• 初心

【初心】貴方の武器、私の武器

マスター:奈華里

このシナリオは2日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
LV1~LV20
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2016/09/13 22:00
完成日
2016/09/24 02:09

オープニング

「おうおう、それは物騒な話だなぁ」
 フマーレのとある工房にて、ギア=ルキウスがその話を聞いたのは今朝の事だ。
「まぁ、今のところ襲撃されちゃいないが妙な動きをしてやがるらしくてな。手配すべきか悩んでいる」
 そうして、現在は昼。工房の職人達が集まって食事する中で工房長が皆に意見を問う。
「本当に狙っているかは判らないんでしょう? 触らぬ神に祟りなしって言うし」
 一人の職人がそう言葉する。
「でも、もし襲う気があるのだとしたらいずれやられるわけだろう? だったら、あっちに気付かれていない今のうちにやっといた方がよくないか?」
 そういうのは腕っ節の強そうな男だ。
「なあ、ギアならどうするね?」
 そこで話を振られて、ギアは正直思案した。
(リザードマンって確かトカゲの親戚みたいなやつだったような…)
 話の中心にあるのは数体のリザードマン――彼等が最近街道にある林の中で度々目撃されているらしい。
 今のところ人間への被害はないようなのだが、その林は支給品となる武器の輸送路になっている為いつ襲われるかも判らないし、旅人らの馬車も行き来する主要道でもあるから困ったものである。
「やっぱり先手必勝でしょうか」
 ぼんやりと敵の姿を想像しつつ、彼が答える。
「でも奴らも武器はもともと持ってんだろ。追加で奪ったりするもんか?」
 リザードマンとて腕は二本だ。
 タコやイカのように腕が多い訳ではないから、それ以上得物があったとしても不要ではないかと考える。
 であるとすると、そんなものを手に入れる為に彼等はわざわざ狙ってくるとは考えにくいが…。
(無駄にあっても意味ないですし、いいものがあればそれだけで…って、あ)
「ちょっと待ってください…今なんて言いました?」
 ふと脳裏に引っかかるものを感じてギアが問い返す。
「追加で奪ったりするものかって」
「いえ、その前です」
「奴らも元々武器を持ってる」
「それだ!」
 そこでギアが突如立ち上がる。
「どうした?」
 それに首をかしげる仲間達だが、彼の目にはもうそれは映っていない。
「工房長、そのリザードマン達をぜひとも討伐しましょう。もしかしたら、いいヒントを得られるかもしれない。僕らの作っている武器と何処か違う所があれば、次に生かして更なる強い武器が作れるじゃあないですか!」
 歪虚の事だ。人間とは違う感覚を持っているとしたら、手持ちの武器も多少違うかもしれない。
「お前、本当馬鹿だなぁ…もうそんなのとっくの昔に回収されて研究されてんだろ?」
 先輩職人が呆れ混じりに言う。
「かもしれません。でも、敵も進化しているとしたら? 定期的に調査してもいいのでは?」
 ギアが負けじと主張する。
「わかった。まあ、事故は未然に防げだ。ハンターオフィスに掛け合ってみるぜ」
 工房長が彼の熱意に負けて、この件を報告し討伐依頼を立ち上げてくれるよう申請に向かう。
「僕も同行します。生の戦場を見てみたいですし、言い出したのは僕ですから」
 ギアもそう言って、この依頼に同行する事になるのだった。

プレイング

ケイジ・フィーリ(ka1199
人間(蒼)|15才|男性|機導師
▲準備と追跡
荷車を借りるときに目立つ色の塗料の調達もギアさんに頼む
調達してもらえたら敵の武器を調査したい彼の為に武器の回収を約束

塗料は自分で使う分を数本の空き瓶へ移し替えて携帯
残りは荷車へ

荷車を停めたらショットアンカーを付近の木の枝に引っ掛け樹上へ
敵の視線より高い場所へ陣取り見張り
敵接近はトランシーバーで知らせる

敵はあえて逃がし住処まで追跡、残党まで殲滅
「よし、作戦通り!」
地面等に残った塗料も追跡に活用
追跡時はアムユスと一緒に行動、トランシーバーで連絡役担当
住処の場所を迅速に絞り込むため、各自の得た情報はまとめて仲間へ伝え情報共有

▲戦闘
包囲の警戒、樹上からの攻撃で撹乱する
ギアさんへ近づく敵と杖持ちを【機導砲】で攻撃
位置がばれたら【ジェットブーツ】で別の木へ飛び移り、包囲警戒と撹乱を続ける

敵が不利になって浮足立ったのを見計らい
塗料入り瓶を全て敵頭上へ放りショットアンカーで粉砕、足元まで塗料コーティング
「へへっ、どうだ!まだやるか?」

追跡後は増援を警戒
ギアさんに気を配りつつ、手が空いたら仲間が狙う敵を【機導砲】で追撃
洞窟では増援警戒の為最後尾へ

▲その他
ギアさんの安全が最優先
彼や彼を守る人への攻撃は【防御障壁】で防御する

殲滅後は敵住処を調べ武器をいくつか持ち帰る
ギアさんの作る武器に興味津々
準備のお礼兼ねて協力は惜しまない
家業の鍛冶屋を手伝った経験から人間の武器にはない特徴をもつ物を見繕う
西空 晴香(ka4087
人間(蒼)|18才|女性|疾影士
「武器が違うっつっても連中使うのって原始的なのじゃねぇの?」

【目的】
リザードマンの討伐
とは言え上記の台詞のようにそこまで研究が進むような差異はないと考えている。


事前に囮用の馬車を用意する際に、壊れても良いような荷車を用意してもらう。

隠の徒を使用し隠れながら馬車の後方から監視。
双眼鏡を用いて周囲を警戒。
リザートマンを発見次第荷台の見方にトランシーバで連絡。
荷台組が接敵次第参戦。
部位狙いで腕部を狙い、敵が武器を落とすのを狙う。
「関節は誰であっても弱点だからなぁ!!」
あくまで倒さず味方がマーキングを終わらせるまで時間を稼ぎ、撤退させる。

敵撤退後は犬による臭いをたどっての追跡に参加。
この時も隠の徒を使用。
場所を発見次第別方向に行っていた味方にトランシーバで連絡。
ある程度揃い次第攻撃開始。(発煙手榴弾を投擲できる状況ならば投擲して炙り出す
同じく徹底的に関節を折る、砕く、へし折るのいずれかを徹底し狙う。
「爬虫類は纏めて関節粉砕の刑で決定なー。」
藤堂 小夏(ka5489
人間(蒼)|22才|女性|闘狩人
アドリブ・連携大歓迎!

リザードマンね
強いイメージはないけど油断せずに戦わないとね



囮を準備してもらって、敵をおびき寄せる
私は敵が来るまで、隠れながら周囲を警戒してようかな
敵を見つけたら皆に連絡だね

私が隠れているのに気づかないで、敵が囮を襲ったら背後から全スキル使用で奇襲してみようかな
「後ろから失礼するよ」
無理なら普通に応戦

戦闘では連携を重視して戦かって、スキルは攻めの構えしか使わないよ
囮になるべく敵を近づけさせないよう頑張るかな、ギアも居るしね
全ての敵を倒さないようにして、敵の武器も出来るだけ傷つけないようにするよ

敵が逃げそうならわざと逃がすけど、その前に酒を浴びせておくよ
「振っておいた缶ビールを受けてみなよ、たぶん美味しいよ」
余裕があればおまけで塗料も使う
んで、酒の匂いと塗料を目印に追跡だね

追跡は皆と離れて別方向から追跡するよ
集団で動いたらばれるかもだしね
連絡も怠らないよ
慎重に追跡して、見つからないように行動
双眼鏡も使って敵を見失わないようにもしなきゃね
酒の匂いや塗料の目印も利用して、足跡とかも確認しとくよ

洞窟に着いて、ある程度の人数が揃ったら行動開始かな
入り口に敵がいなくて余裕があったら、葉っぱとか燃やして煙攻めしてやろうかな
燃やせる物がないなら発煙手榴弾使うしかないね

煙攻めの後、洞窟入って全スキル使用で敵を殲滅するよ
敵を逃したらすぐに後続の皆に連絡だね
殲滅後、洞窟も探索しとくよ
墨城 緋景(ka5753
鬼|20才|男性|符術師
「よぉし、さっさと討伐して賞金がっぽがっぽだー」

■役割
馬車の馭者
ギア君の護衛

■初動
囮として幌馬車の貸出交渉し追跡時用の酒や塗料を積載
「武装したハンターが徒歩で…って明らかに怪しいでしょ?」

ギア君は馬車の中で待機させ
戦闘開始時は自由に行動させるも自身が盾になる形で護衛

集中攻撃を受けている仲間は瑞鳥符で援護

■追跡
鎧で武装しているためギア君と共に後続
酒の匂いを犬に追わせ
トランシーバーで随時連絡
「ふふん、ただ武器を打ち合うだけが戦場じゃないんだよ」と
隠れきれてないのにちょっとドヤ顔して戦略を説いてみたり

先行隊の連絡次第では進路を逸れ風雷陣で残党撃破を

■洞穴
煙で炙りだされて出てきた敵を風雷陣で攻撃しつつギア君の護衛
「どう、どう? 生の戦場の感じ」
とあくまであっけらかんと感想を聞く

研究材料の武器はなるべく原型を留める様に注意
突出し狙われた仲間には瑞鳥符

煙が使用できない場合
光源を持つ仲間後方にて行動
不意打ちも考慮しギア君は常に自分の近くに
犬も同行させ匂いでの感知も試みる

狭い洞穴内で戦闘になった時は壁を背にし
ギア君は自身の背中から戦場を見てもらう
戦闘内容は上記に同じ
仲間への誤射に気を付けつつ隙の出来た敵にドローアクション+風雷陣
逃走はさせないマン
「おっと出口は封鎖中だよ!」

奥に盗品等あれば一緒に持ち帰る
高価な物があれば自身の懐に…
「武器じゃないからちょっと位…だめかぁーそうだよねー」
多々良 莢(ka6065
人間(紅)|18才|女性|舞刀士
「さーて、今日も元気にお仕事しなきゃだねー。……よし、行くよ」
働きたくない怠け者から仕仕事スイッチをオンに

リザードマンが出現する場所へ移動し、リザードマンををおびき出す囮として馬車や荷台などを準備
準備後は馬車の中に隠れて、リザードマンの出現を大人しく待つ
リザードマンをおびき出すことに成功したら、馬車から飛び出し応戦する
「やっと来たねー待ちくたびれたよ。適当に叩かせてもらうよ」
待機中に納刀の構えを使用し、開戦と同時に先頭にいるリザードマンへ居合を使用
リザードマンが全滅しない様気を配りながら戦う
「殲滅は殲滅で大変だけど……倒さないように残しておくのも神経使って大変だね…」
ある程度数が減ったら自分からは仕掛けに行かないようにし、リザードマンたちに退路ができる様に位置取りをする

「やっと逃げたかな…?それじゃあ次は追跡だね」
リザードマンが逃げたことを確認したら馬車に乗り込み追跡
リザードマンの住処全員が到着したら攻撃開始
「しっかり片付けてさっさと帰るよ」
洞窟の外でリザードマンが散らない様包囲網を敷きつつ攻撃
包囲を突破し逃げようとする個体がいれば疾風剣を使用し背後から切り捨てる
住処から出てこなくなったら、住処内部に突入
内部に残っている残党を処理
住処内ではハンディライトなおっで光源を確保
後衛の射線を確保し、出過ぎないようにする

依頼終了後にマテリアルヒーリングを使用し、生命力を回復しておく
不和 百(ka6431
人間(紅)|18才|女性|格闘士
【心情】
 「一般人に被害を…見過ごすわけにはいかないネ。それに、莢もいるし…な、莢?」

【目的】
 依頼を解決する為、リザードマンの撃退及び殲滅
 莢との依頼でうきうき
【準備】
 多々良 莢 (ka6065) との連携プレイを考えている 準備するものは個人的には無い
 荷車の後ろに乗り、他の人と一緒にリザードマンをおびき寄せる
 リザードマンが見えたら、練気を掛け、準備をおこなう
 ※莢と連携できる場合
  連携出来る場合は、莢が真正面でリザードマンを捉えている時に、横から爪で引き裂くように動く
  なるべく奇襲を仕掛けるため、リザードマンとはあまり交戦せずに、莢の動向をじっと伺う
  「横ががら空きだヨ。戦術の基本がなっちゃいないネ。」
  脇腹、首を引き裂き なるべく致命傷になるように深く深くえぐる
 ※できない場合
  他の人の横から援護するように、または金剛を使い 正面から受け止め囮として動く
  「ふん、私は囮だヨ。前しか見ないからそうなるんだヨ。」

 殲滅戦も、他のハンターが動きやすいよう、仕掛けを作りやすいように陽動するように動く
  「ほらほら、こっちこっち、こっちだヨ。獣どモ。」

 終わったら、莢の方を見ながら微笑み 安堵する
 「ふふっ、今日も無事だったネ。莢は私が守るからネ。」
アムユス(ka6465
鬼|13才|男性|霊闘士
・心情
初依頼でとても緊張。
「…緊張する…でも…ワクワクする」(独り言)

・目的
リザードマン討伐、武器の回収を目的として参加。
PC自身は、人の役に立つ事。人との交流を目的に参加。

・準備
緊張し真顔で打ち合わせ参加。
資金不足でトランシーバーが買えず頭を抱えていた所、ケイジに誘われる。(目を輝かせ「ありがとうございます!」と言っている)
同時に墨城からトランシーバーを頂く。(今回は不携帯)
その事に驚き、非常に感謝している。また、墨城に「角友」と言ってもらった事を非常に喜んでいる。

洞窟へ行くこと、武具回収に備えランタン、ロープを準備。
作戦があれば事前に打ち合わせ、協力で応える。

・行動
準備時のケイジの誘いに、木の上から目標の見張り、追跡する事に改めて自分からもお願いし、同行。(ケイジの携帯するトランシーバーで連絡を聴く為と、依頼経験者と行動を共にし、勉強したいと考えている。)
狼のお面装備。森で生活してきた為、林の中でも動きが素早く、感覚も鋭い。森での生活に必須である縄を使うのも上手い。

戦闘ではケイジを援護等し、装備・スキルなどを駆使、負傷、攻撃回避に注意して戦う。
緊張&集中の為無口「うん!」等返事有
期を見て対象の武器を素早くロープに括り付けて回収。(出来ればリーダー各が持っている物)後、ギルへ渡す。
無事終わった後は、守神様やお世話になった人々に感謝する。美味しいご飯、食べたい…等呟く。
久延毘 羽々姫(ka6474
人間(蒼)|19才|女性|格闘士
「リザードマン、ねえ…あたしが転移する前に起きた…ええと、北伐だっけ?」
「そんな名前の戦いで暴れてた奴だってのは聞いたけど…実際に見るのは初めてだなあ」
「それもあるんだけど、今回はあたしが初めて人から受ける依頼でもある。気を引き締めて掛からなきゃな!」

・目的
リザードマンの掃討

・行動
さて、全滅させなきゃいけないとなると、奴らの巣穴も特定しなきゃな。
まずは出没地域に囮の馬車や荷車なんかを置いてリザードマンを誘い出して戦闘する。
やってきたリザードマンと戦闘するんだけど、ここでは全部倒さずに逃がす。
逃げた奴の後を追ってリザードマンの住処を探し、そこで一網打尽って寸法だ。

あたしはリザードマンが来るまで馬車の中に待機。来たら戦闘に移るよ。
あ、あと奴らが逃げようとしたなら、車に積んである予定の塗料や酒なんかを思いっ切りぶっ掛けて、手掛かりにしてやろう。
追跡中は先行中の人達と通信機で連絡を取合いながら後をついてく。

「こ、来ないで…! …なーんて、弱そうな女の子だと思った?」
「残念!お淑やかなんて言葉は似合わない事くらい、自分でも分かってるんだよ!」

・戦闘
基本はこの両手での近接戦闘…と言うか、あたしにゃそれしかできないか。
バトラーで殴り、パリィでいなす。相手があたしの攻めや受けで体勢を崩したりした場合は螺旋突を食らわせる。
間合外の敵は気功波で牽制するよ。あと体力がヤバくなったらマテリアルヒールだね。

リプレイ本文

●初陣
 アジトの場所の予測はついている。数はそこそこ判明している。
 そこでこの討伐はハンターオフィス公認のルーキー向け依頼として卓に上がる事となった。しかし、ルーキー向けとて油断はできない。なめてかかれば敵は容赦なくこちらを殺しにかかってくる。けれど、そんな事は百も承知で集まったハンターらは入念に打ち合わせを開始する。
「まずは荷車が必要だな。極力壊れてもいいやつがいいと思う」
 鮫を思わせる歯を見せて西空 晴香(ka4087)が言う。
「出来れば瓶と塗料も欲しいのですが用意できるでしょうか?」
 とこれはケイジ・フィーリ(ka1199)だ。
 昔の記憶を失くしているが、そんな素振りは微塵も見せず真剣な表情で問う。
 そんなハンターらとギアが動くのはこれで二度目だった。戦闘が絡まないものを含めれば別だが、改めて仕事モードに入った彼らの表情を見て、受ける印象の違いに感動する。
(やっぱり凄いですね…)
 自分より年下の者であってもれっきとしたハンターの目をしていて、ギアは一時彼らの話す姿に見惚れてしまう。
「おーい、聞いてっか~?」
 そんな彼の様子に気付いて久延毘 羽々姫(ka6474)が彼の前で手をパタパタ。
「あっ、すみません…えと、何でしたっけ?」
「戦場ではそういうの無しでお願いネ」
 ぼーとしていた彼に金髪の不和 百(ka6431)が釘を刺す。
「瓶と塗料、用意できますか?」
 ケイジがもう一度そう問えば、今度はしっかりと頷きギアは早速工房に戻り準備に入る。
「本当大丈夫かな…」
 その後ろ姿を見送って表情を変えぬまま、黒髪の藤堂 小夏(ka5489)が呟く。
「いざとなったらボクが守るから心配いらないって♪」
 そういうのは墨城 緋景(ka5753)――賭博でこさえた借金返済にお金が必要らしいが、案外明るいのは持って生まれた性格か。
「後はトランシーバーとかあると便利だけど、みんな持ってます?」
 ごそりとモノを取り出して、ケイジが皆に確認を取る。
 そこで目が点になった者がいた。それは故郷から出てきたばかりのアムユス(ka6465)だ。雪の深い森で祖母と暮らしていたからか、世間に疎い。というか、ハンターとしての仕事はこれが初めてであるから無理もない。
「……えっと、すみません。ボク、持ってないかな」
 取り出されたモノを見つめながら申し訳なさそうに言う。
「ショップで売っているけど?」
 ぽそりと言う小夏に慌てて買いに行こうとした彼であったが、その後知った金額に愕然。手持ちが少なく、手がでなかった。ハンターの必需品とまでは言わないが、それでもあって損するものでもない。自分だけ持っていないと途方に暮れかけていた彼に近付いたのは同族の緋景だ。
「なあ、じゃあこれ『角友』って事で」
 あっけらかんとした様子でトランシーバーを差出す彼。額の角は鬼族の証しだ。アムユスも彼とは違い、二本の小さな角が生えている。
「でも、こんな高価なもの…」
「いいっていいって、困った時はお互い様だよ」
 そう言ってにこりと笑顔を返されては受け取らない方が失礼だろう。
「あ、有難う…」
 アムユスが礼を言い、それを大事にしまう。うまく笑顔を返せただろうか。
 人との交流も苦手な彼であったが、初めての依頼で優しさに触れて・・・心に温かさを覚える。
 その後は滞りなく、今回の作戦は決まっていった。
 ギアの要望と依頼内容を考慮して、彼らは囮の荷車を用意。馬は極力数を減らしたいから一頭のみ。小さめの幌がついた荷車に使い古した武器と塗料の入った瓶を乗せ進む。護衛が多いと接触してこない可能性も考えて、莢と百、そして羽々姫が荷車内に潜伏。荷車の先頭にはギアと緋景が、後方には晴香がつく。ちなみに他の三人は何処にいるかというと、この作戦の要を担当。小夏は荷車の傍を追いかける形で近隣の叢に潜伏。ケイジとアムユスはなんと木の上。
「お誘い有難う…」
 少し照れながらアムユスが言う。
「なあ、そのお面って邪魔じゃないの?」
 そんな彼にケイジは素朴な疑問をぶつけて…もう何だか友達のようだ。
「えと…これがあると、落ち着くんだよ」
 戦闘時にお面をつける。まあ、それも人それぞれか。二人は先行して林を進む。
「殲滅は殲滅で大変だけど、倒さないように残しておくのも神経使って大変だよね…」
 一方、荷車の中では多々良 莢(ka6065)がそんな事を脱力した様子でぼやいていた。
「まあ、その辺は適当にすればいいヨ。莢、そういうの得意でショ?」
 友の百が言う。
 倒さないようにとはつまりはこの作戦、囮だけに終わらない。
 襲撃して来た敵を適度にボコりつつ、用意した塗料をぶっかけて撤退させ、アジトを突き止める。
 そうして、全ての敵を殲滅するのが狙いであり、襲撃時全部を倒してはいけないのだ。
「適当って逆に苦手だ…」
 莢が言う。
「まぁ、やっちまったらやっちまったで何とかなるだろ?」
 その横で羽々姫が豪快に笑った。

●初手
 二足歩行するとは言え、リザードマンの知能はそれ程高くない。
 敵が攻撃して来れば戦うし、基本的に窮地に陥れば彼等は仲間を捨て生存の道を選ぶ事はままある。
 荷車を止めて休憩している振りをしていると、あちらも気付いてくれたらしい。
 暫くすると見張りの二人が怪しい集団を発見する。
「お、来た来た」
 てかてかした肌に大きな尻尾。ぎょろりとした小さな眼が少し不気味だ。
 双眼鏡で数を確認すると敵は八体。一体だけ杖を所持している事が判る。
「アムユス、連絡を」
 その言葉に慌ててトラシ―バを握る彼。使い方は出発前に教わっている。
「います。後少し…数分後にそちらに」
「了解」
 その情報に荷車のハンターらは静かに息を潜めて、待つギアらもドキドキだ。
「ま、来たらすぐに逃げて木陰へ」
 緋景の指示にギアが頷く。戦闘する姿を直にみたいものの足手纏いになっては元も子もない。
 敵が荷車を視界に捉えると、突如駆け出す。それを見てこちらも臨戦態勢。但し、完全に接近してくるまでは中の三人は動かない。
「敵だー! 荷車を!」
 少し大げさに緋景が言う。その声に応えて、後ろについていた晴香も前へ。
 待ってましたとばかりに駆け出して…第一陣の火蓋が切って落とされる。
 まずは先制するように緋景が瑞鳥符で攻撃を警戒。お構いなしに振り下ろしてくる剣や棍棒を防御する。
 そこで怯んだ隙に晴香が接近し、拳を揮う。が、勿論二人では八体は捌き切れない。自ずと荷車に近付く敵が出てくる。そんな奴を待ち受けているのは例の瓶だ。
「こ、来ないで…! なーんて、弱そうな女の子だと思った?」
 と少し演技を交えて羽々姫が瓶を投げつける。
 すると中からは色のついた液体が弾けて、敵の身体を汚してゆく。
 その思わぬ行動にリザードマン達が混乱し始めた。そうして、後列にいた数匹は仲間を置き去り逃走を開始する。
「よし、うまくいきそうだな」
 木の上からそれを見取りケイジが言う。塗料付きであるから、木の陰に入っても割合目立つものだ。
「追跡だよね」
「だな」
 二人は逃げた敵の追跡を開始した。

 その間も荷車の方では未だ残った者がリザードマンとの戦闘を繰り広げている。
「振っておいた缶を受けてみなよ、多分美味しいよ」
 そう言い、有言実行するのは小夏だ。直前にかなりシェイクしていたようで栓を開けると物凄い勢いでビールが吹き出し、敵を濡らしてゆく。その奇天烈な攻撃にもリザードマン達はたじたじだ。酒が目に入った者は慌てて後退し、逃げてゆく。
「ああ、少し勿体なかったかなぁ」
 残ったビールに手を付けたいのを我慢しつつ、彼女が呟く。ちなみにビール使ったのには理由がある。それは色の探査が出来なくなった時の為だったが、この分だと塗料で十分間に合いそうだ。連れてきた犬達の出番もないだろう。そうこうするうちに一陣は終了した。
「なあ、どう、どう? 生の戦場の感じは?」
 今更であるが、今回の依頼には拳自慢が多く、接近しての的確な攻撃で敵の武器を叩き落とさせている事が多い。
 従って、地面には既に数個の敵の得物が転がっている為、ギアを呼んで緋景が問う。そうして、既に得た敵の得物を吟味する。
「それ、本当に役に立つのか? 見るからに原始的な産物に見えるけど?」
 木の盾に、棍棒に柄がついたような簡素な造りの敵の得物――素人が見ればただのガラクタだ。
 とても売れる気がしない。しかし、ギアはじっくりと観察して、
「確かに原始的ではありますが…この表面、何か塗って強化してあるみたいだ」
 職人眼から見れば違いが判るらしい。一般の強化剤とは違うようだ。
「あんな奴らがそんな事をしていると思えないけどな」
「ですね…でも、それがわかるギアさんも凄いかも」
 それぞれ似通ったモノは一つずつ回収し、荷車にのせる。
 すると追跡していた二人から連絡が入って…地図を頼りに彼等は更なる奥へと進んでゆくのだった。

●殲滅戦
「こっちです」
 情報通りという事か。追跡により見つかった敵のアジトは林の奥深くの洞穴だった。
 しかも思ったより大胆で入り口の大きさは人が三人は並んで入れるような大きさだ。
 もし、うっかり雨宿りなんかに入ったら大変な事になるであろう。
「始末の悪い場所にまた作ったもんネ」
 百が冷めた目でその場所を見つめる。
「手筈通り、煙を炊きますか?」
 入り口が広い為、うまくいぶり出せるかは疑問であるがそれでもやらないよりはマシだ。
 小夏がバケツに適当な草木に混ぜて、煙玉をほおり込む。そうして、入り口において後は待つだけ。煙が中へと流れるように、武器にかけていた布で入り口を塞いで煙の逃げ場を失せば効果覿面だ。徐々に煙は中に充満し、人であったなら涙と咳が止まらなくなってくるだろう。それはリザードマンも同じだったのか、暫くすると中から足音が聞こえて、
「来たか?」
 そう思ったその時だった。
 ボッと音がしたかと思うと、一瞬にして布が燃え凄まじい熱量がこちらに押し寄せてくる。
『うわぁっ!』
 布を押さえていた莢と百が思わず尻餅をつく。すると、そこから出てきたのは残党のリザードマン達。先程の戦闘に加わっていた者は未だ身体が汚れたままだ。しかし、中には新手もいるようで…。
「魔術師が、三体ですか…」
 お面をしっかりと被り直してアムユスが言う。
「ちっ、思ったより多いけどやるしかないんだよね?」
 仕事モードに入ったのか、きりっとした面持ちで莢が体勢を立て直し呟く。
「当たり前ネ。依頼内容は殲滅なんダカラ」
 それに答えて百も立ち上がる。
「まあ、あれよ。魔法を撃つ前に片付ければ問題ないよね」
「そういう事だね」
 小夏の言葉に皆が頷いて、第二陣殲滅戦がここに始まった。
 とはいえこの勝負、焙り出した時点で勝機はハンターにある。何故なら、焙り出された時点でこの洞穴の出口はここしかない事が判明。そして、唯一の出口であるここにはハンターが対峙しているのだ。敵がこの場を切り抜ける為には、ハンターを全員倒さなくてはならない。逃げるにしてもすり抜けて行かねばならないのだからリザードマンにとっては至難の業だろう。
「爬虫類は纏めて関節粉砕の刑で決定なー」
 晴香がニヤニヤ笑みを浮かべて言う。ケイジは剣を、アムユスはダガーを構える。
 その様子にリザードマンらも覚悟を決めたらしい。甲高い奇声を発して、こちらを威嚇し向かっている。
「皆さん大丈夫ですか!?」
 そんな折、遅れてやってきていたギアが声をかけて――リザードマンは一瞬で察した。
 そう、こいつならやれると――。動物の持つ本能とも言うのだろうか。自然に誰が弱いかを察する事が出来たのかもしれない。魔術師らが一斉に彼のいる方向に杖を構え、戦士達はそちらを目指す。だが、
「はぁ…しっかり片付けてさっさと帰るよ」
「さっきの借り、きっちり返すネ」
 莢が進路に割り込み、太刀を抜く。彼女が正面から敵を捉えるつもりである事を知って百はサイドに回り、装着して爪を揮う。その奇襲に気付けなかった一体は耳につく悲鳴を上げ、僅かによろめく。そこへ莢の太刀が振り下ろされて、あっさりと消滅するリザードマン。
「凄い…お見事…」
 初陣アムユスが言葉を漏らす。だが、呑気にしている場合ではなく彼も応戦中。がダガーと棍棒では押しが弱いか。彼も頑張っているのだが、致命傷を負わすに至らず四苦八苦。そんな彼には小夏がフォロー。
「小柄だと思って油断しないでよね」
 手にした盾ごとぶつかって、弾き飛ばすというファインプレー。
 実は剣で正確に狙うのが面倒くさかったからというのは秘密である。
 そんな前衛に阻まれて、後方の魔術師達も大苦戦していた。ギアに放つはずだった術式がうまく狙えず、突破した先にはケイジの防御障壁が展開されていて、思うようにダメージが入れられない。加えて、緋景の応戦もある。
「へへーん、やれるもんならやってみろーだ」
 緋景はそう言って術師らの頭上に符を飛ばして、発生させるは風雷陣だ。
 稲妻が敵を貫き、動きを鈍らせる。そうなれば前衛はしめたもの。
「これは楽でいいですね」
 莢が太刀で更に一体斬り捨てる。
「おらおらっ、そんなもんかいっ!」
 そう煽りつつ殴り飛ばすのは羽々姫だ。そんなこんなで作戦は思いの外スムーズに終了を迎える。
「うん、万事うまくいって良かった」
 洞穴の中を調べ終えて戻った来たケイジが言う。
「使えそうなものはこれ位ですね」
 更に奥にあった得物を前にギアは今回の収穫を喜ぶ。
「本当に、何事もなく済んでよかった…」
 アムユスが守神様に手を合わせ祈る。
「あ~、終わったならちゃっちゃと帰るよ」
「そして、今日も大儲けなんて。がっぽがっぽだー」
 とこれは莢と緋景の二人だ。
「フッ、いいコンビになれるヨ? これからも莢は私が守るからネ」
 そういうのは百。今日莢とのコンビプレーが決まったのが嬉しかったようだ。
「では、帰りますか」
 誰ともなくそう言い、一路街へと戻る。
 荷台にちょこんと乗って密かにビールを飲む小夏だったが、誰もツッコミはしなかった。

 そして、依頼は済んだのであるがギアについて来た者が約一名。
「一体どんな物を作っているんですか? 見せて下さい!」
 瞳を輝かせてそう言うケイジは、訳あって実はドワーフの鍛冶屋に育てられていたから彼の作る武器に興味があるらしい。だがリザードマンから回収した武器の強化素材等については調べるのに時間がかかるとあって、今日はひとまず工房案内。
 それでもケイジは終始楽しんでくれたようでギアも嬉しくなって、
「また遊びに来てくださいね。その時にはこれらも調べてもっといいものをお見せできると思いますから」
 そう付け加えて、彼を見送るとギアは早速解析と研究に戻るのだった。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 5
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MVP一覧

  • 鉄の決意
    ケイジ・フィーリka1199
  • アマリリス商会
    墨城 緋景ka5753

重体一覧

参加者一覧

  • 鉄の決意
    ケイジ・フィーリ(ka1199
    人間(蒼)|15才|男性|機導師
  • 撃退士
    西空 晴香(ka4087
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • ベストサポーター
    藤堂 小夏(ka5489
    人間(蒼)|22才|女性|闘狩人
  • アマリリス商会
    墨城 緋景(ka5753
    鬼|20才|男性|符術師
  • 怒りの鉄拳!
    多々良 莢(ka6065
    人間(紅)|18才|女性|舞刀士

  • 不和 百(ka6431
    人間(紅)|18才|女性|格闘士

  • アムユス(ka6465
    鬼|13才|男性|霊闘士

  • 久延毘 羽々姫(ka6474
    人間(蒼)|19才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/09/10 23:09:31
アイコン 相談卓
久延毘 羽々姫(ka6474
人間(リアルブルー)|19才|女性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2016/09/12 01:29:26