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なぜ反対か、総括求める声 小牧市の図書館建設、住民投票から1年

 愛知県小牧市の新図書館建設計画の是非を問う住民投票が行われてから4日で1年になる。反対票が過半数を占めたため、新たな計画の策定に向け、市教委は今年4月に図書館建設審議会を設置した。しかし、話し合いは難航。予定されていた中間取りまとめは、まだできていない。そもそも住民投票の総括が必要との指摘があり、先行きは見えてこない。

 投票結果を受け、山下史守朗(しずお)市長は、新図書館の指定管理候補者で設計段階から関わってきたレンタル大手「TSUTAYA(ツタヤ)」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC、東京)との契約を解消。計画を白紙に戻した。

 仕切り直しに立ち上げたのが審議会。市民や有識者ら21人が委員を務め、住民投票のための署名活動をした市民団体「小牧の図書館を考える会」の渡辺育代共同代表も名を連ねる。

 2009年に策定された新図書館建設基本計画を見直しながら議論し、市に答申する予定で、山下市長は「答申内容を尊重して決定していく」(9月市議会)と審議を見守る。

 審議会は図書館の建設場所を協議した7月の第7回から紛糾。委員15人が、市中心部の名鉄小牧駅西側の市有地を挙げて多数派になり、8月の第9回では駅西側を想定して進めることにした。

 しかし、駅西側は当初の建設予定地と同じで、考える会の渡辺共同代表は「もっと市民の声を聞くべきだ」「検討材料が欲しい」と反発。3日に市民の意向調査などを求める要請書を審議会の内野安彦会長に提出する。

 こうした動きに、委員の1人でNPO法人「こまき市民活動ネットワーク」の秦野利基代表理事は「住民投票の総括がされていないから、話が進まない」と嘆く。

 昨年の住民投票は反対が3万2352票、賛成が2万4981票。得票率は反対56%、賛成44%。投票率は50・38%だった。

 だが「建設計画への賛否」だけを問う二者択一で、市民が反対したのは建設場所なのか、CCCなのか、あるいは42億円の建設費なのか、よく分からない。審議会委員の小牧商工会議所の成瀬哲夫会頭は「本当に過半数の人たちが建設場所にも反対したのか」と疑問視する。

 審議会は8月までに10回を重ねた。第10回の審議会で中間取りまとめを出す予定だったが、いつになるのか不透明だ。

 「つながる図書館」(筑摩書房)の著書がある猪谷千香さんは「アンケートなどをして市民の多くがなぜ反対したのか分からないと、新たな計画を立ててもまた同じ轍(てつ)を踏む」と話した。

(中日新聞)

 <小牧市の住民投票> 市は2014年4月、名鉄小牧駅前の活性化と、市立図書館の老朽化のため、駅西側に新図書館を建設することを発表。これに対し、市民団体「小牧の図書館を考える会」は、「市民の声を聞かずに計画を進めている」と反発。昨年8月、新図書館建設計画を白紙に戻すことの是非を問う住民投票条例の制定を求めて、市長に直接請求した。住民投票は同10月にあり、反対が賛成を上回った。

◆新図書館建設を巡る動き

2006年   図書館建設基金を創設

  09年   駅西側の市有地に建設する基本計画を策定

  14年4月 市有地に建設する計画を発表

     6月 建設場所を市有地とし、指定管理者制度を導入する条例改正案を可決

     8月 CCCが将来の指定管理候補者に選定され、市と連携して計画を進めることに

  15年8月 市民団体が建設計画の白紙化の是非を問う住民投票条例の制定を市長に直接請求

     10月 住民投票投開票(4日)

        市がCCCとの契約を解消

     12月 市議会で14年6月に改正した条例を元に戻す議案を可決

  16年2月 臨時議会で新図書館建設審議会を制定する議案を可決

     4月 新図書館建設審議会を設置

当初の建設予定地だった名鉄小牧駅西側の市有地。1995年から暫定的に駐車場になっている=愛知県小牧市中央1で

当初の建設予定地だった名鉄小牧駅西側の市有地。1995年から暫定的に駐車場になっている=愛知県小牧市中央1で

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