怪我をしたら出血しますよね。でも小さな傷であれば、放っておけばそのうちに止まってしまいます。それは血液の中に、血液を固めてしまうタンパク質が存在するからなのです。ですがもし体内で血液が固まってしまったら、心臓病や脳卒中など大変なことになってしまいます。最近になって、そんな血液凝固が微生物のせいで起こっているかもしれないと報告されました。
Thrombin:トロンビン
トロンビンとは血液内に含まれる酵素である。
このトロンビンはフィブリノーゲンというタンパク質を切断することにより、フィブリンというタンパク質を作り出し、血液を凝固させる。
またこのトロンビン自体も血液中では、プロトロンビンと呼ばれる状態で存在し、凝固第V因子と呼ばれるタンパク質により、活性化される。
血液凝固自体は出血した際、出血量を抑えるために必要な生体機能の一つだが、それが体内で起こってしまうと微細な血管に詰まりを起こしてしまったり、大きな血管の壁にへばりつき血流を阻害してしまうことがある。
血流が阻害されることは、エコノミー症候群だったり、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞といった疾患を招くことになる。
血液凝固を防ぎたい場合には、トロンビンの機能を阻害するアンチトロンピンを投与したり、逆に怪我などでの出血を抑えたい時にはトロンビンを投与したりする。
微生物の細胞壁が血液を凝固させる?!
マンチェスター大学の研究チームは、微生物の細胞壁に含まれる成分が血液内のタンパク質凝固に関連している可能性を得た。
研究チームは血液や血液の成分である血漿に微生物の細胞壁の成分の一種であるリポ多糖を加えると血液が凝固することを見出した。
リポ多糖というのは、微生物の細胞壁の外側に突き出た毛のような構成成分であり、脂質と糖からできているものだ。
もちろん血液や血漿に血液凝固因子であるトロンビンを加えた場合でも凝固するのだが、その際にはスパゲッティ状の凝集物が見られる。
しかしリポ多糖を血液や血漿に加えた際には、スパゲッティ状とは異なる濃く堆積するようなファイバー状の異質な沈殿となった。
アルツハイマー病、パーキンソン病…
今回の研究では微生物の細胞壁が血液を凝固させるということで、微生物感染により引き起こされるものだと考えがちだが、研究チームは異なる考えをもっている。
それは微生物感染ではない、だがタンパク質が凝集したり、機能を失って起こる病気も同じような仕組みで起こっているのではないかと考えているのだ。
例えばアミロイドβというタンパク質が凝固して起こると考えられているアルツハイマー病やドーパミン分泌細胞が変性することに起こるパーキンソン病、自分の身体を免疫システムが攻撃してしまうリウマチ、体内での血液の凝固による起こる卒中、糖尿病などにも関連していると考えているのだ。
微生物により起こる異常な血液凝固。
このシステムが完全に解明されれば、新しい治療薬の開発などに貢献できるかもしれない。
血液というのは、通常無菌な状態を保たれています。つまりなかなか微生物と接触する機会がないわけです。今回の研究結果は、微生物と血液が出会うと凝固してしまうというものでした。血液に微生物がいないのであれば、血液凝固と関係ないんじゃないかとも思えるのですが、血管だって完璧なわけではありません。ちょっとだけ微生物が入り込んで、すぐに免疫システムに除去されるという状況だって考えられます。
むしろその状況の方が話的にすっきりするような気がします。もし微生物が常時血液中にいる状態になってしまったら、いたるところで血液が凝固し、塞栓を起こしてしまうと考えられます。ですが全く血液に入りこまないのであれば、原因にはなりえません。その中間、ちょっとだけ入り込むけど、すぐに取り除かれるであれば、微生物が入り込んだところの血液が固まり、血管の壁にくっつくことで、詰まりの起点となるとイメージできます。
彼らの論文を読んだわけではないので、彼らがどのように推測しているかは分かりませんが、微生物と血液凝固の関係、もしかしたら医学的に大きな発見となるのかもしれません。今後の進展に期待したいと思います。
元記事はこちら(Scientists discover link between bacteria and supposedly non-infectious diseases)