金曜日はこの連載、
まだ0歳のうちの息子に将来やらせてみたいゲームをやらせてみたい時期、理由を含めて紹介していく企画です。勉強になったゲーム、親子関係の描かれているゲームなどを親子の視点から改めて考えます。
今回は先週の土曜日に雑に触れてしまった「ベルデセルバ戦記」です。
価格:617円(税込)
メーカー:ソニー・コンピュータエンターテイメント
プレイして欲しい時期:12歳頃
先週の土曜日は時間が取れずに中途半端な書き方になってしまったので、改めてベルデセルバ戦記について書きたいと思います。ベルデセルバ戦記は魅力と野心の詰まったゲームで、後述しますがこれは例えでは無く本当に息子と一緒にやってみたい作品の一つです。
ベルデセルバ戦記は弟が誕生日プレゼントか何かで買って貰ったゲームで自主的に買ったわけでは無かったので当初、チェックも期待もしていなかったかと思います。しかし、結果から言えばかなりハマって、何周かプレイする事になりました。
ゆったりとした独特の飛行船の浮遊感、秀逸なデザイン、複雑だがそれでもかなり分かりやすく描かれる政治ドラマ、経済面も描いた戦争描写など、ベルデセルバ戦記はそれぞれの統一感が取れていてキレイに纏まった一作だと考えます。
独特な空戦と浮遊感
物語は宇宙を航行している主人公ミサキが惑星ベルデセルバに不時着するところから始まります。ベルデセルバは3つの大きい勢力による戦争が発生していて、この戦争を終結へ導くのがゲームの目的となります。
3大勢力の主力兵器は飛行船で、空戦がメインの戦い方となります。戦車、車はゲーム中には登場しなかった気がするので、ベルデセルバでの飛行船はそれらの役割を肩代わりしたものだと言えるでしょう。
ゲームは話を進めたり、装備を買ったり、貿易したりするRPGパートと飛行船による空戦を繰り返していくという流れです。中盤で大きな分岐があり、軍人を続けるか、空賊になって第4勢力として戦うかの分岐があります。使えるメンバー、手に入る飛行船、貿易で稼ぐか支給品で凌ぐか等の差はありますが、最終的に戦争を止めるという目的自体は変わりません。エンディングも基本的には軍隊編、空賊編供にほぼ一緒ですが、オススメは軍隊編ですね。軍隊編は本当のエンディング間際の展開が空賊編とは異なっていて、ある親子の会話が発生するのですが、恐らく軍隊編が本筋である事を予感させる展開になっております。途中の展開も仲間の投獄、自軍の分裂など軍隊編の方がややハードだった気がします。
ベルデセルバ戦記が発売された1997年春は丁度エースコンバット2の発売時期と重なっており、世間的にエースコンバットの方が受けたのは後のシリーズ展開を考えると明らかです。しかし、ベルデセルバ戦記の飛行船にはエースコンバットの戦闘機には無いゆったりとした浮遊感があり、船を大勢の人達で動かしているという感覚も味うことが出来ました。ベルデセルバ戦記では仲間にしたキャラクターを砲手、操舵手などに割り振って船のパラメータを上げられます。また当時どれだけの人がこういう遊び方をしていたかは分かりませんが、実はこの空戦パートは実際に2人プレイが可能です。私は操舵手、弟は砲手としてお互いに意思の疎通を取りながら戦う様はまさに「船を動かす」という感じがしてとても楽しかった記憶があります。2人だとお互い自分の操作に集中出来るので多少無茶な戦い方もできるというメリットもありました。
これが、前述した本当に息子と一緒にプレイしてみたい理由です。実際どうなるかなんて今は想像出来ませんがいつか本当にやってみたら楽しいだろうなあと想像しています。
「天空の城ラピュタ」の影響を強く受けているようで、全体的なアートワークはラピュタやナウシカなどを彷彿とさせます。飛行船だけでなく、もちろん飛行島も登場します。
こういった世界観の中での空戦を味わえる作品はかなり貴重です。
ミサキが元々いた星の話など続編への含みも残しているので、今でも一定数続編を待ち望む声はあるようです。発売から20年が経とうとしている現在、続編への希望は望みは薄いですが、もし発売されたら必ずやってみたいです。
政治ドラマ入門として
ベルデセルバ戦記は3大勢力の覇権争いの話です。
宇宙から移民して来て圧倒的な科学力で一度は原住民を制圧したが、400年の間に衰退したノイパスク。ベルデセルバの原住民で、一度制圧されたノイパスクからの独立を保つギタン軍。同じく原住民だが、ノイパスクと同盟を結ぶム連邦。そして永世中立国のオルダナスピ。
それぞれの考えが複雑に交錯して時には内乱、また別の時には同盟関係の破綻が起こるなど情勢がゲームを進めるごとに大きく変化していきます。この辺りの情勢の変化にはダイナミズムが感じられて歴史物が好きな方だと、とても楽しめる展開になっているかと思います。特にノイパスクがそのまま衰退していくのか、それとも再び持ち直すのかというあたりは個人的にとても気になってゲームを進めるモチベーションになりました。
SFでは良くあるような設定、展開ではあるので過度な期待は禁物ですが、政治ドラマとしては比較的わかりやすい展開なので、政治ドラマを読み解く入門にもちょうどよいゲームだと思います。
一方、異星から来た主人公ミサキは国家、立場に関わらず誰にでも同じ態度で接していきます。結果、その時々に合わせて所属する国家を転々と変えて行きます。
国家のダイナミズムと主人公のそれを無視して行動するギャップとがこれもなかなか面白いところです。大きいところを動かすのは案外小さいものからだと言われているような気がしました。
このようなやり取りを理解できるのが12歳頃からでは無いかという思いから今回はプレイして欲しい年を12歳に設定しました。
語感の良いネーミングセンス
このゲームの特徴として今まで色々と書いてきました。
デザインの良さについては既に書きましたが、やはりこれも書かなければ!と思ったのがネーミングセンスの事です。
登場人物や地名を適当に列挙していくと、
ガルガナーク、アハデ・カフィ、ミデーレキタサ、カシザキノ、ダ・クダ、オルダナスピ、オユ・キクル、ハウエズナ等々。
何故か発声し易く、記憶に残るものが多いです。
ファンタジー世界の固有名詞は制作者のセンスが良く出る部分だと思うのですが、個人的にベルデセルバ戦記のネーミングセンスはとても良いものに感じます。
例えばオユ・キクルだったら「お雪(人名)来る」みたいな2単語くらいに分解できるのも、もしかしたら計算して名付けられたりしているのでしょうか。
私には知識不足でこのネーミングセンスの良さをうまく説明は出来ません。
ただ、数あるゲームの中でもかなり記憶に残る語感である事だけは確かでした。
以上、ベルデセルバ戦記編でした。
正直、プレイしていて作りの粗さが無いわけではありません。空戦がもっと多くても良かったとか、他の町への移動が煩わしいとか、ストーリーの練り込みとか細かく上げれば色々あります。
しかし、間違いなくゲームでこの世界観を表現しようとしたのはかなりの冒険であり、今現在もかなり貴重なゲームである事は間違いありません。
ゲームアーカイブスで今なら気軽に手に入るので、この世界観に触れてみたい方は是非プレイしてみて下さいね。L2R2を駆使するゲームなので、PS3もしくはPSVitaTVでのプレイをオススメします。
このコーナーも次回からは不定期更新となります。
よろしくお願いいたします。