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マスター:新瀬 影治
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
参加人数:6人
サポート:0人
リプレイ完成日時:2016/09/24


みんなの思い出

1
1

オープニング


 前回戦闘より、随分と長い時間が経って。
 此方の状況が変化していく中で、長きに渡る戦いに終止符を打つ為か、どうやらカストルは彼の妹と撃退士に対し、果たし状のようなモノを送り付けたようだ。
 決戦の舞台は自身の潜伏場所たる、某所の山奥。幾度と戦場になった、あの市街地を一望出来る場所。
 無論、私はその事を知りながら、敢えて手を出してはいない。何故なら私のこの行動、カストルに悟られてはいけないからだ。
「……標的は来たれり、ってね」
 遠方に、此方へ向かう撃退士たちの姿を発見。その中には、カストルの妹――シエルの姿も見える。

「シエルちゃんにも、そしてカストルと戦いたい皆にも悪いんだけどね。私はこれでも、特定の立場を持っているもんだから……さ」
 私の所属する組織、ネメシス。立場的には、堕天使狩りに特化した集団と言える。
 当然の如く、この組織にはカストルも所属している。
 しかし彼の妹に関してはネメシスに所属しておらず、並びにその情報を垣間見る事は無くとも、彼の手駒――言うなればネメシスの手駒として、結構な期間、動いてきた事になる。
 故に順当に行けば、彼女も然るべきタイミングでネメシスの一員として迎え入れられる筈だったのだ、が。
 そこから次々と発生――というよりは次々と引き起こされたのが、カストルの仕組んだ謀略の真の姿という訳だ。

「堕天使狩りって言うんだからさ、そりゃぁ……分かるよね? まぁ私は私のスタンスを貫くって事で、バレない程度に見逃してあげようって思ってるんだけど、その為にも形ぐらいは作っておかないと、ね」
 私は己が右腕、大剣を長銃に変化させながら、自らの髪を撫でる。
 彼の謀略とは、一言でまとめるならば、優秀な聖裁官となりえた人材を離反させる事。
 ――そう。自身の妹たるシエル・アークライトをネメシスから遠ざける為に、ネメシスの敵たる堕天使へと変化させる事だ。
 この行動は即ち、カストルによるネメシスへの反逆行為とも言い換えられる。
 彼は彼自身の信念にのっとった行動を取ったに過ぎないのだが、しかし、ネメシス側の人員として見るなれば、これは許されざる悪徳である。
「故に。結果として撃退士に処理される事は確定としても、私は自らの役職に則って、反逆者の始末に動かなければならない」
 わざとらしく声に出し、呟く。

「……なーんて、ねっ? きゃはっ!」
 そしてこれまたわざとらしく、ふざけてみせる。我ながら空しいものだ。
「はぁ」
 思わず溜め息が出た。
 何にせよ、そういう事情がある為、私は私で一応の『形』を作らなければならないのだ。
 カストルの妹たるシエルへの敵意は無い。そして堕天使でもない限り、撃退士へも敵意は抱けない。
 その代わりに私が抱くのは、飽くなき好奇心。カストルから散々と言って良い程に収集させた、人間の感情に関する情報だけでは飽き足らず、その更に内面へと触れようとしている。
 しかしその好奇心も、私は私の立場を守らなければ何とも出来ないのだ。故に、私は一定の形を作り上げる事で、自らの立場を維持しながらも、カストルの悲願の成就を見届けようとしている。
 無論、その対価となりうるのは、彼の死に他ならないのだが。

「でも私としても丁度良いよね、実際。観察してたら、どうにも皆と戦ってみたくなって、ウズウズしちゃってたワケだし……」
 私は彼等と戦う事で欲求を満たせる。
 そして彼等は私と戦う手間は増えども、他の天使から妨害を受けずに、カストルを確実に始末する事が出来る。
 これは言うなれば、持ちつ持たれつの関係だ。ただ彼等がカストルの命を救いたいと望むのなら、その時だけは、私が手ずから『始末』しなければならないが。
 可能な限り、私は傍観者でありたい。故に傍観者が介入するのは今回に限って、と自身では考えているのだが、現実がどう動くかは、今後の展開次第と言えよう。
「さて。君たちは私を満足させてくれるのかな? おねーさんは、いつでもオッケーだぞ?」
 またもわざとらしく、キャピッとポーズを取る。
 自分自身、キャラが定まらない事は理解しているが、しかし、この中途半端さこそが最高にキモチイイのだという事で。

「まー、さ。殺しはしないけど、おねーさんもちょっとぐらいはやっちゃうぞ? みたいな。シエルちゃんも、今となっては私の敵なんだし……ね。アハハッ」
 色々な期待に胸を膨らませながら、私は彼等を待ち受ける。
 この戦闘を今、こうして行っている自体はカストルに悟られないだろうが、戦闘が起きたという事については、どう足掻いても彼に伝わる事となるだろう。
 しかしそれに関しては問題無い。何故なら彼も私の『立場』を理解しているからだ。
 そして、どのような理由があろうとも、彼は私に口を出す事は出来ない。
 だって彼は、どう足掻いても『私』には勝てないのだから。


プレイング

終焉担いし摧滅の偽神・マキナ・ベルヴェルク(ja0067)
大学部3年5組 女 
・目的
敵戦力の撤退。
及び可能な限りの敵能力の解明。

アスハとの連携を重視。
敵情報の殆どが不明である為、警戒を強めに。
但しその間で一気に攻められて倒れる、と言う事も有り得る為、必要以上に慎重にはならず。
また当人として最も懸念するべきは、その防御の薄さから一撃で倒れる事である為、アスハ以外との連携も頭に入れて。

・戦闘
近接主体。
尚、拳の際は零距離を取ると言うよりは黒焔を繰る事で距離を維持しつつ。
※魔具参照。
それ以上の距離の場合は苦無の投擲にて。

防御は「諧謔」を以て砕き。
消耗の累積には「魄喰」による吸収を充てがい。
「血界」は切札に。

シエルと連携が可能なら、組んでの戦い方も模索。
共に戦える以上、表に見え難くとも信頼は寄せていて。

最強の『普通』・鈴代 征治(ja1305)
大学部2年8組 男 
作戦
短期決戦、包囲殲滅

道中、本来なら消耗は避けるべきですが、こちらが全滅して
辿り着けなくなっては元の木阿弥

故に、全力で一気に攻め切りますよ!
相手はちょっと頭の方はアレですが、手練れを一人始末できれば行ってこいだ!

こんにちわ、おねーさん。後々のためにお名前を聞いても?

行動
基本的に常に射程3を保つ立ち回りで敵の正面から槍で攻撃
邪魔な障害物、壁として最後まで白兵戦の距離で立ちはだかる

初手、混沌の片鱗
接近の加速と体重、自分の五体全てを稼働させた渾身の突きの一撃をブチ込む

Lジャッジメント追撃
CRを見破り後の布石を作る
身体を限界まで捻り一回転し余計に遠心力を乗せた薙ぎ払いでブチ当てる

以降、吸魂符連打
敵の牽制を主とする
動きを止める刺突、大上段振り下ろしなどの見せ攻撃


敵と距離があれば接近しつつ十字架による光撃

常に自分が狙われる前提で防御態勢を準備しておく
行動不能の味方は前に立ち庇う

ランペには、槍を地に刺しワイヤーで体を固定し足を踏ん張り耐える

敵の攻撃はワイヤー受防
体力0以下になる毎に絶対根性

「おっと、まだまだですよ。そうでしょう?

シエルへのお願い
基本的に仲間と同じく包囲作戦に参加
彼方〜は敵がバステなど好機と見たら発動
未行動で攻撃可能な仲間に付与(鈴代はパス)

その他、自前のスキルが使用可能なら任意で適宜使用

あちらの方はお知合いですか?
味方になると心強い。一度こっちに寝返ってみません? や、冗談ですよ

歴戦の戦姫・雫(ja1894)
中等部1年1組 女 
【心情】
「なんでしょうか・・・変にちぐはぐなイメージを感じるのですが」

【行動】
攻撃を行う際は仲間と連携を密にして行う
戦闘を行う前に名前と目的を尋ねる
「無駄だとは思いますが、貴方は何者ですか?何の目的があって襲って来たのですか?」

相手が飛行しているなら星の鎖を使用
α型生体兵器の集中的に攻撃
「正直、敵本体よりも厄介な能力を持ってますからね。破壊出来るなら破壊しないと」

相手の動きを止める為に兜割りを使用
使用タイミングは自分に接近戦を仕掛け攻撃した直後を狙う

相手の動きが止まったら乱れ雪月花を破壊出来るようならα型生体兵器を優先して使用
相手が硬直等の回避が不可能な場合は毒手を使用

※アドリブOK

崩れずの光翼・向坂 玲治(ja6214)
大学部3年4組 男 
そちらさんも随分複雑な事情があるみたいだが……
まぁ、俺らにとっちゃ関係ないな
とりあえず邪魔だから帰ってくれや

■行動
基本方針としては、一定量のダメージ与えてお帰り願う。
敵と遭遇したら包囲し、方々へと注意を逸らすことで狙いを絞らせず、
こちらの陣形を崩されない様に各方向からプレッシャーを与える。
短時間で決着をつけるため、全員が攻撃できるような位置取りを意識。
また、範囲攻撃を意識して、全員が纏まり過ぎないように注意。

俺個人の行動としては、敵の注意をひいて壁役となる。
真っ向から目立つように接近してこちらに意識を向けさせ、
近接攻撃を挑みつつ味方の攻撃のための隙を作る。
序盤は味方が散らばる前に円卓の騎士を使い、味方にバフを付与。
敵がスキルを使おうとしたら、シールドバッシュで打消しを試みる。
攻撃は敵の得物を持っていない側を狙うように攻撃し、受け防御等がしにくい様にする。
敵の攻撃はシールドで受け、生命力の少ない味方は庇護の翼でカバーリング。
ノックバック系の攻撃が有れば不動で踏ん張る。
受けるダメージが大きい時は、スクールシールドを代償にクルセイドを使い軽減だ。

滅天の蒼・アスハ・A・R(ja8432)
大学部5年8組 男 
「どこかで見たような武器腕、だな…知り合いか、シエル?」
シエルが知っているようなら、可能な限り特徴を聞く

目的
敵戦力の撤退
可能な限りの能力・特徴・耐性の解明

味方に物理偏重が多いので魔法メイン
中距離を意識しつつも無理に拘らず、味方の動きの穴を埋めるよう動き回る

初手は槍雨で敵の動きを様子見
以降は敵の攻撃動作を見て、覚え、モーションを記憶し、次の動作への移りを把握
こちらの攻撃を当てることに生かしつつ異界の呼び手で敵を拘束、味方の攻撃補助
攻撃動作直後、あるいは味方に攻撃をあてに行くタイミング、武器を使うタイミングなど、当てやすいところ、特に武器を狙う
可能な限り敵のヘイトを稼がないようにし被弾を抑える
敵が距離を開けたり足を止めれば、槍雨による追撃を狙う


物理より魔法の通りがいいと判断したら、呼び手による補助から雪村での斬撃へと切替
味方の近接役と同時ではなく連撃するよう意識しつつ、たたみかけるように武器狙い

敵攻撃は対物理はニヴルヘイム緊急活性シールド、対魔法はフラーウム緊急活性シールド
直撃を避けるため、ただ受けるだけでなく、受け流すようにしてこちらのダメージを極力抑える

敵がこちらを落とそうと一気に攻めて来たら、好機
敵攻撃を抵抗しつつ起死回生で耐え、切札で反撃
「どこぞの天使の怨みのこもった一撃に比べれば…足りん、な」
「…撃ち貫く!」

蒼の信を繋ぐ・水無瀬 雫(jb9544)
高等部3年3組 女 
やはり来ましたね
貴女があの双子を作った天使ですか

積極的に前に出て注意を引き
行動不能になった味方の援護や相手の隙を作ります
ただあまり固まりすぎて範囲攻撃で纏めて薙ぎ払われないよう
味方の接近に合わせ距離を取ったり相手の武器や足を攻撃して妨害します

攻撃に対しては氷壁と緊急活性化した玄武の盾を
斜角を付け受け流すように防ぎ被害を最小限に抑えます

確かに同じ技でも地力の差か眷属とは比べ物にならない強さですが
どうも手を抜かれているように感じますね

行動不能時は早めの回復を意識しつつ
即座に対応を出来るよう準備し
追撃を受け防御が間に合うなら氷壁を
間に合わず追撃を受ける、受けた時は霞で反撃します
味方へ矛先が向いている時は霞で妨害します

デュアルの初弾を氷壁と盾で防ぎ
追撃を不動で耐えつつその場に留まり
攻撃が止んだ直後に水牙で反撃を試みます

単純な火力ではノヴァを超えているかもしれません
しかし彼女ほどの「重み」は無いです
ならば恐れず前へ進み
私の全力を叩き込みます



リプレイ本文


 某日。六名の撃退士、並びにシエルが千葉県北東部・山奥へと向かう最中。
「おっ、来たね? おねーさん、ちょっと待ちくたびれたよ。でも本当によく来てくれた、君たちが探しているのは私ではない事は分かっているけどね」
 何処からともなく、右腕が大剣のような形をしている紅髪の天使が現れたかと思えば、七人を歓迎するように彼女は言う。
「シエルちゃんも、予定通り来てくれたね」
 紅髪の天使が意味有り気にそう言うも、シエルは彼女の事を知らないのか、怪訝そうな表情を見せる。
「ああそうか。いやぁごめんごめん、悪気は無いんだ。許してね」
 引き続き一人で一方的に喋り続ける天使だったが、彼女は一体、何を目的としてこの場所に現れたのか……それは未だ定かではない。
「無駄だとは思いますが、貴女は何者ですか? 何の目的があって此処へ来たのですか?」
「そうだね。端的に言えば、私は自分の立場を守る為の、口実を作る為に君たちと戦いに来た。後は好奇心かな。勿論、私に敵意は無いよ? だから全て答えよう。ただ単純に、ちょっと時間稼ぎをさせて欲しいだけさ」
 雫(ja1894)が問うと、彼女は答え、大剣を七人に見せる。

「それと、何者かという質問に関しては、そうだね。堕天使狩りと言ったところかな? 本来であればシエルちゃんがその対象になるんだけど、カストルの妹だからね。この場に於いては、私の立場は気にしなくて良い」
 そんな、さながら全てを知っているかのような口振りで続ける天使の前に、鈴代 征治(ja1305)が歩み出て。
「こんにちは、おねーさん。後々の為に、お名前をお聞きしても?」
「おっと、ごめんごめん。これも私のうっかりだね」
 征治の問いに対して謝る天使ではあったが、暫し悩むような仕草を見せた後、溜め息を一つ。
「いやね? 私が満足出来るぐらいに良い戦いをしてくれたら、名前を教えてあげよう――とかそんな事を考えてたんだけど、何というか、この状況は私が押し付けてるようなものだしさ? フェアじゃないと思ってね」
 すると天使は、改めるように、七人に向けてお辞儀をした後。
「周りからは私は、アルファと呼ばれている。アルファ・ハート、これが私の名前だと思う。きっとね」
 アルファと名乗った彼女は、曖昧な答えと共にニヤッと笑い、大剣の形をしていた右腕を瞬く間に長銃へと変化させる。

「α型生体兵器。これは私の名前から取られたものなのか、それとも、これから私に名前がつけられたのか。まぁそんな事はどうでも良い、見覚えがあるかどうかという話だよ」
「何処かで見たような武器腕、だな……? 知り合いか、シエル?」
 その武器を見て、アスハ・A・R(ja8432)がシエルに問うも、彼女は首を横に振る。
「ただ、この女性の事かは分かりませんが、右腕を武器とした天使の話は聞いた事があります。記憶の限りでは――」
 しかし、彼女らしき人物の情報は記憶していたのか、シエルはその特徴を六人に向けて話す。
「――たぶんそれは私の事だね、というか私の事だ。その話をシエルちゃんに聞かせたのは、カストルかポルックスのどちらかだろう?」
 そしてシエルの情報が事実であると肯定するように、アルファは頷いた。

「さて、前置きが長くなってしまったね。君たちが急いでいるのは分かってるし、私を満足させてくれたのなら、すぐにでも道を開けよう」
 彼女は右腕を大剣の形に戻すと、それを七人に向け、前準備をするように促す。
「あれだけでは終わらないと思っていましたが……貴女があの双子を作った天使ですか」
 各々が戦闘態勢に移行する中、水無瀬 雫(jb9544)が問いかけると、アルファは「そうだよ」と即答する。
 双子のようなサーバント二体が一体ずつ投下され、そして撃退士の手によってそれらが一体ずつ撃破された時の事。
 水無瀬はそれが、性能実験にしても不自然であると感じ、また別の思惑があるのではないかと読んでいたらしく、今回の戦闘に繋がる事もまた、予想していたようだ。

「そちらさんも随分と複雑な事情があるみたいだが……まぁ、俺らにとっちゃ関係無いな。とりあえず邪魔だから帰ってくれや」
 しかし、この部隊に於ける本来の目的は彼女との戦闘ではない。
 向坂 玲治(ja6214)はアルファの前に出て、七人の幻影騎士結界を展開しながら、交戦する姿勢を見せる。
「ごめんごめん、でも退屈はさせないからさ。少しだけ、おねーさんと遊んでって?」
 わざとらしくポーズを取ったアルファだが、自分自身で痛々しさを覚えたのか、すぐに大剣を構え直して。
「それを望むのならば、応えましょう。敵意が無いのなら、戦意で」
「うんうん、分かってくれたようで何よりだ。ありがとう、ならば私も手は抜かない」
 そんなマキナ・ベルヴェルク(ja0067)の言葉は、彼女にとって素直に嬉しい言葉らしく、目の色が変わった。
「では、始めようか。シエルちゃんの言っていた通り、私は攻め以外は苦手でね。迷惑をかける分、先は譲ろう」
 七人に先手を譲るというのは本当らしく、大剣を構えたまま動じないアルファだが、雫は敢えて様子見を続ける。

「……行きます、今の私に出来る事は少ないですが」
 そこでシエルがマキナに軽く合図を送った後、手にした大剣に光を宿し、圧倒的機動力で先陣を切る。
 一瞬にしてアルファに接近、大剣を振るうシエルだったが、アルファは大剣でそれを易々と受け止め、僅かな揺らぎも見せない。
「つまらない、とは言わせません。これが最良の判断であると、そう信じたからには」
 だが、シエルはそのまま宙を舞い、頭上を過ぎるのと同時、マキナが続けてアルファの元へ詰め寄る。
 流れるような連携、故にアルファは受けの体勢を崩す事が出来ず。むしろそれこそが最良の判断であると断じる彼女に、マキナの一撃が刺さる。
「おっと、受けても結構痛いかな……?」
 圧倒的強度を誇る大剣による防御をも貫通し、終焉を内包せし一撃は、アルファへ直接的なダメージを与えていく。
「受けが不利なら、はて。まぁ一択か」
 アルファは呟き、マキナの動きを目で追っていた。
「此方は複数。先手を譲ればこうなる筈だ、が?」
 そこでマキナの離脱を援護するように、アスハが無数の蒼い槍を降らせる。
「ふーむ。連携も良し、か」
 無差別爆撃とも取れる槍の雨を、アルファは大剣で防御し続けながら、やはりその目でマキナやアスハの動きを追い続けている。
 その様子からして、マキナの一撃によってようやく大剣の防御を貫けたレベルらしく、彼女は平然としたまま。

「本当なら斬り返したかったんだけど、仕方ない」
 するとアルファは瞬時に右腕を長銃に変形させ、その瞳でマキナの姿を完璧に捉えた。
 そのままアルファが長銃を構えると、マキナの周囲に印のようなものが淡く浮かび上がり、彼女に狙いが定まった事を物語っているようだった。
「獲物は絶対に逃がさない、ってね」
 彼女が弾丸を発射すると、もはや発射と同時と言える程の速さで着弾、浮かび上がっていた印をガラスのように打ち砕く。
「しんどいからあんまり受けたくはねぇが……そのまま通してやるほど人が良くないんでな」
 しかしそれを、マキナの代わりに玲治がカバーし、必中の弾丸を受け止めた。
「続けて全力で行きますよ、攻め切る為にもね!」
 玲治のカバーを挟んで射撃直後、若干の硬直を見せたアルファの元へ、征治が詰め寄る。
 左腕に光、右腕に闇。二つのオーラを纏った彼は、射撃からそのまま長銃を盾にしたアルファに、混沌の一撃を叩き込む。
 加速と体重、五体全てを利用したその一突きは、長銃での防御をものともせず、アルファ本体への強烈な一撃となった。

「全力ね、良いじゃん良いじゃん。かなり効いたよ、だからお返しだ!」
 だが。アルファは攻撃を受けて距離を取ろうとするどころか、むしろ征治の懐に潜り込み、彼の身体に銃口を突き付けての密着射撃に出る。
 初段、重く響く衝撃波が征治の防御を押し崩し、二段目に高い威力が込められた弾丸を発砲。
 防御を是としない強烈な二連射撃は、そのまま征治を弾き飛ばし、少し離れた場所に落下させる。
「先程から貴女の行動を見ていましたが、シエルさんに何か特別な思いが有るようですが?」
 そんな攻撃直後を狙い、様子見をしていた雫が接近。跳躍しての重く鋭い一撃を狙う。
「カストルの妹だし、ちょっと興味があって……ねッ!?」
 質問に答えつつ、長銃を大剣に切り替えての防御に転じたアルファだったが、さしてダメージは受けないまでも雫の一撃が響いたらしく、よろめいている。

「何にせよ、俺らには関係の無い話だ。このままお帰り願うぜ」
 玲治は、意識が朦朧としているアルファの真正面に立つと、武器ではない彼女の左腕に直接攻撃を行い、有効打を与えていく。
「私は、カストルと縁のある方々を決戦の舞台へ送り届けなければなりません。障害となるならば、退けさせてもらいます」
 玲治の一撃によって意識を取り戻したアルファだったが、水無瀬の追撃への対応は間に合わず、足への攻撃が直撃する。
 しかし、彼女は一切動じぬままに、体勢の立て直しを急いでいるようだった。
「正直、敵本体よりも厄介な能力を持ってますからね……破壊出来るなら破壊させてもらいます」
 元々の機動力が低い事も相まって、攻撃を命中させる事は容易いと判断。
 雫は水無瀬と入れ替わる形で接近し、燃焼によって粉雪のように舞うアウルの中、花を舞い散らせるが如き一閃を放つ。
 そんな彼女が狙ったのはアルファ本体ではなく、α型生体兵器。
 当然の如く彼女の一閃は大剣に直撃するが、その高い威力を以てしてもヒビ一つ入らず、武器の圧倒的強度を物語る。

「この子を狙うっていう発想は面白い。面白いんだけど、コレを壊すには、それこそ私を此処で仕留めるぐらいの気概が無いとダメだよ?」
 アルファは大剣を構え、雫の元へと一歩、前へ踏み出す。
「貴女が私の事を知っているのなら、この一手も知っている筈……!」
 そこへシエルが後方から剣波を放ち、防御を続行させ、雫の離脱を援護する。
「であるのなら、恐らく貴女に一番通じるであろう一手で応えるまでです」
 更に雫と入れ替わりで前に出たマキナは、先程も有効な一手となった、終焉の一撃を叩き込まんとする。
「そうだね、それは間違いなく私に対しての有効打になる。しかし、最初からそうであると分かっているのなら、私もやる事を変えるまでだ」
 するとアルファは、大剣を長銃に変化させたかと思いきや、真っ向からマキナの元へ突っ込んでいく。
 終焉という渇望、その具現たる幕引きの一撃はアルファに直撃。だがアルファはそのままマキナに銃口を突き付け、至近距離での二連射撃を行った。
 当然の如く初段はマキナに直撃し、衝撃波が彼女の動きを停止させるも、二段目はすかさず玲治がカバー。
 負傷こそしたものの、玲治のアシストによって、マキナへの強烈な反撃は回避した。

「行動の正確性は高い。が、先程からその場を動けていないようだ、な?」
 ――マキナの攻撃が直撃し、反撃を阻止した事で、追撃もまた確実に命中する。
 アスハは攻撃を当てる事を意識し、異界より無数の腕を呼び出そうとする、が。
「おねーさん、ちょっと調子に乗っちゃおうかな……?」
 アルファは先程の連携から、今回もまた連携に繋がると読んでいたらしく、アスハのモーションを確認して即座に銃撃。
 それによりアスハの行動を中断に持ち込んだ直後、長銃を大剣の形に変化させ、その瞳でアスハの姿を捉えた。
 ――この瞳からは逃れる事は出来ない。そう言わんばかりにアルファは、先程までとは一転して圧倒的な速さでアスハの元へ接近し、追撃する。
「何処ぞの天使の怨みのこもった一撃に比べれば……足りん、な」
 アスハは咄嗟にアルファの追撃を防御し、むしろこれを好機と読んだのか。
「あっ、もしかしてこれヤバい……? おねーさん、本当に調子に乗り過ぎた?」
 アスハの右腕にアウルが集中、回転式弾倉が付いた巨大なバンカーが形成されたのを見て、アルファは冷や汗を流した。
「この理想……遠く叶わぬと知っても尚、諦めはしない!」
 タイミングを見計らったようにシエルが大剣を掲げると、アスハの形成したバンカーに光が宿り。
「……撃ち貫く!」
 防御すらも撃ち貫く、切札の一撃がアルファに直撃した。

 しかしその負荷によって大爆発が起こり、アスハ自身にもダメージが及ぶが、アルファはあまりの威力にその場で倒れ込んでいる。
「おっと、まだまだですよ……! そうでしょう!?」
 この一手から一気に畳みかけるべく、征治は倒れているアルファに向け、身体を捻り一回転しての大きな薙ぎ払いを放つ。
「いやーッ!?」
 アルファは地面を転がり、無理やり体勢を立て直す事でどうにか大剣での防御を成功させるが、性質が攻撃的に変化している闇のアウルは、彼女の防御をも貫通した。
 更なる致命打を受け、もはや後が無いアルファは、大剣で大きく薙ぎ払う事で周囲の撃退士を払い除けようと試みる。
「……悪いな、そちらさんのやる事もこっちは見てるんだ」
 だが、そこですかさずアルファの懐に潜り込んだ玲治が、盾による殴りつけで彼女の薙ぎ払いを阻止。
 振りの大きい一撃を阻止された事で生じた隙を突き、追撃を命中させる。
「単純な威力は高くとも、しかし『重み』はありません。ならば恐れる必要も無い、叩き込みます!」
 玲治の追撃によってよろけているアルファの右腕へ、水無瀬が全力の一撃を叩き込む、と。
 彼女はそのままバランスを崩して倒れ、かなり消耗している様子が見て取れた。

「まっ、待った待った! 降参、こうさーん!!」
 そこへ雫が更に追撃を仕掛けようとすると、アルファは焦ったように降参を宣言し、ゆっくりと起き上がった。
「……もう一度、問います。貴女の目的は何ですか?」
 雫が問うと、アルファはおもむろに口を開き。
「忠告があるんだ。カストルは絶対に倒す事って。立場上、私たちからすれば、シエルちゃんに近いレベルで彼は、もはや『敵』にも等しい」
 本来であれば彼女が折を見て『始末』すべきところを、撃退士たちとシエルに任せる為に、この戦闘で『口実』を作ったらしい。
「決して、彼を救おうなどとは考えない事だね。それは彼の為でも、そして君たちの為でもある」
 そこまで言い終えた彼女は、戦闘に付き合ってくれた事へのお礼を述べた後、去り際に言う。
「……もしも彼が生きていたら、その時は私が彼を殺しに行くと思う。覚悟はしておいてね」
 彼女はそのまま去っていったが、しかし、その裏に込められた意味は深く。
「やれやれ。とんだ前哨戦になっちまったぜ」
 玲治は得物を担ぎ直しながら、一つ嘆息するのだった。


依頼結果/参加キャラクター

依頼成功度:成功面白かった!:3人
MVP一覧
 最強の『普通』・鈴代 征治(ja1305)
 崩れずの光翼・向坂 玲治(ja6214)
重体一覧
 −

終焉担いし摧滅の偽神・
マキナ・ベルヴェルク(ja0067)

大学部3年5組 女 阿修羅
最強の『普通』・
鈴代 征治(ja1305)

大学部2年8組 男 ルインズブレイド
歴戦の戦姫・
雫(ja1894)

中等部1年1組 女 鬼道忍軍
崩れずの光翼・
向坂 玲治(ja6214)

大学部3年4組 男 ディバインナイト
滅天の蒼・
アスハ・A・R(ja8432)

大学部5年8組 男 ダアト
蒼の信を繋ぐ・
水無瀬 雫(jb9544)

高等部3年3組 女 ルインズブレイド


依頼相談掲示板

作戦相談テーブル
鈴代 征治(ja1305)|大学部2年8組|男|ルイ
最終発言日時:2016年09月17日 21:44
挨拶表明テーブル
宝井正博(jz0036)|教師0組|男|一般
最終発言日時:2016年09月15日 21:48


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