五輪会場計画見直し 小池知事 提案実現に向け取り組み

五輪会場計画見直し 小池知事 提案実現に向け取り組み
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東京都の小池知事は、オリンピックの予算などを検証している都の調査チームが、競技会場を都外の施設へ変更するなど計画の大幅な見直しを提案したことを受けて、ボートやカヌーの会場をめぐり宮城県の村井知事と会談するなど調整を始めていて、提案の実現に向けた取り組みを進めることにしています。
東京オリンピック・パラリンピックの予算などを検証している都の調査チームは29日、開催費用を独自に推計した結果、3兆円を超えるとしたうえで、コスト削減に向け、都内に整備する予定の3つの競技会場を都外の施設に変更するなど、計画の大幅な見直しを提案しました。

これについて小池知事はNHKのインタビューで、「ロンドン大会でも2年前に計画が覆った例もある。IOC=国際オリンピック委員会などが錦の御旗になっているときもあり、信頼を失わない範囲でトライする価値はある」と述べ、提案の実現に向けて努力する考えを示しました。

具体的には、調査チームが、ボートやカヌーの会場の変更先として提案しているボート場がある宮城県の村井知事と今月中旬に会談して調整を始めているほか、来週には国際ボート連盟の会長と面会し、調査チームの提案について可能性を探ることにしています。

また、水泳の会場では、江東区のアクアティクスセンターの座席数を減らして建設するなどの対応を模索するほか、バレーボールなどの会場では首都圏にある既存のアリーナ施設を拡張するなどして活用できないか検討することにしています。
小池知事は、ほかの自治体や関係団体などとの調整を行い、提案の実現に向けた取り組みを進めることにしています。

調査チームの推計 ロンドン大会を参考

東京都の調査チームは、3兆円を超えるとしている開催費用の推計は2012年のロンドン大会を参考にしています。
ロンドン大会は招致の段階で開催費用を7500億円としていましたが、施設の整備費は本体工事のみしか計上していないことに加え、開催までの準備期間に物価が上昇するなど状況が変化したことで、実際には当初の3倍近い2兆1000億円となりました。

東京都も当初、開催費用を7340億円としていましたが、調査チームは「ロンドン大会と同様に、増えるのは当然だ」としています。
調査チームでは、メインスタジアムとなる新国立競技場や選手村も含む施設の整備費は7600億円余りと推計しています。これにロンドン大会から推計した警備や輸送などの大会運営費が1兆2000億円から1兆6000億円かかると見込んでいて、この段階で2兆円余りに上る計算です。
それをさらに上回る3兆円を超える推計としたのは、「都や組織委員会の予算管理の甘さなどで上昇するおそれがあるため」などとしています。

開催費用増加は「五輪特有の構造的問題」

報告書では、開催費用が当初の想定より大幅に増加することについて、オリンピック特有の構造的な問題があると指摘しています。
開催費用について、東京都は3年前の平成25年、IOC=国際オリンピック委員会に提出した大会計画「立候補ファイル」で7340億円としています。
しかし、この見積もりは大会の開催に必要なすべての費用が含まれておらず、例えば施設の整備では建物の本体工事費のみが計上されているということです。

こうした見積もりはIOCが求めていて、当時、東京と招致を争ったライバル都市も同じ考え方で開催費用を算出していたということです。
また、警備や輸送など大会の運営費についても基礎的な経費しか盛り込まれず、実際の開催費用は初めから大幅に膨らむ構造になっていたとしています。
こうした構造について、調査チームは、国際的な招致レースを戦ううえでやむをえない面があったとしていますが、大会の招致決定後、コストを抑制させるための検討が十分になされたとは言えず、問題が深刻化したと指摘しています。

報告書 関係組織の連携の在り方も指摘

報告書では、関係する組織の連携の在り方についても指摘しています。
この中で、恒久的な施設の整備などを担当する東京都と、仮設施設などを担当する大会組織委員会の関係について、それぞれの組織が別々に立てた予算を持ち寄るという今のやり方では、際限なく費用が増えてしまうことや、大会後に残すレガシー=遺産についても、別々にプランを立てて、統制がとれていないうえに具体性や魅力に欠けているといった問題点があるとしています。
そのうえで、開催計画や予算などについて都や国が一元的に管理する仕組みが必要で、現在、大会の準備について関係機関で協議している「調整会議」では不十分だとしています。
また、都が組織委員会に出資していることを踏まえ、指導と監督を強化し、積極的な情報公開をしていくことも必要だとしています。