井真理子さん

写真:10月8日から全国ロードショーとなる映画『淵に立つ』の一シーン。筒井真理子さんと主演の浅野忠信さん 10月8日から全国ロードショーとなる映画『淵に立つ』の一シーン。筒井真理子さんと主演の浅野忠信さん

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 これは松本明子さん(以下あっこちゃん)と結成したお笑いコンビ「つつまつ」の初ライブの打ち上げの写真です。ドラマで仲良しになったあっこちゃんがレギュラーで出ている、高田文夫さんのラジオ番組に私を呼んでくれたことから、このコンビは生まれました。その頃私は自分を追い込む役が続き、バラエティー番組を見てはお笑いをやりたいと思っていたので、生放送中に高田先生に「私、お笑いを勉強したいんです」と直訴してしまったんです。すると高田先生は「じゃあ、二人でコンビを組みなさい」と、いきなり立川志ららさんの「真打昇進披露興行」への出演を決めてくれました。それから、うちの近くの公民館の部屋を4時間300円で借りて、あっこちゃんと何度も練習し、本番に臨みました。緊張したものの、相方が居ることが頼もしく、本当に楽しかったです。

 私は第三舞台という劇団出身ですが、ここの劇では、3分に1回観客を笑わせる使命がありました。だから私はお笑いのネタを集めに、よく池袋の文芸座のオールナイトにお弁当を持って行っていたんです。第三舞台との出会いは早稲田大学時代。たまたま公演を見る機会があり、ものすごくおもしろくて。当時のほかのお芝居と全く違ってわかりやすいし、ポップなのに鴻上尚史さんのメッセージ性もあり、いいなぁと思いました。同時になぜか自分でもできそうな気がしたんですね。

 その後、第三舞台がどこにあるのかわからないままで、ある日、大隈講堂の前に、第三舞台と書いた汚いテントを見つけました。これは逃せないと、いきなり中に入り「すみません。私ここに入団したいんです」と興奮気味に言ったら何と本番中の楽屋。劇団員の方に「落ち着け」と羽交い締めにされて外に出されて(笑)。その時に第三舞台が早稲田の演劇研究会の中にあることを教えてもらい、後日入団できました。

 最初の舞台でついたのは、とにかくニコニコしている役。当時私はつらいことがあったのですが、その役を演じている時は幸せな気分になりました。ただ私は芝居は初めてで、第三舞台のテンポの速いセリフや間の取り方が難しく、悩んだりもしました。演劇の本を読みあさり、自分なりにやってみるのですが、それがかえって裏目に出て、「真理子、何やってるんだ」と鴻上さんによく怒られてました。ずっとうまくできなかったことで、余計演劇に執着したのかもしれません。

 外に出て気付いたのは、第三舞台はとても個性的だったということ(笑)。それがわかってからは、自分のペースで役の気持ちを作るところから始め、現在まで様々な役を演じてきました。私は役になりきるため心理を考えたり、調べることが好きですし、何より自分とは全く違う人間になれるお芝居が今も大好きなんです。例えば夫を土下座させるような怖い妻を演じた時は、あまりの私の勢いに夫役だった俳優さんが、私がリアルに怖い人だと思い込んでいたと後でわかったり。いろいろありますが、日々楽しみながら演じています。ただ没頭するあまり、煮詰まることもあるので、これからは自分の表現活動を広げる意味でも、お笑いも挑戦したいですね。

    ◇

つつい・まりこ 女優 山梨県甲府市出身。大学在学中に、第三舞台で初舞台を踏む。その後、映画では1994年『男ともだち』(東京国際映画祭参加作品)で主演デビューを果たし、北野武、園子温、松尾スズキ、などの作品をはじめ、多彩な作品に出演。テレビドラマも「花子とアン」「八重の桜」など出演多数。

◆筒井さんが出演する、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞した『淵に立つ』。カンヌが熱狂した衝撃の家族ドラマだ。郊外の小さな工場を営む夫婦(筒井真理子、古舘寛治)とその一人娘。ある日、夫の古い友人だという男(浅野忠信)がやってきて、住み込みで働くことになり、奇妙な共同生活が始まる。しかし男はやがて一家に残虐な爪痕を残し去っていく。それから8年、夫婦は皮肉な巡りあわせにより男の消息をつかむのだが……。家族ドラマでありながら、心の底からわきあがる恐怖感を抑えられない問題作。10月8日から有楽町スバル座ほか全国ロードショー/脚本・監督 深田晃司

「今回、とても重要な役をいただき、私で背負いきれるかと最初は不安でした。さらに、同じような体験をされた方にお話を伺い、今までの私の経験値や想像力だけでは表現しきれない。そう思い、とにかく役の気持ちを詰め込んで、信頼する監督と共演者に身を任せ、その化学反応を信じて章江として居ることにしました。また、8年間の時間経過があり、その心の澱(おり)のたまり方を表現するために、監督と話し合い、体を変化させようと増量を決意しました。3週間しか時間が無かったので、一日6食以上。最後のしめは夜中の担々麺。後半は少し手も震え、糖尿病になるかと心配でした。(笑)。素晴らしいスタッフや共演者とカンヌ映画祭で、賞まで頂けたことは本当に夢のようです。この作品をご覧いただき、家族やご自身について話し合いなどしてもらえたらうれしいです」

(聞き手:田中亜紀子)

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