田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 新しい代表と執行部がどのようなものか。民進党の経済政策に日頃から厳しい目を向けている筆者だが、国会論戦はやはり客観的に見なければならない。だが、臨時国会冒頭の民進党の代表質問や、また衆院予算委員会に移しての質問などを見た限り、まったくひどいものだった。少しでも期待した自分の愚かさを呪った。

 いまのところ国会の最大の論点は、安倍首相が所信表明演説のときに起きた、自民党議員らのスタンディングオベーション「問題」だ。個人的には自衛隊への敬意には賛同するが、確かに見慣れない光景ではある(ちなみに民主党政権時代に鳩山元首相個人へのスタンディングオベーションがあったが、なぜかマスコミは問題視しなかった)。
第192臨時国会が召集され、衆院本会議で安倍晋三首相の所信表明演説に、立ち上がって拍手を送る与党議員(奥側)=9月26日午後、国会(斎藤良雄撮影)
第192臨時国会が召集され、衆院本会議で安倍晋三首相の所信表明演説に、立ち上がって拍手を送る与党議員(奥側)=9月26日午後、国会(斎藤良雄撮影)
 だが、それだけのことでしかない。「光景」でしかない問題なので、それをみて気持ちのいい人も気味の悪い人もいるのだろう。ただの個人的な感情レベルであり、政策論争でもなんでもない、と筆者は思う。Buzzfeed Japanの石戸諭記者のように、「三権分立」の観点から問題だという指摘もあるが、これも国会議員の意識を改めて問う程度の話でしかない。憲法で規定されている三権分立を侵す行為ならば、法的に問題だ。しかしそんな議論にまで拡張する出来事であるとはおよそ思えない。

 その他で、民進党の質問で目立ったものといえば、やはり「ミスター消費増税」とでもいうべき、野田幹事長の代表質問だろう。主要なポイントは、1)政府は日本銀行にマイナス金利をやめさせろ、2)消費増税10%の先送り批判と再分配政策の強化、3)TPP批判、である。これらの質問の逐一については、ジャーナリストの長谷川幸洋氏が的確に批評しているのでそれを一読されたい(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49830)。

 特に一番目と二番目は、この連載でも何度でも書いているが、緊縮主義と消費増税主義の亡霊でしかない。消費増税をすれば、経済は縮小する。その中で再分配政策を「強化」すれば、自分たちのひいきする勢力への「再分配」は加速するだろうが、縮小するパイの中では、他の勢力への取り分が急減するだけである。例えば、蓮舫代表は高齢者の福祉を重視しているらしいが、その反動で若年層への福祉や雇用が犠牲になるかもしれない。

 縮小するパイの分捕りは、またそれを采配する人たちの政治的権力を歪んだ形で高めてしまう。そして政治とコネのある人たちがますます有利なパイの「再分配」にあずかるというクローニー(縁故)資本主義が加速し、私たちの経済的恩恵をはなはだしく阻害するだろう。