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大阪万博、首相が「検討」で外堀埋まる財界 費用負担の議論加速へ
大阪府が誘致を進める2025年の万国博覧会(万博)について、政府が後押しする姿勢を示したことで、関西財界では費用負担などの協力に向けて「外堀を埋められた」との空気が広がっている。財界はこれまで「費用対効果が不明確」と及び腰だったが、具体的な負担額、方法をめぐり議論が加速しそうだ。
安倍晋三首相は28日、国会で大阪への万博誘致について「しっかり検討を進める」と明言。萩生田光一官房副長官も29日、前向きな発言をした。
こうした流れを関西財界のある幹部は「関西にとっては大変良いことだ」と肯定的に語るが、財界関係者からは「首相が言ったからには、『抵抗勢力』といわれたくない」との本音も漏れる。万博開催まであと9年しかなく、05年の愛知万博など過去の事例からみて「準備期間が短い。本当にできるのか」との疑念が財界には根強い。
政府が本腰を入れれば強力な後押しになるが、首相発言を歓迎する財界幹部も「府は経済効果について説明不足。試算も説得力に欠ける」と不満を口にする。関西経済連合会の森詳介会長は今月5日の記者会見で、「(万博の後に)どのような街をつくっていくのか、非常に多くの課題がある」と疑念を示した。
企業の投資に対する株主の視線は厳しく、関経連幹部からは「ビジネス的にも何か見返りがある、何か発信できるものがないと費用負担は難しい」と困惑の声があがる。「先進国特有の課題である健康・長寿というテーマで万博ができるのか、お金以前の問題だ」(元財界幹部)との厳しい指摘も聞かれる。
府の松井一郎知事は29日、報道陣に「関西経済界のみなさんのご英断をいただきたい」と語った。ボールは財界に投げられた。