環境
Loading

自然界の放射線被ばく量「日本は世界で153番目」国ごとに初めて算出

 宇宙から降り注ぐ「宇宙線」など、自然界にもともと存在する放射線による被ばく線量について、日本原子力研究開発機構のグループが世界で初めて国・地域別に推計したところ、日本は1人あたり年間0.27ミリシーベルト(mSv)で、230カ国中153番目であることがわかった。

 

 2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故直後、放射線被ばくによる健康への影響に関心が高まったが、それとは別に、自然界には「宇宙線」や、大気中に含まれるラドンや地殻などの放射線が存在する。

 

 国連科学委員会(UNSCEAR)は2008年の報告書で、自然放射線に占める被ばく線量のうち、宇宙線は全体の16%近くを占める平均0.39mSvと概算している。

 

 しかし、この数値は世界平均に過ぎず、国や地域別の被ばく線量は出されていないため、日本原子力研究開発機構の佐藤達彦研究主幹らのグループは、独自に開発した計算モデルと、世界各地の標高や人口密度のデータを組み合わせて、230カ国の1人あたりの放射線量を推計した。

 

 その結果、日本の1人あたりの年間放射線量は0.27mSvで、世界全体の153番目であることが明らかになった。一方、1人あたりの年間放射線量が最も高い国は、標高3000メートル級の高地に人口が集中する南米ボリビアで、0.81mSvに達した。

 

 さらに人口1億人以上の国について平均値を出したところ、米国やロシアなど高緯度の国で高く、バングラデシュやインド、ナイジェリアなど赤道付近では低い傾向が明らかになった。

 

 研究グループによると、全世界平均では年間0.32mSvになり、UNSCEARの概算より約16%ほど低くなった。高緯度に位置する米国では平均を上回る0.33mSv/年、ロシアで0.32mSv/年、中国0.31mSv/年と並んだほか、赤道直下のシンガポールでは最も低い0.23mSv/年となった。

 

 研究グループによると、「全人口の99%が、年間0.23mSvから0.70mSvの範囲の宇宙線被ばくを受けていて、これらの数値は太陽活動の変動で15%ほど変化する」と話している。

 

 なおこの研究成果は、英科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』誌に掲載された。