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文科省特定領域研究「メンブレントラフィック」ニュースレター(2004〜)に吉森が連載していたエッセイのpdf版です。きれいですが重いので、すぐに見たい場合は下のブログ版をご利用下さい。

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文科省新学術領域研究「細胞内ロジスティクス」ニュースレター(2010〜)にに吉森が連載していたエッセイのpdf版です。きれいですが重いので、すぐに見たい場合は下のブログ版をご利用下さい。

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  • Prof. A. Hill Returns Prof.A.Hillの帰還とロジ裏生活〜Season 2, Episode 1〜
    2010年03月16日
(2009年9月発行の新学術領域研究「細胞内ロジスティクス」ニュースレター1号に掲載されたものです。許可を得て転載しました。)

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logi_2_image005.png おめおめと戻ってきてしまった... メントラニュースレターの終了と共に颯爽と姿を消したのにもかかわらず。まあ、こういう潔くないずるずるしたところは、私らしくはある。ということで、性懲りもなくまたまた書きます今度はロジ裏で、破れかぶれのシーズン2! 

logi_2_image005.png 相変わらず空耳健在である。最近のマイヒットは、山崎まさよしの歌うEnglishman in New York。ちょうどサビのところがどうしてもI'm mammalianとしか聞こえない。そうか君も哺乳類だったか、酵母やハエや線虫じゃなかったか、と妙にしみじみしてしまう(なんのこっちゃ)。この曲は、もちろんStingの名曲で、彼のバージョンだとそうは聞こえないので、カバーしている山崎が訛っているということなんだけど、哀感を帯びた曲調と、私は哺乳類♪と歌い上げる切なさがマッチしていて、心の奥深くに沁みるのである。

logi_2_image005.png ところで私はへそ曲がりなので、メントラの中でも超マイナーな(あるいは、マイナーだった)オートファジーを主に研究している(あ、こんなこと書くと私の素性がばれてしまう。もうばれてるか...)。このテーマで研究を始めた10うん年前なんて、オートファジーなんて誰も知らなくて、弱小分野の悲哀と、それゆえの愛着と幸福をこもごも味わっていた。それが何だかあれよあれよという間に分野が発展してきて、特にここ数年雨後の竹の子のごとくぐんぐん伸び、無名の頃からずっと応援してきたタカラジェンヌがトップスターになったような感じで(変な喩えだ。でもジャニーズで喩えるともっと変だし)、喜ばしさが大きいが、一抹の不安と寂しさもあるという状況にあいなった。
しかし、それにしても、このように分野が大きくなるとは夢にも思わなかったので、今昔の落差の大きさに目まいを覚え、随分遠くに来たもンだなぁという感慨にふける今日この頃である。
そんな2009年のとある日、学生がてーへんだ、てーへんだと少年ジャンプをラボに持ちこんできた。何々と覗き込むと、なんと連載漫画の中にオートファジーと書かれているではないか! 読み間違いではなく、紛れもないオートファジー、しかもカッコして自食作用と正しい日本語訳も付いているし。さらには次のページには「オートファジー(自食作用):栄養飢餓状態に陥った生物が自らの細胞内のたんぱく質をアミノ酸に分解し一時的にエネルギーを得る仕組みである」という、好い加減な英文総説真っ青の極めて正確な説明までついている(島袋光年作「トリコ」)。
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これが問題の漫画「トリコ」におけるオートファジー描写シーン。オートファジー自体の絵もあれば最高だったのだが、それはなくて、残念。トリコは主人公の名前である。作者と集英社のご厚意により転載させて頂いた。©島袋光年/集英社

うーむ、感無量... ついにオートファジーもここまできたかあ。苦節10数年、やーいやーいオートファジーと蔑まれ続け(嘘ですが)、それが天下の少年ジャンプに...もう思い残すことはない(って大げさな)。昔、ビックリハウスという雑誌で、自分らで流行語を作って最後は広辞苑に載せてもらおうというムーブメント(?)があったが、世間から隔絶し結界の中にあるかのごとき細胞生物学の社会としては、私はやはり少年ジャンプに登場というのはひとつの到達点だと思う。ジャンプは発行部数が600万部を超えたことがあるのだ。この数字はとてつもない。
Nature, Scienceに論文出すよりずっとインパクトがある。この話を、Harvard Medical Schoolの講演でしたら大受けであった。向こうの連中、特に若い奴ら、にはMangaって言えば通じることを今更ながら知った。

今回のことが、私の琴線に触れたもうひとつの理由がある。例えば「もやしもん」のような啓蒙的(うんちく)漫画にオートファジーが知識として出てきてもさほど驚かないし、実際高度な科学的知見が色々と出ていて、最近の私の生物学の知識はほとんどもやしもん由来なくらいだ(生物学者がこんなこと胸張って言っちゃいかんな)。
今回オートファジーが登場したのはそういう文脈ではなく、かなりぶっとんだストーリー設定の中で、主人公の細胞で自食作用が発動し、そのおかげで敵との闘い(Mangaの王道たる血みどろの格闘)に勝つという実際的(?)活用ぶりで、大変シュールな内容なのだ。私はシュールに目がない。「手術台の上でこうもり傘とミシンが出会う」ことの素晴らしさよ。
ストーリーがまたすごくて、簡単には説明できないのだが(実は私も通して読んでいないので学生からの受け売りである)、主人公は珍しい食材を探して世界を渡り歩く美 食屋という職業で、なんだ食べ歩きの話かと思ったら、ライバルと命がけで死闘を演じるというグルメ&格闘技系(???)漫画。しかもグルメ細胞という特殊な細胞があって、美味しいものを食べるとこの細胞が進化するそうな。主人公はこの細胞を持っていて、そのおかげで超人的なパワーを発揮、そして絶食時にはその細胞がオートファジーを起こしてパワーを供給する... しかも飢餓状態が続くと細胞は自分を食べ尽くしてしまう(autophagic cell deathだ!)ので敵との闘いが長引くとまずい、主人公ピーンチ! ...書いていて訳が分からなくなってきたので、これ以上は各自漫画を読んで頂きたい。
私は恥ずかしながら寡聞にしてこのトリコを知らなかったが、若者には大変人気があるようで、うちの大学院生にも愛読者がいたのでこうしてオートファジー出現も知ることが出来たのだ。しかし、作者の島袋さんはどうやってオートファジーを知ったのか。不思議。しかも大変正確に把握されている(研究者でも間違って解釈している人が多いのに。ファゴソームとオートファゴソームの区別も付かない偉い先生も居た。)

logi_2_image005.png 話しはかわって、最近、うちのポスドクの苦労の結晶が論文になり、いくつかの新聞に取り上げて頂いた。大変嬉しいことなのだが、こういうとき、妙に居心地が悪くなり、お尻がむずむずする思いをするのは私だけであろうか。
つまり、我々の研究内容だと新聞記事を読んだ人には何のことかわからないだろうなあ、ということを思わずにはおれず、基礎科学と世間一般、その彼我の距離を否応なく思い出さされるのである(普段は都合良く忘れているって言うのもどうかとは思うが)。それがあるから、記者も癌が治るかもみたいな匂わせ方をするが、実際にはなかなか遠いのは我々自身がよく知っている。我々が日々やっていることを普通の人々に分かって貰う、というのは心底大問題で、かつ、これから真 剣に考えねばならないことなのだが... 皆さんの税金たくさん使っているしねえ。
それより何より、科学って面白いんだ、だからやってるんだ、ということを研究者では無い人達に理解してもらわなくては科学に未来はないだろう。あ、いかん、こういうマジな話しをここでし始めると、この欄の読者が激減する恐れがあるのでそろそろやめなきゃいかんが、皆さん、法事の時などに親戚のおじさんにお前何やってんねん、って聞かれて即答できますか? 私はある酒席で、オーラというか迫力というか目ぢからというか、そういうものが感じられる初対面の美しいご婦人に、何の研究をしているのか一言で言いなさい、と言われ、夏休みの宿題をせずに登校した小学生のように、何も言えず思わず目を伏せてしまった。負けである。完敗。でも未だに答えは見つからず。私は何を研究しているのか一言で...うーん。
 最後に、その我々の研究に関する新聞記事の中で最も気に入っているものの画像を出しておこう。気に入ったのは、記事の中身ではなく、場所である。

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おっちゃんが仕事帰りの電車で読んでいるタブロイド判の新聞である。なぜ我々の研究成果を載せたのか不明。この上には、鼻づまり着メロ解消法という記事がでかでかと。紙面に隙間が出来て困ったのかも。他の大新聞では、がんとの関係を述べている記事が多かったがここでは何故かアルツハイマー。この新聞の読者層の関心事なのか。 これもシュールでしょう? 科学も風俗もごっちゃまぜの、日本という混沌とした社会をよく表していると思うのである。そういう混沌は嫌いではない。
* *付記1:てーへんだ、てーへんだは、うっかり八部衛だったかな? でもうっかり八部衛ってもう黄門様には出てないか...

* *付記2:手術台云々は、シュルレアリスムの精神を説いた、ロートレアモンの有名なお言葉。

* *付記3:私が一騎打ちで負けた女性は、そのとき紹介されたにも関わらず私が酔っぱらっていたため良く理解しておらず後になってようやく認識したのだが、全国展開している某有名クッキングスクールの経営者であった。道理で迫力あるはずだ、と後でひとりごちたのであった。

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* *付記4:全く関係ないが、現在のマイブームのひとつ(他にも庭いじりなど多数有り)はYUIで ある。あの眉間のしわ、思い詰めた表情、歌、経歴、痛々しさと共存するたくましさ、独特のリリシズムなど全ては、反抗的、傷つきやすい、多感などをキーワードとする今時珍しい「レトロクラシカルな正統的青春」のイメージへと収束している。それが面白い。タイプは全然違うけれど、藤圭子や初期の山口百恵の系譜。ジェームス・ディーンでもいいが。あ、藤圭子知りません? 宇多田ヒカルのお母さんといった方がいいのかな。

* *付記5:領域代表ともなれば、もうアホなことは書けんと思っていたのに、書き終わってみると... ええんやろか...こんなんで... 領域の未来に暗雲が立ちこめているような気が...

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