井上亮
2016年10月3日16時57分
工場の生産設備や家電などあらゆるモノがインターネットにつながる時代が迫っている。この「IoT」と呼ばれる技術では米ゼネラル・エレクトリック(GE)が先行し、取り組みに注目が集まる。IoTを導入して開発や生産の効率化に取り組む同社の最新鋭工場を訪ねた。
米南東部のサウスカロライナ州。発電所向けのガスタービンをつくるグリーンビル工場は、1968年に設立された世界最大級のタービン工場だ。東京ドーム2・4個分の敷地で約3200人が働く。つくられたタービンは8割以上が日本を含む世界各地へ輸出される。
「これはタービンの試験データを取るためのコードさ」。担当のスティーブ・ローズ氏がタービンから延びる無数のコードの束を指さした。
ここは工場敷地内にあるタービンの試験施設。2013年に約200億円かけて建てた最新の施設だ。
現在開発中の最新型タービン「7HA・02」には、約4千個のセンサーが取り付けられ、そこからコードが延びていた。温度や圧力、振動などのデータを取り、施設内のデータセンターに送られる。50~100人の技術者がデータを分析し、発電効率を高めるような改良に即座に対応するという。
試験施設で200時間動かした時に得られるデータは、500台のガスタービンを実際に1年間稼働させたデータと同等の量になるという。実に、2万分の1の時間短縮につながる計算だ。
グリーンビル工場の試験施設は、過酷状況を想定した試験が可能だ。ローズ氏は「通常はあまり起きないことを想定して、負荷をたくさんかけ、有益なデータが素早くとれる」と利点を語る。
今年6月、GEはフランスの発電所に納入したガスタービンで、発電効率のギネス世界記録を達成した。GEの発電部門の副社長、ジョン・ラマス氏は「従来は発電効率を1%上げるのに10年かかる世界だが、開発中の7HAで世界記録を更新したい」と意気込む。
機器をネットにつないで付加価値の高い情報を得る「IoT」の技術は、製品の改良だけでなく、ものづくりの効率化にもいかされる。
グリーンビル工場の生産現場に足を踏み入れると、金属がこすれたような臭いや、油の臭いが漂う。400以上の旋盤やフライス盤、コーティングの機械が置かれ、完成した部品が整然と並ぶ。一般的な製造業の工場と変わらない印象だ。
ただここは、GEが世界で持つ約400工場の中で、わずか8工場しかない「ブリリアント・ファクトリー(卓越した工場)」のひとつだ。
品質リーダーのジーン・ラジュ…
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