ネットで「ブラック企業でも三年間は我慢しろ!」なる論が議論になっているようです。新卒で入った会社の場合、すぐに辞めてしまうと新卒というカードが無駄になる、堪え性がないと思われるので損だ、転職先がないぞ等々の意見があるようです。
それをいうのは、経営者だったり、雇われ人(社会人とは、要するに誰かに雇われている奉公人に過ぎないのであります)を何十年もやっている中年や熟年であったり、老人であったりするようです。
しかし、ブラック企業などいても良いことは何もありません。少しでも嫌だと思ったらその日にでも辞めるのが正解です。
経営者や管理者が「すぐ辞めるのは良くない」というのは当たり前です。すぐに辞められてしまうと、次の人を探すのも雇うのも面倒ですし、職場の士気がさがります。誰かが辞めたとなったら、次に「俺も俺も」という人が出てくるのもよくあることです。
辞めたくなる何かがあるからです。
それは安い給料であったり、ボロいオフィスであったり、残業代がつかない無償労働、飲み会が多い、サボってばかりの上司、年功序列等々様々な理由です。会社にやりたいことがない場合もあります。入ってみたらナンカ違ってたということもよくあります。同僚と気が合わないというのもあります。
注意しなければならないのは、経営者や管理者というのは、大抵の場合は自分のことしか考えていないズルい人間だということです。面倒だから「辞めると面倒くさいよ」「行き先ないよ」「せめて基礎的なスキルは身につけようよ」というのです。
彼らは辞めたい人の表情、体調、本当にやりたいこと、周囲との関係、そんなものはみていません。見ているのは自分のボーナスが増えるかどうか、休みを取れるかどうか、面倒くさい作業は他人に投げられるかどうか、会社の株価が上がったかどうか、利益率が高くなったかどうかです。
そもそも管理者や経営者になる人間には、「良い人」はあまりいません。「良い人」だったら、周囲を蹴り落として昇進したり、競合を出し抜いて会社を大きくするようなことはできませんから。「良い人」そうに見える人でも、何らかのずる賢さを持っています。アグレッシブに見えないだけです。
本当に「良い人」は、課長や係長止まりか、万年平社員です。もしくは、どこかで落とし穴にハマって、左遷や転籍などの酷い目に遭っています。
勤め人の皆さんは、偉い経営者の出した本をありがたがって読んだりしていますが、実際に会ってみると、最悪な人柄だったりします。これは芸能人とか各種有名人も同じです。テレビに出ているような人は人格が最悪だったりします。最悪だから競争に勝てるのです。
上司や経営者はチンコ頭様です。お脳には脳みその代わりにチンコ様が入ってるのですから、そんな人間があなたのキャリアプランなぞ考慮しているわけはありません。
中年、熟年、老人が「石の上にも3年。3年は我慢しなさい」というのには理由があります。それは彼らが、世の中のスピードが遅い頃に働き始めた、もしくは現役だったからです。
かつての日本は新卒で会社に入れば、多くの会社ではキャリアプランが約束されていました。メッタなことでは首にならず、長くいればいるほど給料が上がり、定年まで勤め上げれば退職金がもらえ、配属先は会社が考えてくれて、外で売りになる特殊技能、自営になれるような尖った能力がなくても、上司の言うことを忠実に聞いて、いざこざを起こさず、会社の行事には積極的に参加して調和を重視し、休みを取らず、就業後も同僚や上司と無駄話しをしながらヤクルトジョアを飲んでいれば「彼はナンカいい人だよね」と評価される仕組みでした。
ポイントは「ナンカいい」です。感じが良ければ業績評価も何もそんなものは適当にでっち上げてくださいます。
こういう仕組みだと3年我慢には意味がありました。会社の年次のサイクルを学び、3年もいれば周りも慣れてくれて人脈もできるし、まあ辞めなくてもいいかな、という気分になってくるからです。
しかし今やビジネスの環境は数年どころか数ヶ月単位でかわります。日本の職場だって激しいグローバル競争にさらされているので、会社の「計画」だってコロコロかわります。その上少子高齢化ですから、日本の国内市場はお先真っ暗です。作ってりゃ売れるという時代は終わったので、海外との競争だって死にものぐるいです。
何のスキルも身に着けずに3年も雑用をやっていたら、次の仕事はありません。会社が突然リストラをやったり、部署を縮小することだってあります。海外の企業の買収されることもある。その際に、できることは上司の御用聞きだけ、社内では通用する用語や手順はよく知ってます、では困るのは自分です。
連日の長時間無償労働で疲れ果てた頭には、新しい知識も何も入りません。そもそも無理がたたって体も精神も具合が悪くなっています。
気の合わない同僚と顔を突き合わせていたら、体の前に精神がまいってしまいます。頭がダメになった場合、クスリでは簡単に治りません。回復にはそれこそ数年かかり場合もありますし、段々体がダメになってくる場合もあります。
頭痛、腰痛、痔、肩こり、胃の痛み、眠れない、関節が痛い、そういう何となくしっくりこない体の不調は、精神的なストレスが原因の場合が少なくないのです。それが悪化すると、ある日突然脳溢血で倒れたり、血圧がぐんぐん上がります。20代、30代でも珍しくはありません。ストレスは恐ろしいのです。ブラック企業に3年もいたら命を落とすこともあります。
10年後、15年後にツケが来ることもあります。人間の体というのは、身体的にも精神的にも限界というのがあって、それを越えると、必ず壊れるのです。
ちなみに、外国の人はどうかというと、私が知っている限り会社を辞めるスピードが異様に早いのは中国大陸とインドですが、イギリス、イタリア、フランス、スペイン、オランダ、ドイツも嫌な会社はすぐに辞めます。
インドの場合は特に割り切りが凄まじく、数万円でも給料が高い会社のオファーがあると、すぐに辞めます。
私が目撃した最速は入社後1日での退社でした。
「あのね、別の会社、あなたの会社より給料高いから辞めます。バーイ」
会社の都合、同僚がやってくれた歓迎会、おごってもらった無料のランチ、人事や経理の人の手間など関係ありません。同僚になったばかりの人、知り合ったばかりの人、上司になった人などに「どこどこの会社はいくらよ。ベネフィット何ね」と喋りまくっています。
「別の会社給料高いある→別の会社私の評価が良いある→今のこの会社ダメね、なぜならマネー安い→安いはノーグッドよ→サヨナラね」
こういう至極単純な思考回路ですが、言っていることは誠に正しいといえましょう。
我々は自分の技能や「労働時間」を経営者に売っているに過ぎないわけですから、妥当な銭を払わないのは取引終了に過ぎません。
周囲のイギリス人やアメリカ人、中国人はそのインド人を批判するのではなく「そうなんだ!!!良いポジションがあったら紹介してくれよ」「ねえねえ、君が前に働いてたあの会社どうよ。雰囲気とか。企業年金の運用状況どう?」とせっせと情報交換しています。
会社に対する忠誠など一ミリもありません。自分の条件でいくら貰えるか、良いベネフィットを受けられるかどうかの方が遥かに重要です。
日本の勤め人に必要なのは、こういう単純なマインドセットです。
「俺は価値がある→お前を儲けさせてやってんだ→マネーをよこせ→休みをよこせ→よこさないのか?→お前が悪い→辞める」
毎朝、毎晩、鏡に向かってこれを唱えましょう。10日もすれば辞めてやるぜという気分になってきますから、ブラック企業にいる方は今すぐ始めて下さい。辞めたら金に困るという人もいるでしょうが、自分の命と金とどっちが大事か。
命がいらないという人は多くないんじゃないですか?