キャンプ場でAVを撮影したとして、出演者・制作会社スタッフら52人が公然わいせつおよびその幇助などの容疑で書類送検された件で、東京地検は52人全員を不起訴とした。52人の内訳は、出演女優が9人、男優が24人、それ以外にAVメーカーCAの社長、プロダクションの元社長、カメラマンなど、現場に居た居なかったに関わらず、作品制作に携わったスタッフらが約20名。AVに対する摘発で一度に50人以上というのは異例中の異例だった。
撮影スタッフらは「貸し切ったキャンプ場で見張りを立てた上で撮影していたのだから、公然わいせつにはあたらない」と主張していたが、地検の判断でもそれが認められ、「不特定多数が目撃できる状況ではなかった」とされた。
この事件は、よくある風俗店の摘発などのエロ系の事案と比べると、非常に捜査が長引いた。ニュースとして報じられる少し前から業界内で注目されていたので、実に3ヶ月もの間取り調べが続けられた事になる。当初、警察内部の人間はこの件に関して強気の姿勢を崩さなかったため、てっきり2~3人は起訴されるのではと予測していたのだが、終わってみれば起訴まで辿り着けたケースはひとつもなく、52人全員が不起訴という前代未聞の茶番劇となってしまった。
■警察の勝手な都合で人生を狂わされる恐怖
AV業界からすれば、今回の "結果だけは" 嬉しい内容だが、その一方で「52人も書類送検しておいて全員不起訴になるような案件でも、警察都合で逮捕・書類送検まではヤラれる」という点においては、恐怖以外のなにものでもない。何かにつけて逮捕されたり、勾留されたりすれば、最終的には無罪になると解っていても、常に「いつ逮捕されるか」「もし長く勾留された場合にどうするか」と怯えながら仕事をしなければならなくなる。今回のように無意味に勾留や取り調べが長引くような事があれば、プライベート・仕事の両面で大きな被害を受けてしまう。それによって稼ぎ口を失い、人生が台無しにされる場合もあるだろう。
また、この手のどっちに転ぶか微妙な事件が起きた際のお約束で、警察は積極的にマスコミに偏った情報を流し、それを受けたメディアは大本営発表をそのまま垂れ流すため、狙われた対象は、情報拡散の初動において、その後どういう結果になろうと拭い去れない汚名を着せられる。
そもそもの話だが、今回の件は問題とされる撮影が行われたのが2013年9月30日および10月1日と解っている。という事は、公然わいせつ容疑で捜査するとしたら、ハナから公訴時効まで日がない状況だった。懲役5年未満(公然わいせつは6ヶ月以下の懲役)の場合、公訴時効は3年だから、2016年の9月末がタイムリミットとなる。であれば、警察は捜査を始める段階で、ないしは容疑を公然わいせつと定めた段階で、無理だと解っていたはずだ。それでも断行したから、何か業界内部の人間でも知らないような決定打を持っているのかと深読みしたのだが、実際は単なるエロ屋に対する見せしめというだけの話だった。そんな事のために数十人もの人間が迷惑を被り、中には名前を晒されたAV女優もいたのだが、果たしてこんなやり方が許されて良いのだろうか。
そこに存在する罪に対して処罰するならば何の文句もないが、罪なきところに罪を作ったり、警察の都合やメンツの為に一般市民を犠牲にするなど、あってはならない事だと理解できないのだろうか。
■弾圧により萎縮を余儀なくされるAV業界
さて、現在AV業界は人権団体らの明らかなデマを含めた喧伝のお陰で、汚名しか与えられていないような状態である。そうした偏りすぎた情報によって世論が形成され、それに乗っかる形で警察が好き放題している。
このような流れに負け、AV業界最大シェアを持つCA(DMM)は、販売する作品の内容を制限すると発表した。ただでさえ海賊版や違法アップロード被害で瀕死の重傷を負っている業界なのに、さらに棚に列べる商品を減らそうというのだから、ますます食えない業界になるだろう。
近頃のAV叩きは、白も黒もごちゃ混ぜにされて「とりあえずAVは悪く言っておけばいい」とされ、警察は平気で人権侵害スレスレの嫌がらせを仕掛け、人権団体らはそんな立場の人間を庇うどころか「いいぞもっとやれ」とばかりに火に油を注ぐ。この図式には狂気しか感じない。平然と行われる差別や弾圧をリアルタイムで目撃させられているのである。
最後に、簡単にここまでの "結果" をまとめておきたい。
※無実・濡れ衣だったもの
・AV出演強要=騒ぎになって以降、強要罪などが成立したケースはない
・児童ポルノ=児童ポルノにあたる作品をAV業界が売っている事実はない
・公然わいせつ=52人全員不起訴
※有罪が確定したもの
・労働者派遣法違反(有害業務)
AV業界に問題がないとは言わないが、いやむしろ問題は山積みだが、それでも人権団体や警察の言い分にはウソが多い事だけは今後も指摘し続けようと思う。
Written by 荒井禎雄
Photo by Republica
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