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OPEC「減産」 影響力には限界がある

 主要産油国など14カ国が加盟する石油輸出国機構(OPEC)が、生産量の新たな目標を決めた。最近の実際の生産量を下回るもので、先物市場では、予期せぬ約8年ぶりの「減産合意」に原油価格が急騰した。

     世界的な供給過剰により価格が暴落したにもかかわらず、足並みをそろえられなかったOPECが減産合意にこぎ着けたのは大きな変化だ。とはいえ、これで原油価格が上昇し続けると見るのは早計だろう。

     まず、減産が小幅にとどまったことがある。日量約3320万バレルが3250万〜3300万バレルに下がる程度だ。また、総量の目標は決めたものの、実際、各加盟国がいくら減らすかという難題は11月末の次回総会に先送りした。そこで合意できたとしても、これまで何度となく約束が破られてきたOPECである。

     何より価格の本格上昇を困難にしそうなのが、世界の原油市場におけるOPECの影響力低下だ。ロシアなど非加盟の主要産油国が、歩調を合わせて減産を実行する必要があるが、協調の保証はない。

     そして、北米のシェールオイル台頭がある。技術革新により生産量が格段と増加したシェールオイルは、米国をサウジアラビアやロシアと並ぶトップ級の産油国に押し上げた。

     OPECの減産が奏功し原油が値上がりすると、皮肉にもOPECのライバルであるシェールオイルの生産者が、代償なく価格上昇の果実を得ることになる。彼らがもうけを増やそうと増産すれば価格は再び崩れかねない。OPECがこれまで減産できなかった大きな理由である。

     だが、価格低迷の長期化により石油収入に支えられた産油国の財政はどこも窮迫する一方だ。OPECの盟主として君臨してきたサウジでさえ、財政赤字の膨張により、手厚い国民への補助金や公務員の好待遇を改めざるを得なくなった。

     他方、日本などエネルギー輸入国にとっては、空から降ってきたボーナスのような価格下落である。物価全般を押し下げるため、日銀が目指す物価上昇率2%の達成は遠のくかもしれないが、国民の暮らしには、エネルギー価格が安いに越したことはない。

     しかし、価格の決定権は今や市場が握る。消費国はもちろんのこと、生産者が多様化する中、主要な産油国でさえ、かつてのように価格を動かせないのが実情だ。

     問題なのは短期間のうちに価格が急変する不安定さだ。世界にあふれる投機マネーが振れ幅をかつてないほど大きくしているが、主要国の中央銀行による大規模な金融緩和がもたらした副作用でもある。

     限界のある生産量の調整より、極端な価格変動の元を注視すべきだ。

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