いたずら1歳やりたい放題 に学ぶUX
こんにちは、久々にブログ記事な渡邊です。先日深津さんが120万円の美しい100徳ナイフを例に、「多機能も過ぎればとなる」を説得手段として紹介していました。
ちょうどそんなとき、弊研究室の学生さんと研究ディスカッションしていたところ、
「いたずら1歳やりたい放題」という製品が話題に上がりました。これです↓早速買いました。
350万人の赤ちゃんが使ったと書かれているくらいですから有名なおもちゃなのだと思います。
母親や父親が使っているものを、自分も触ってみたい!という乳幼児の日々のいたずらを、
そんなイタズラ心を満たしてあげよう、というおもちゃです。
製品やAmazonの紹介ページや引用するとなんと12種類の機能(インタフェース)が大集結しています。
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思わず目がいく、手が出る、身の回りの実用品そっくりないたずらアイテムが大集合!
これなら、「だめ!」を言わずに、のびのび育児。
動く、光る、話しかける、音がする!NEWアイテム追加でさらに赤ちゃん興味シンシン!
●(NEW)スライド式携帯電話 : ボタンを押すと、着メロ、呼び出し音、おしゃべり。折り曲げてもパカッ!っと、パーツが外れるから、これなら壊れず安心。本体から取り外して遊べます。
●(NEW)地デジテレビ : お家の液晶テレビをバンバン叩くならコチラ。叩くとピカ!テレビ番組そっくりのおしゃべりやメロディも流れます。
●(NEW)DVDトレイ : ボタンを押すとDVDトレイがとびだします。
●ティッシュペーパー
●マヨネーズ
●蛇口
●コンセント
●ママのメガネ
●ドアとカギ
●ドアピンポン
●パーカーのひも
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実際に触ってみましたがよくできています。音もその時々で変ったりします。赤ちゃん好奇心、体験が詰まっています。
赤ちゃんはお母さんお父さんなどの家族がやっているインタラクションに興味津々なんだということがわかります。
もちろん赤ちゃんは、それが何であるかわからないので、その好奇心を実際に実行されてしまうと、お母さんは困ってしまうわけですが、このいたずら1歳やりたい放題があればもう安心ですね!
しかもこの製品、DVDトレイや地デジテレビ、携帯電話など、その時代にあるインタラクションやインタフェースにアップデートしているのも衝撃です。たしかに昔のテレビのツマミを出しても、お母さんの真似にならないから好奇心は満たされないですよね。
さて、この製品の上部にはお茶の水女子大学の教授のコメントが掲載されています。
ちょっと設計の観点に翻訳してみましょう。
クライアントの要求にお困りのデザイナーさん、
クライアントの要求は、知的好奇心の現れて、クライアントの発達に必要であることがわかってきています。
炎上プロジェクトが始動する前に
炎上プロジェクトそっくりなおもちゃで替わりに
何なんだこれ、価値わからん、やばい、を思う存分満たしてあげましょう。
「いたずら1歳やりたい放題 」に学ぶUX
さて、1才児むけならいいとして、こんな機能がたくさんある製品価値はなんでしょう?
価値の定義ができないですよね。
多機能にすると「何であるか=定義」が不明になります。
機能があることが価値か思ってしまいがちですが、そうではないのです。
これはおもちゃで、1歳のやりたい放題を満たすものです。
それはまっとうしていますから、こどもへのUXは完璧かもしれません。
この場合はやりたい放題を満たすことが製品価値です(追記)
でも御社がつくる製品は、何であるかの製品価値、UXが重要です。
必ずしも多機能がそれを実現しないということです。
というわけで、
「いたずらクライアントやりたい放題」にならないよう、
我々インタフェース、インタラクションデザインの研究室を運営する私も
こうあえて、このおもちゃを自腹購入し、情報発信するのです。
(追記)
今回の記事は、一般的にアプリや家電は、1歳を対象としているわけじゃないのだから、製品に機能を盛り込みすぎると、多機能の塊で、何をする道具なのかわからなくなるよという話をしたいだけですので誤解のないよう。
ちなみに、多機能という問題については間もなく販売する「消極性デザイン宣言 ―消極的な人よ、声を上げよ。……いや、上げなくてよい。」で私の章「モチベーションのインタラクションデザイン」で多機能の問題について述べていますのでこちらもぜひ。