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マレーシア機撃墜、ミサイルはロシアから搬入
5カ国合同捜査チームが中間報告

2016/9/28 23:27
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 【ブリュッセル=森本学】ウクライナ東部で2014年7月に起きたマレーシア航空機の撃墜事件を巡り、刑事責任を追及するオランダなど5カ国の合同捜査チームが28日、捜査状況の中間報告を公表した。撃墜したミサイルはロシア領から持ち込まれ、親ロシア派が支配する「ウクライナ東部」の地点から発射されたと結論づけた。焦点になっているロシアの関与は明言を避けた。

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 中間報告は、マレーシア機を撃墜したのはロシア製の地対空ミサイル「ブク」だったと指摘した。ミサイルが発射された地点は親ロシア派の支配するウクライナ東部だったと特定した。ミサイルはロシアからトレーラーでウクライナ国内へ持ち込まれ、撃墜後すぐにロシア領内へ持ち出されていたとの判断を示した。

 マレーシア機撃墜を巡っては、オランダ安全委員会を中心とする国際調査団が昨年10月に最終報告書を公表。撃墜に使われたのがロシア製のブクだったと断定した。今回の中間報告もこの点を改めて確認した。

 5カ国の中間報告で新たに明らかになったのは、具体的なミサイルの発射地点だ。昨年の安全委の最終報告では、親ロシア派武装組織の支配下にあったウクライナ東部の320平方キロの地域だと推定したが、今回は目撃情報や録画映像などから発射地点をほぼ特定。「親ロシア派の支配地域から発射された」と明確に結論づけた。

マレーシア機撃墜の捜査状況を報告する5カ国合同捜査チーム(28日、オランダ)=AP
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マレーシア機撃墜の捜査状況を報告する5カ国合同捜査チーム(28日、オランダ)=AP

 さらに傍受した電話の会話記録や捜査で収集した録画映像などを分析し、ミサイルがロシア領から持ち込まれたことも新たに明らかになった。事件に関与したと疑われる100人を特定したとも説明した。

 ただ、焦点となっている点には踏み込まなかった。誰がミサイルを発射したか、ロシア政府がどこまで関与したかなどは明言を避けた。実行犯も特定しなかった。合同捜査チームは、ミサイル発射を指示した人物の特定を含め捜査を続ける。

 国連安保理では15年7月に、犯人を裁く特別法廷を設定する決議案がロシアの拒否権で否決された。関係国は国際法廷の設置を探っているが、実行犯の処罰実現のめどは現状で立っていない。

 合同捜査チームを構成しているのはオランダとウクライナのほか、ベルギー、マレーシア、オーストラリア。前回の安全委による事故調査に加わっていたロシアは今回の捜査チームに参加していない。撃墜事件で死亡した乗客・乗員298人のうち3分の2をオランダ人が占め、オランダが捜査を主導している。

 撃墜事故では、アムステルダム発クアラルンプール行きのマレーシア航空17便(ボーイング777)がウクライナ東部の高度約1万メートルを飛行中に撃墜され、乗客乗員298人の全員が死亡した。欧米はロシアがウクライナの親ロシア派武装組織に提供したミサイルで撃墜されたとみて、欧州連合(EU)が冷戦後初めてロシアに本格的な経済制裁を発動した。

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