在特会側に77万円賠償命令…大阪地裁
インターネット上などの民族差別的なヘイトスピーチで名誉を傷付けられたとして、在日朝鮮人の女性が「在日特権を許さない市民の会(在特会)」と元会長の桜井誠氏(44)に550万円の賠償を求めた訴訟の判決が27日、大阪地裁であった。増森珠美裁判長は一部について「在日朝鮮人への差別を助長、増幅させる意図があった」と認定し、在特会側に77万円の支払いを命じた。双方とも控訴を検討している。
原告はフリーライターの李信恵(リ・シネ)さん(45)。判決によると、李さんはネットニュース上でヘイトスピーチについて批判的な記事を書いた。桜井氏は在特会の会長だった2013〜14年、神戸・三宮での街宣活動で「朝鮮人のババア」と発言したり、ツイッターで「鮮人記者」などと書き込んだりした。
増森裁判長は桜井氏の一部の発言や記述について、「人格権を違法に侵害するもの」と指摘。人種差別の撤廃を求める人種差別撤廃条約の趣旨に反した侮辱行為と結論付けた。
一方、李さんはネット情報の拡散被害による精神的苦痛なども訴えたが、判決はこうしたネット被害には踏み込まなかった。
在特会側は代理人弁護士を通じ、「判決は一方的なもので不当」などとする談話を出した。【向畑泰司】
「価値ある一歩」勝訴の女性
黒色のチマ・チョゴリ姿で判決に臨んだ李さんは大阪市内で記者会見し、「全てが認められず、小さな勝利だが、価値ある一歩だ。差別のない社会を目指し、これからも訴えを積み重ねていきたい」と語った。
ヘイトスピーチの社会問題化を受け、特定の人種や民族への差別解消を掲げた国の対策法が6月に施行されたが、禁止や罰則がない「理念法」でヘイトスピーチ自体を取り締まることはできない。