Fontaine分類
下肢の末梢動脈疾患 PAD (peripheral artery disease) *1 は、症状によって重症度が4つに分類されています。有名な Fontaine 分類です。
Ⅰ度 無症状もしくは冷感やしびれ感
Ⅱ度 間欠性跛行
Ⅲ度 安静時の疼痛
Ⅳ度 潰瘍や壊死
間欠性跛行はⅡ度
歩いていると下肢に痛みやしびれがみられ、休むと楽になるため、歩いたり休んだりとなる間欠性跛行はⅡ度の症状ですが、比較的長時間または長距離の歩行ができる ⅡA度と、日常生活に支障が出る ⅡB度 に分けて検討されることもあります。
それでは、PADのⅡ度、間欠性跛行がみられる病期になったら、どのような治療があるでしょうか。ざっくり確認しておきましょう。
プロスタノイド
PADにはプロスタグランジン製剤などのプロスタノイド *2 が使われることがあります。
プロスタグランジンE1 (PGE1) については、随分前(2008年)にぼくの記事 PGE1の長期的効果は明らかでない - 地域医療日誌 by COMET で取り上げたことがあります。
PADにPGE1を使用すると、6か月後の総死亡や心血管疾患の発症が少なくなるかを検討したランダム化比較試験ですが、残念ながらあまり大きな差がみられませんでした。
これは真のアウトカムである、総死亡や心血管疾患の発症を検討した研究でしたが、下肢の症状はよくなるのでしょうか?
メタ分析(Robertson, 2013年) *3
研究の概要
Fontaine Ⅱ度の間欠性跛行がある患者にPGE1、PGI2やアナログ製剤を投与すると、プラセボやほかの治療に比べて歩行距離は長くなるか、副作用は多くなるか、について検討したランダム化比較試験のメタ分析。
主な結果
18のランダム化比較試験(2,773人)が該当。
PGE1は4研究あり、プラセボとの比較では結果の統合はなされなかったものの、無痛歩行距離(平均差 17.2~51.0m)、最大歩行距離(平均差 21.1~112.0m)いずれもPGE1群で改善度が大きかった。
PGI2については6研究あり、プラセボとの比較では、無痛歩行距離(5研究, 1,402人)平均差 -3.66(95%信頼区間 -18.77, 11.46)とほぼ同等、最大歩行距離(5研究、1,328人)平均差 12.36(95%信頼区間 1.84, 22.87)とPGI2群でやや改善度が大きい傾向がみられた。
結果のばらつきが大きいですね。PGE1ではかなり大きな効果がみられているようにも感じます。
この研究の結論でも、PGE1には効果があるかもしれないが、効果の有無を検討するには研究データがまだ不十分である、となっています。
ほかの治療についても、順次みていきましょう。
つづく