素晴らしい人物を紹介させてください。数年前、新潟市西蒲区(旧・巻町)で、あらゆるものを自作する鈴木さん(仮名)という男性と出会いました。今回、鈴木さんに再会するために、仲間達と一緒に西蒲区に足を運びました。私は、そのひとと同じ空間にいるだけで半端ない嬉しさがこみ上げてくるような圧倒的肯定力を携えた方々を「奇跡のひと」と名付けているのですが、鈴木さんはまぎれもない奇跡のひとだと思います。
新潟の鈴木さんが、30万円で建てたご自宅にお邪魔しています。鈴木さん曰く「寝る直前まで靴を履いているよ」「先送りする人生はやめたんだよ」「生きていることが、嬉しくてたまらないんだよ」https://t.co/9McYmhORMv pic.twitter.com/4A0owzj6VI
— 坂爪圭吾 (@KeigoSakatsume) 2016年10月1日
私は「圧倒的肯定力」という言葉が好きで、圧倒的肯定力を身に纏うひとのことはもっと好きです。熱海のムラキテルミさんや、新潟のカムキヒデオさんも、存在に触れるだけで嬉しさがこみ上げてくるような圧倒的肯定力があり、私は勝手に崇拝をしています。今回は、過去記事に書ききれなかった鈴木さんのエピソードを幾つも耳にした(あるいは実際に目の当たりにした)ので、補足的にまとめます。
30万円で自作をした山小屋。
こちらが、鈴木さんが30万円で自作した丸太小屋です。
1年間に450回登山をしたことがあるというもはや意味不明レベルの鈴木さんは、山小屋の雰囲気を愛しています。「山小屋はね、泊まりたいひとを追い出すことはできないんだよ。だって、満杯だからってひとを外に追い出してしまったら、そのひとは寒さで死んでしまうからね。だからね、どれだけギュウギュウ詰めになってもね、来たひとみんなで布団を分け合って眠るんだよ」と鈴木さんは話します。
頼まれたことはなんでもやるようにしている鈴木さんは、いつの間にか家の解体までできる腕前を手に入れました。「この家の支柱とか、植木鉢の下にある欅の木とか、花壇のしきりに使っているお風呂のタイルとか、全部、家を解体したときにもらってきたものなんだよ。ゴミは宝の山だよ。頼まれたことはなんでもやるようにしていたら、いつの間にかなんでもできるようになったんだよ。面倒なことを、よろこびながら、楽しみながらやるんだよ」と鈴木さんは話します。
本はタイトルが10割。
鈴木さんは、新聞の切り抜きを壁に貼っています。鈴木さん曰く「本で一番大事なのはタイトルなんだよ。だから、中身は読まなくても何が書いてあるのかは、タイトルを見ればわかるんだ。だから、僕は本のタイトルを壁に貼っているんだよ」とのこと。本の中身は読まないそうです。それを聞いた私達は「鈴木さん、流石過ぎる!!」となり、他にも、私達が「心配事の9割は起こらない」という本の切り抜きを見ている時に、鈴木さんは話してくれました。
「僕の家は、ライフラインが全部止まっても全然へっちゃらなんだよ。発電機もあるし、畑もあるから半年分の食糧もあるし、薪ストーブで煮炊き料理もできるし、田舎だから湧き水もあるし、太陽光でお風呂も入れるんだよ。マスコミとかは、これが危ないとかいろいろなことを言うけれど、間に受けてしまったら『これをせばなんね、あれもしねばなんね(新潟弁で「これもしないと、あれもしないと」)』ってなってしまう。でも、僕の家は大丈夫だから、心配することはないんだよ」
私達は、それを聞いて「困ったら鈴木さんのところに行きます!」と叫びました。
家を建てていた当時の写真も見せてもらいました。
あまりにもダイナミックな木材の運び方や、
鈴木さんが自作をしたクレーンの写真まで。鈴木さん曰く「これは8万円で作ったんだよ。DIYの道具をDIYしたんだよ。クレーンはね、レンタルをすると1日4万円以上かかるから、毎日借りたらとんでもない金額になってしまうよね。でも、これなら2日も使えば元がとれるんだよ。自分が使いたい時にクレーンを使うことができるし、家ができたら解体をして外に出すこともできるんだよ」とのこと。
このように、クレーンは解体ができます。
鈴木さんの元を訪れる、若い人々との写真。
瞳の輝いているひとを信じる。
畑で採れた特大のサツマイモを披露してくださる鈴木さん。ご覧いただければわかると思うのですが、瞳の輝きが尋常ではありません。私は「瞳の輝いているひとを信じる」的な信仰の持ち主でもあるのですが、鈴木さんの瞳に神様を見ました。髪を後ろで結んでいる鈴木さんの姿も非常にキュートで、よく見ると輪ゴムでした。肌のツヤも若々しく、ああ、人間はこんな風に年をとることができるのだという希望の光を、私達は与えられました。
これは余談になるのですが、この時、一緒にいたちーちゃんという女性が「やばい!しゃっくりが止まらない!」と自身の窮状を訴えます。その後、様々な方法を試みるもののしゃっくりは止まらず「けいごさんの目力は半端ないから、けいごさんの目を見ていたら治る気がする!」となり、私とちーちゃんは20秒間ほど見つめ合いました。すると、なんということでしょう、ちーちゃんのしゃっくりは見事に止まり、私達は「目の力半端ねーー!!」ということになりました。
王様のイスと湧き水。
こちらは、鈴木さんご自慢の「王様のイス(油性ペンで直書き)」です。
鈴木さん曰く「これはね、動かせるように下にゴロゴロを付けたんだよ。立派な木をもらったからね、これをイスにしたら気持ちいいだろうなあって思ったんだ。それでね、名前のないイスよりは『王様のイス』って名前の方が、座った時にうれしいでしょう??イスの文字がカタカナなのはね、漢字で書くとどうなるんだっけってわからなくなって、間違えてしまったら座るひとにも申し訳ないからカタカナで書いたんだよ」とのこと。それを聞いて、私達は「鈴木さん、可愛すぎる!!」となりました。
最高の座り心地を誇ります。
鈴木さんの案内で、近所の湧水を案内していただきました。
赤とんぼが指に止まります。
撮影会がはじまります。
こちらが、名水百選にも選ばれた湧水です。
これを聞いた時にはウルトラ驚いたのですが、こちらの湧水、実はすべてを「鈴木さんが自力で採掘をして、自力でコンクリートの井戸を整え、自力で配管システムを整えて、自力で市に水質検査を要請して見事に認定されたものである」ということが判明しました。近くの看板には、小さい文字で「水が出ていなかったら、電話してみてください。090ー○○○○ー○○○○。近くにいれば、五分位で行きます」と、鈴木さんの携帯電話の番号が書かれていました。それを見て、私達は「鈴木さん、凄すぎてやばい!!」となりました。
秘密のログハウス。
ブログ記事にどこまで書いていいのかわからないのですが、この、非常にいい感じの土地の近くには秘密の隠れ家があります。私達は「(近くに海も山も温泉も湧き水も鈴木さんもあり、仕事などの作業にも集中できそうな)ここに住めたら素敵過ぎる!!」となり、非常に図々しい話ではありますが、鈴木さんに「どうすればこんなにも素敵な家を使わせていただくことができるものでしょうか??」的な話をしました。
このログハウスがどのような展開を見せるのかは、これからのお楽しみということで、またの機会にご紹介をさせていただきます。鈴木さんのすべてのエピソードを紹介することができないのが残念ではありますが、個人的に、一番響いた言葉は「家の中は寝るだけでたくさん。できるだけ外にいたい」でした。同じ場所にずっといることのできない私は、ああ、わかる、わかるなあと勝手に肯定されているような気持ちになりました。
大事なことは、自分の人生を、自分自身を肯定する姿勢だ。
鈴木さんとお別れをした後に、私は、自分自身のことを振り返っていました。平均的な生き方から自分がはみ出してしまっていると感じる時、誰もが当たり前にできることが自分にはどうしてもできないと感じる時、その「精神的な味方・拠り所の少なさ」から、一時的に自信を喪失してしまう時があります。そんな時は「自分はダメだ!クズだ!ゴミ人間だ!」みたいな気持ちにもなりますが、しかし、平均的な生き方からはみ出してしまっている自分を強く励ましてくれるものは、同じように「(鈴木さんのように)平均的な生き方をはみ出していながらも、常に圧倒的肯定力を携えているひとびと」だったりもします。
過去も未来も忘れさせる空だ。 pic.twitter.com/tP5gtYkWCY
— 坂爪圭吾 (@KeigoSakatsume) 2016年10月2日
自然に触れた時、素晴らしい芸術や素晴らしい人柄に触れた時、私のこころはある種の圧倒的肯定力に包まれて、大袈裟な言葉ではありますが「自分は自分でいいのだ【永遠にそのままで行け】」という気持ちになります。否定的な考え方は世界に『敵』を生み出して、肯定的な考え方は世界に『味方』を生み出すものだと思います。私は、圧倒的肯定力に包まれている瞬間のこの感覚が大好きで、大事なことは「否定的な考え方に囚われるのではなく、自分の人生を、自分自身を肯定していこうとする姿勢だ」ということを思います。
いままでは、ひとりでいないと自分を護れないからひとりになる、そんな時間が多かった。最近では、大切なものを大切にするためにひとりになる、そんな時間が増えてきた。当たり前のことかもしれないけれど、ひとりが好きと、ひとが嫌いは別物なんだ。 pic.twitter.com/262dWzN48F
— 坂爪圭吾 (@KeigoSakatsume) 2016年9月19日
鈴木さんにお会いする前に、私達は、西蒲区にある角田山を登りました。登山道を歩きながら、私は、自分の表情が自然と笑みを浮かべていることに気がつきました。そして、ああ、自分は本当に自然が大好きなのだなあということを思いました。素晴らしい景観を前に「うわあ」と声をあげている瞬間の自分は、自由そのものであり、平和そのものでした。多分、自由なひとは自由を発散し、平和なひとは平和を発散しているのだと思います。それならば、この世で一番大切な仕事は「自分の平和を維持すること」ではないのだろうかと、否定的な思いに囚われてしまうこともあるけれど、自分の人生を、自分自身を肯定していこうとする姿勢が大切なのだということを、ひとり、夜道を歩きながら考えていました。
この人でいいかなではなく、この人といたいと思えるひとといること。中途半端な思いではない、自分から前のめりになって愛していけるひとやものを大切にすること。誰かに何かを言われても、自分には「これが最高だ」と思える瞬間を大切にすること。 pic.twitter.com/9lCC1ykZgU
— 坂爪圭吾 (@KeigoSakatsume) 2016年10月2日
人生は続く。
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