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奥西元死刑囚の手記見つかる きょう死亡1年

奥西勝元死刑囚の自筆ノート

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 三重県名張市で一九六一年、女性五人が毒殺された名張毒ぶどう酒事件で死刑が確定し、再審請求中だった奥西勝元死刑囚が八十九歳で亡くなってから、四日で丸一年がたつ。特別面会人だった稲生(いのう)昌三さん(77)=愛知県半田市=が保管する元死刑囚の遺品から、獄中で書いていた手記が見つかった。

 手記は大学ノートや小型の手帳に残されていた。記載によれば、一九六三〜二〇〇八年ごろ断続的に書かれたとみられる。

 記載の多くは日記の体裁で、冤罪(えんざい)の訴えや獄中の孤独、家族への思いが簡潔な文章でつづられている。「全生命をかけて頑張ったが、運悪く最低の結果となる。本当涙も出ない」(最高裁で死刑が確定した一九七二年六月十五日の記載から)

 名古屋高裁が再審開始を決定した二〇〇五年四月五日には「とうとう悲願」との言葉とともに、支援者らとの面会の様子が書き記されている。だが、検察の異議申し立てに「残念である。又(また)いじめ。もういいかげんしてくれよ」。乱れた筆致で感情を爆発させた。決定はその後、取り消された。

 手記は遺族の意向を受け、稲生さんが保管。元死刑囚の死後に収監先だった東京・八王子医療刑務所から受け取った私物や差し入れ品の中に含まれていた。

 稲生さんは「死への恐怖と闘いながら、最期まで希望を持ち続けた奥西さんの思いが率直につづられ、感慨深い」と話している。

 事件を巡っては、元死刑囚の妹の岡美代子さん(86)=奈良県山添村=が引き継ぎ、十回目の再審請求中。

 

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